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Society for Risk Analysis 2007 Annual Meeting 参加報告

リスク解析研究チーム
荒川千夏子

2007年12月9日から12日に米国テキサス州サンアントニオで行われたSociety for Risk Analysis 2007 Annual Meetingに参加し,ポスター発表と太陽光発電のリスク評価のための情報収集を行ってきた。また,学会に先立って行われたワークショップ(Use of Internal Doses in Health Risk Assessment of Chemical Mixtures)に参加した。

ワークショップは,米国環境保護庁に所属する4人の講師の下,Relative potency factors(以下RPF),毒性相互作用,PBPKモデルの講義が行われた。RPFの講義では,RPFの定義や計算方法の説明の後,参加者それぞれが例題を解き,ディスカッションをするという形式で行われた。講義は丁寧な説明で非常にわかりやすく,また,問題を解く作業を通して,理解を深めることができた。ワークショップ全体を通して,複数物質の暴露によるリスク評価を行うための基礎的な知識を得ることができた。

ポスター発表は,「Cost Benefit Analysis of Promoting Photovoltaic System」と題して,火力発電の代替としての太陽光発電導入による費用便益分析をテーマに発表を行った。発電コストの内訳や導入シナリオの設定方法に関する質問,原子力発電と太陽光発電の費用便益分析の提案などを受けた。

学会は,常時9部屋で口頭発表が行われ,複合暴露,低用量外挿,Dose-Response,PBPKに関するセッションを中心に発表を聞いた。

Statistical Methods for Evaluating Environmental Chemical Mixturesのセッションでは, EPAで行われているPAHや飲料水用殺菌剤の副生成物の複合暴露の評価に対する取り組みが紹介され,複合暴露の評価に対する最新の情報を得ることが出来た。

Risk Evaluations for Recycling and Beneficial Uses of Industrial Byproductsのセッションでは,TaylorらがEPAのbyproductsに関する取り組みを紹介し,byproductsのリスク評価の重要性が述べられた。その後の発表では,モデルを使用した工場から排出される汚染物質の地下水汚染の評価や石炭燃焼後の灰の利用などに関する発表が行われ,廃棄物や副産物のリスク評価の重要性を感じた。

Benchmark Dose Modeling – Current Methods & Applicationsのセッションでは,Dose-Responseに採用する値の選択方法に関する発表が多く見受けられた。Zhu and Howardは,具体的な実験データを使い,値の選択により,Dose-Responseカーブが大きく異なることを示した。非常に興味深い発表だった。

Considering Life Stage in PBPK Modeling Implication for Risk Assessmentのセッションでは,高齢者と幼児に採用するPBPKの使い分けに関するが行われた。Moya and Johnsは,EPAで現在作成中のChild Specific Exposure Factor handbookを紹介し,成人と子供及び高齢者とを区別して評価する意義について述べられた。今後,感受性の違いをどのような形でリスク評価に取り入れていくのかを検討してみたいと思った。


化学物質リスク管理研究センター

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