"東京湾のカワウにおけるダイオキシン類暴露のリスク変遷

井関 直政1, 羽山 伸一2, 益永 茂樹1, 中西 準子2

1横浜国立大学
2産業技術総合研究所

第10回環境化学討論会 (愛媛県松山 2001/5/23)


概要

ダイオキシン類(PCDDs/Fs,Co−PCBs)の毒性影響は,発ガンや催奇形性をはじめ,さらには内分泌撹乱作用との関連が示唆されている.これら毒性の生体応答は生物種によって異なることが明らかにされており,ダイオキシンのWHO−TEF(毒性等価係数)にも反映されている.

このように,ヒトも含めた生物への影響は,曝露量とともに生物固有の感受性もあわせて考慮しなければならない.一般に,高次生態系に位置する野生動物(鯨類や鰭脚類,鳥類)におけるダイオキシン類やPOPs(残留性有機塩素化合物)の残留濃度はヒトよりも有意に高いことが知られている.わが国においても東京湾水圏生態系の頂点に位置する魚食性鳥類のカワウでダイオキシン類やPOPsの高濃度曝露が報告されており,カワウへのダイオキシン類の曝露は,餌である魚類中濃度に依存している.

本研究では,カワウ組織と魚類の実測値を基にして,体内半減期を求めた.さらに1コンパートメントモデルを用いて推定した卵中濃度と実測値を比較した.また,東京湾の底質中濃度からBSAF(生物/底質蓄積係数)を仮定し,これと過去の東京湾底質コア中濃度5)を用いて過去の魚類中濃度を求め,これを採食するという条件で当時の卵中濃度を推定した.

魚類,卵中濃度ともに,WHO−TEF(Birds)を用いてTEQを求め,TEQの組成変化を比較した,またカワウの貯化率をエンドポイントとしたリスク変遷も試算した.これらは環境中濃度変化とカワウの次世代への影響を,定量的に評価する試みの一つである.

キーワード

ダイオキシン類、カワウ、卵中濃度


化学物質リスク管理研究センター

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