"アセトアルデヒドのリスク評価 " 

篠原 直秀、納屋 聖人、蒲生 昌志 

産業技術総合研究所   

日本リスク研究学会 (つくば 2006/11/11)


概要

本研究では,アセトアルデヒドを対象としたリスク評価を行った.日本人の吸入暴露濃度(長期平均値)の分布を推定したところ,平均17.0 µg/m3,95%ileで39.2 µg/m3となる分布が得られた.閾値がないと仮定した時の生涯発がん確率と暴露濃度分布を比較した結果,生涯発がん確率が10-5(5 μg/m3)を超える人口は97%以上(1.1億人以上)となった.リスク削減対策の一例として,換気設備の設置を検討した場合には,最低でも発がん1件削減費用が200億円と試算された.アセトアルデヒドは閾値ありの発がん物質である可能性があり,現状の不十分なデータから推定した閾値(50 µg/m3)を越える人口は5%未満であった.閾値の有無によって,高リスク集団の人口は大きく異なっており,対策の緊急性も異なる.閾値の有無を確認する試験に要する費用は2億円程度と見積もられ,対策費用と比べてはるかに小さいことから,対策を実施する前に閾値の有無を確認する試験を実施すべきことが示唆された.

キーワード

アセトアルデヒド,暴露評価,費用対効果,リスク評価


化学物質リスク管理研究センター

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