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Society for Risk Analysis 2006 Annual Meeting 参加報告
生態リスク解析チーム 石川 百合子
2006年12月3日から6日まで、米国ボルチモアのRenaissance Harborplace Hotelで開催されたSRA (Society for Risk Analysis) 2006 Annual Meetingに参加した。今年の学会のテーマは、”Risk Analysis in a Dynamic World : Making a Difference”で、リスク評価の多様な手法に関する発表が多かった。
学会初日は、学会のワークショップがあり、私は、午前8時から午後5時までの終日、”Sensitivity Analysis Methods Applied to Exposure or Risk Assessment Models”の講義に参加した。この講義は、食品安全のリスク評価で開発された感度分析の方法論を中心としたものであったが、各論に入る前に、感度分析のkey termとなるCritical control points (CCP)、Critical limit (CL)、Variability、Uncertainty、Monte Carlo simulationについての基本的な説明があったので、理解しやすかった。方法論の詳細については、ここで述べる余裕はないが、個人的には、この感度分析の方法が、研究業務である水系暴露解析モデルの検証に有用であると思った。
12月4日からの学会セッションでは、主に、水系暴露評価や流域のリスク評価に関する発表を聞いた。その中でも興味深かった発表内容を以下に述べる。
M3-G.5:Principles for metals risk assessmentでは、金属およびその化合物のリスク評価のフレームワークが示され、金属のfree ionic form が重要であることが指摘された。
T2-G.1:Population pollution: Establishing a framework for characterizing surface water risks from pharmaceuticals and population-derived constituentsでは、EPAで用いられている生態リスク評価で”Equivalency Factors”を用いることの有用性が指摘された。
T3-J.1:Ranking of probability distributions emphasizing tail beyond sample valuesでは、最大値の超過確率について、ベイズ的手法を用いて計算する手法を示した。同様に、T3-J.2:Hierarchical coordinated Bayesian model for risk analysis with sparse dataでも、ベイズ的手法の観点から、Hierarchical Bayesian Model (HCBM)を用いた3つのケーススタディの結果を示し、リスク評価におけるHCBMの有用性を強調した。
今回の大会では、ポスター発表はすべて12月4日の17:30から19:30の間に行われた。私は、日本におけるクロロホルムのリスク評価についてポスター発表を行った。日本におけるクロロホルムの発生源および排出量の推定、浴室やシャワー、プールでの水道水使用によるクロロホルムの室内暴露濃度の推定、ヒト健康および生態系の有害性に基づいたリスク判定の結果を示した。日本では、クロロホルムによるリスクは懸念されないとの結果になったが、諸外国の研究者との意見交換によって、国際的にも、クロロホルムのリスクは懸念されていないとの情報が得られた。