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国際環境疫学学会/国際暴露解析学会(ISEE/ISEA)参加報告
リスク管理戦略チーム 小野恭子
筆者はこの学会には初参加であった.暴露解析の先端手法や室内暴露の研究手法について情報収集する目的で参加させてもらったが,今回は,環境疫学学会と暴露解析学会の共同開催であったために,疫学研究の最先端も垣間見ることができた.参加者は約1,400人と多く,会場が狭く感じられた.参加者は,筆者の目測であるが,米国から3割,フランスから3割,東アジア系では台湾人が40人,中国人が20人,韓国人が30人,日本人は10人程度であった.男女比は,女性が半分以上と多く,海外での疫学研究者は女性が多いことを反映していた.
この学会で,筆者は「日本におけるp-ジクロロベンゼン(pDCB)のリスク評価」と題してポスター発表を行った.質問としては「自国でも濃度が高いが,発生源が分かっていない.日本での発生源は?」「クリーニングした衣料からの放散も考えられると思うが,その寄与割合は?」「pDCBの使用をする家庭の割合は?」といったものがあった.消費者製品からの暴露については,日本では研究者が個別に測定したデータを公表している傾向にあるのに対し,ヨーロッパ,米国,カナダでは,政府および企業が暴露のデータを網羅的に収集し,そのデータを元に暴露評価を行っている点が,日本の状況と異なると感じた.企業の部長クラスの方々が,マーケティング情報の収集の意味もあるのか,消費者製品に関する発表を一つ一つチェックしていた.ある特定の消費者製品を多く使う「high-end user」と称される集団を定義し,その全体に対する割合を製品ごとに調査した結果が報告されていた.
学会に先立って行われたワークショップにおいては,”Separation of uncertainty and variability in NORMTOX”に出席した.受講者は筆者1人で,講師2名よりマンツーマンで講義を受けるという貴重な経験をした.講義を受けるほかに,こちらから日本での事例紹介などをし,意見交換の場としても有意義であった.CrystalBallのオプションの具体的な使用方法,2次元のモンテカルロシミュレーションで留意すべき事項と結果の解釈について等,実例を交えないと理解が進まない点について,こちらが正しく理解するまで丁寧に解説していただいた.この手法はCRMの今後の研究に役立つと考えられる.