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SETAC Asia/Pacific 2006参加報告

生態リスク解析チーム 石川 百合子  

2006年9月18日から20日まで、中国の北京大学で開催されたSETAC (Society of Environmental Toxicology and Chemistry) Asia/Pacific 2006 に参加した。今年の学会のテーマは、”Growth with a Limit: the Integration of Ecosystem Protection for Human Health Benefits”であり、ヒト健康を考慮するためには、生態リスクも統合して評価することが重要であることを認識させるものであった。

20日のplenary speechでは、CRMの中西準子センター長が、CRMにおける化学物質のリスク評価の研究成果を中心とした講演を行い、諸外国の研究者の高い関心を集めた。質疑応答では、(1)ダイオキシンを避けるためのリスクトレードオフ、(2)ヒト健康リスクと生態リスクの比較方法、(3)日本の農薬のリスク評価、(4)混合物の毒性(mixture toxicity)の評価方法、(5)生態リスク評価の種の選択に関する質問があり、有益な議論が交わされた。特に、生態リスクとヒト健康リスクの比較、mixture toxicityの毒性評価アプローチ、不確実性係数の大きさに関しては、海外においても難しい研究課題であることが分かった。

テーマ別のセッションでは、E5:Environment Exposure and Human Health Risk Assessmentで、CRMの東野晴行研究員が座長を務めた。まず、東野研究員が日本における有害大気汚染物質のリスク評価について発表し、続いて、小林憲弘研究員が血中鉛濃度に基づいた日本の乳幼児を対象とした鉛のリスク評価の結果について発表を行った。どちらの発表も、日本のリスク評価の研究レベルが高いものであることを示すものであった。質疑応答では、対象物質の発生源やemission categoryの分類方法に関する質問が多かった。E6:Ecological Risk Assessment and Managementでは、林彬勒研究員が座長を務め、CRMで開発した個体群の生態リスク評価手法について発表を行った。

私は、ポスター発表で、既に公開されている産総研−水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)が、日本の主要な河川流域において、時空間的に詳細な暴露濃度を推定できるモデルであることを説明したところ、本モデルの国外への適用可能性や流域の設定に必要な地理情報データベースについての質問を多く受けた。ポスター発表は、学会受付の隣にあるロビーのような場所で行われたが、会場が狭く、ポスターを見るために移動するのも困難な状況であった。

今回、初めて北京へ行ったが、予想を上回る都市開発と車の多さに驚いた。来年の北京オリンピックへ向けた準備も着々と進んでおり、中国の著しい経済成長を実感した。



 


化学物質リスク管理研究センター

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