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SOT 46th Annual Meeting参加報告

水圏環境評価チーム  岩田光夫     

 

2007年3月25日から29日にかけてアメリカNorth Carolina州,Charlotteで開催されたSociety of Toxicology (SOT) 46th Annual Meetingに参加した.SOTは北米の毒性学者のみならず世界中の毒性学者が集まる学会で,化学物質のヒトや環境への影響についての研究以外に,EPAやFDA職員等による化学物質の評価計画や施策に対する説明があった. 

2174の発表のなかからPBDEsの毒性研究,MoAとAEGLsについて報告する.

難燃剤のポリ臭素化ジフェニルエーテル類(PBDEs)の毒性については,作用機序解明の試験と実際の家庭から集められたUSAの標準ダスト(NIST,Standard Reference Materials 2585;Organic Contaminants in House Dust)での評価があり,実際のダストが子供に重大な影響をおよぼす可能性が示唆されていた.特に,低臭素のPBDEsについては脳への分布が多いことが示された(Hakkら).

Mode of Action(作用モード:MoAは,頑固な実験的観察と機序データに支持される生物学的に妥当な仮説/基礎)は,発がんリスクアセスメントの過程で,ここ30年間で進歩してきた.作用モードの知識は幾つかの過程で有用で,

・動物試験結果とヒト環境暴露との関連付けの評価
・用量‐反応が,低用量において線形か非線形かの洞察
・影響を受けやすい集団とライフステージの識別
・実験動物およびヒト集団における相対的感受性の定量化

について用いられてきた.
U.S.EPAはすでにMoA でChloroformとPerchlorateを評価して公表してきたが,更に約35物質については緊急に評価するとのことであった.MoAでの評価は一つひとつの化学物質ごとに行うことになるが,毒性試験で当該化学物質による特有でない現象(毒性試験に用いた動物のみで起こる特異な影響)についてのMoAのアセスメントを準備しているとのことであった(関連ウェブサイト: http://unit.aist.go.jp/crm/070123NEDO_iwata.pdf).

事故,天災及びテロにより有害な化学物質が,大気中に漏出した時のヒト健康評価であるAEGLs(Acute Exposure Guideline Levels)の基準濃度は,2002年以来,U.S.EPAが471物質を公表してきた(参考ウェブサイト: http://www.epa.gov/oppt/aegl/pubs/chemlist.htm).今回は,Crotonaldehydeについての評価過程が公表された.8時間でのAEGL-1は0.19ppm(ヒトでの眼刺激性から評価),AEGL-2は0.56ppm(ラットの肺の機能不全から評価),AEGL-3は1.5ppm(ラットの致死量から評価)であった(Milanez).
各AEGLs 値は以下のように定義されている.

AEGL-1(非障害性):著しい不快,刺激,あるいはある種の無症候性非感覚的作用が予測される気中濃度.
AEGL-2(障害性):不可逆的または他の重篤な長期にわたる有害な健康障害,または避難能力の欠如を招くと予測される気中濃度.
AEGL-3(致死性):生命を脅かす健康影響,または死亡が予測される気中濃度.
(関連ウェブサイト: http://staff.aist.go.jp/m-iwata/iwata_kyuuseibakuro.htm)

以上


化学物質リスク管理研究センター

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