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国際暴露解析学会(ISEA)参加報告

2007年10月14〜18日,米国,ノースカロライナ州ダーラム
小野恭子 

 

この学会に参加するのは2回目である.この学会の特徴は,局所的な高濃度暴露(職業暴露なども含む)に関する研究発表が充実しており,また消費者暴露に関する情報が多く得られるということである.このような傾向は前回と同じであった.今回,ヒトの個人暴露量と行動パターン調査を中心に情報収集を行った.

行動パターン調査のセッションは充実していた.詳細な行動パターンを記録し,それと媒体中濃度やヒトのバイオマーカーなどの測定値との相関を見る研究が非常に多かった.個人暴露量の詳細な解析は今後もホットなテーマのひとつとなるだろう.ただし,不満な点をあえて言うならば,測定すること自体が目的化し,GPSなど機器の高度化のみが工夫されている研究,また原因を探る意識が薄く相関を見るに留まっている研究が目に付いた.

小児に着目したシナリオも多かった.EPA's CHAD(Consolidated Human Activity Databases)に関連する発表を行っていたUS EPAのXue氏は,幼児,小児の行動パターンには民族間で差がないという結果を示していた.US EPAでは小児の摂食行動やおしゃぶり(object to mouth, hand to mouth)の頻度に関するデータベースを作成しており,近日公開するとのことであった.

筆者はポスターセッションにおいて,「Determination of airborne hexavalent chromium (Cr(VI)) fractionated by particle size and estimation of ambient air concentration of Cr(VI) in Japan. 」と題して日本における六価クロムの吸入暴露評価に関する発表を行った.六価クロムを扱った研究発表は口頭発表も含めて筆者1人で貴重とみなされたせいか,多くの参加者に興味を持っていただき,有意義なディスカッションを行うことができた.六価クロムは測定が難しく,十分な解析ができるレベルの情報が得られない,と複数の方がコメントした.米国でも興味・関心は高いと実感した.また,「自動車修理工場での個人暴露量測定で鉛と六価クロムを測定したいが,なかなかうまくいかない」と労働衛生を専攻している大学院生から相談を受けた.

なおテクニカルツアーとして,US EPAとNIEHSを見学するバスツアーへ参加できたことも有意義であった.敷地の規模は「1機関=丘1つ分」と広大で,両機関のまわりは全て森であった.EPAはラボ内部を見学したが,廃液処理システムや排気系統の徹底ぶりが印象的だった.「職員の作業環境も,我々が守るべき環境の一部ですから」という説明があったほどだ.たとえば,屋内(ラボ)と屋外の間に排気ダクトだけが通る廊下のようなスペースがあり,ダクトのメンテナンスが容易にできる設計となっていた.このような設備は高い意識と潤沢なスペースの両方がないと不可能だと感じた.

来年は国際環境疫学学会と合同で,米国カリフォルニア州Pasadenaにて開催されるとのことである.

(写真はポスター発表時の筆者)

 


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