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リスク解析研究チーム |
リスク解析研究チームは、吉田喜久雄をチームリーダーとして9名の研究スタッフで構成されている。
リスク解析研究チームは、これまでに、リスクが懸念される化学物質の詳細リスク評価書等の作成やヒト健康リスク評価ツール「Risk Learning」の開発に加えて、新技術のリスク評価・管理の一環として、工業用ナノ材料、バイオ燃料および太陽光発電の有害性、暴露および社会経済性等に係る解析手法の開発とそれらを用いた評価を実施してきた。
2007年度も、個別化学物質の詳細リスク評価書等の作成と各研究スタッフの専門性を活かした新技術のリスク評価に係る研究を継続するとともに、新たに、物質代替に伴うリスクトレードオフ解析手法の開発に関連した研究開発にも取り組む。
◇個別化学物質の詳細リスク評価書等の作成リスク解析研究チームは、主にヒト健康リスクが懸念された個別化学物質の詳細リスク評価を実施しており、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、1,4-ジオキサン、p-ジクロロベンゼン、鉛の詳細リスク評価に携わったほか、多くの詳細リスク評価対象物質の有害性を評価する作業にも携わってきた。
2007年度も詳細リスク評価を継続し、カドミウム、クロムおよびキシレンの詳細リスク評価書の早期出版を目指す。また、他チームで行っている詳細リスク評価対象物質の有害性評価についても必要に応じて対応する。
◇新規技術のリスク評価・管理
1.新規バイオ燃料(エチル・tert-ブチル・エーテル、ETBE)のリスク評価
バイオエタノールを原料とするETBEの導入は、CO2排出量を削減する施策として期待されているが、ガソリンに添加されるため、給油所等での大量使用に伴う恒常的な排出や漏洩事故等が想定されうる。このため、2006〜2007年度の2年間の予定で吸入および経口暴露に伴うヒト健康リスクを評価している。
2007年度は、ETBEの別途実施される長期毒性試験結果に基づいて吸入暴露に伴うヒト健康リスクを最終的に評価する。経口暴露に伴うヒト健康リスクについては、地下水環境濃度と経口摂取量の推定に加えて、油槽所等から排出されるETBEが表層水に流入した場合の環境中濃度と経口摂取量も推計する。摂取量と別途実施される長期毒性試験結果により決定されるNOAELから、最終的な経口暴露経路のリスクを判定する。
2.太陽光発電に係るリスクの評価
二酸化炭素や有害大気汚染物質等を排出しないクリーンエネルギーとして太陽光発電が注目されており、今後、需要が急速に増大することが見込まれている。太陽電池が製造され、廃棄されるまでのライフサイクル段階で、素材に用いられている化学物質がヒトの健康や生物に影響を及ぼす可能性がある一方、太陽光発電は、火力発電に代替しうる発電設備としても注目されており、火力発電設備から排出される有害大気汚染物質の排出量低減に伴うヒト健康リスク低減の便益を有する。このため、太陽電池技術導入に伴う便益と費用(リスク)を総合的に評価している。
2007年度は、費用便益分析に加えて、さらに、封止材として用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)に添加される紫外線吸収剤や安定剤のヒト健康リスクを解析に着手する。
3.工業用ナノ材料の有害性評価
工業用ナノ材料は、従来とは異なるその特性により将来が期待されている素材である。しかし、ナノスケールに起因する未知の有害性が懸念されており、特に、有害性評価においては、「サイズ効果」(すなわち、ナノサイズの粒子はミクロンサイズのものよりも有害性が強くなるのではとの懸念)に現在、最も関心が集まっている。
2007年度は、昨年度に引き続き、1次粒子径が異なる工業ナノ材料を用いたラット気管内投与試験の結果を精査し、肺に対する有害性影響サイズ効果を検討するとともに、新たな実験を展開する。
◇リスクトレードオフ解析手法の開発
2007年度から、「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」に関連して、以下の研究開発項目に携わる。
1)暴露係数の決定
2)環境媒体間移行暴露モデルの開発
3)ヒト健康に係る有害影響の種類や無毒性量の推定手法の開発とリスクの共通指標の導出