"防虫剤からのp-ジクロロベンゼンの放散量および衣装ケースからの漏出量"
篠原 直秀, 小野 恭子, 蒲生 昌志
産業技術総合研究所
室内環境学会 (北九州 2005/11/21)
概要
pDCBについては、使用者が防虫剤として意図的に室内に持ち込んでいることから、虫害から衣類を守るという便益と、健康影響というリスクとの両方を使用者自身が受けることになる。したがって、単純に使用を中止すればよいという問題ではなく、そのリスクトレードオフを考えることが重要である。そのためには、室内における防虫剤使用に伴うpDCBの挙動を把握するといった知見の蓄積が必要である。
本研究の結果、防虫剤1個あたりのpDCB放散量は3.3×103〜3.5×104 µg/hour/pieceであった。同形、同重量の防虫剤間でも3倍以上の差があり、拡散の抵抗となる包装材の特性の違いと考えられる。また、同一防虫剤でも物質移動係数が15℃と30℃で2倍強異なるものもあったことから、防虫剤の包装袋の特性が温度によっても変化している可能性が示唆された。衣装ケースからの漏出率は、衣装ケースによって、0.41 〜78 hour-1と大きく異なっていた。衣装ケースの気密性のpDCB室内排出量への寄与は、今回の測定対象程度の気密性ではほぼないことが分かった。(パッキン等による極めて高密度な容器でなければ変わらない。)衣服への吸着量は、0.6 µg/hour/piece/g (防虫剤1個、衣服1gあたり)であり、ケース内気相中濃度ではなく、防虫剤量と衣服量に依存していた。定常状態では、ケース内気相側へ放散されたpDCBはそのまま室内へ排出されていることも分かった。キーワード
防虫剤、p-ジクロロベンゼン、衣装ケース、放散量、漏出率、吸着量