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46th Society of Toxicology Annual Meeting(SOT2007)参加報告
リスク管理戦略研究チーム 小林憲弘
2007年3月25日から29日にかけて,米国ノースカロライナ州の州都であるシャーロットで開催された,46th Society of Toxicology Annual Meeting(SOT2007)に参加した,SOTは毎年北米で開催される,毒性学に関する世界で最も大きな学会の一つであり,今回の参加者は約6000人,演題総数は2000題以上であった.私は現在,NEDOプロジェクトの「ナノ粒子特性評価手法の研究開発」に従事しており,ナノ材料の有害性に関する情報収集を行うために,この学会に参加した.
今回のSOTでは,ナノ材料(カーボンナノチューブ)の有害性のWorkshopが開催され,また,ナノリスクに関するポスター発表も非常に多数見られた.
上記Workshopの内容については,納屋研究員の報告書の中で詳細に紹介されていることから,ナノ材料の有害性に関するポスター発表の中で,特に気になった発表の概要を以下に紹介する.
#1103 Murine Punmonary Pathology and Alterations in Systemic Immune Function Following 7, 14, and 30 Day Exposure to Inhaled Mutiwall Carbon Nanotubes (MWCNTs). L. Mitchell, University of New Mexico (USA)
Male C57BL/6マウスを使用して,MWCNT(0.7 μm median)の連続吸入暴露試験を行った.6h/day,7day/week,100, 300, 1000 μg/m3(0.2-2 μg deposited/day)の暴露条件で暴露させ,7, 14, 30日,およびプラス2週間の回復期間後に屠殺した.肺に対するMWCNTsの影響は観察されなかった.肺胞マクロファージ中にCNTが観測されたが,肺胞洗浄液中の細胞数の増加は観測されず,病理組織学的所見および肺肉芽腫も見られなかった.炎症関連サイトカインおよび酸化的ストレス関連遺伝子(IL-6,IL-10,HO-01)の増加もなかった.
#1387 Toxicology of Titanium Dioxide (TiO2) Nanoparticles: 1. Characterization and Tissue Distribution in Subcutaneously and Intravenously Injected Mice. T. Umbreit, FDA (USA)
ナノサイズTiO2をBalb/cマウスに皮下投与および静脈注射し,各臓器の分布を調べた.通常ではありえないような高濃度の暴露実験である(皮下投与:5600 mg/kg,静脈注射:560 mg/kg).肝臓,肺,脾臓において,TiO2クラスターが見られたが,腎臓および脳において,TiO2クラスターは見られなかった.
#1404 Size- and Dose- Dependant Toxicity of SiO2 Nanoparticles in Keratinocytes. K.O. Yu, Air Force Research Laboratory (USA)
マウスケラチノサイトを用いて,異なる濃度およびサイズのSiO2のIn vitro毒性試験を行った.濃度が高いほど,またサイズが小さいほど,MTTアッセイにおいてより強い毒性を示した.また,ポスターには示していないが,LDHアッセイにおいても同様の結果が得られた.
これら以外にも,ナノ粒子の有害性試験結果が数多く報告されていたが,それらの試験のうちの一部は,暴露されたナノ粒子のキャラクタリゼーションが不十分なものもみられた.特に,暴露した時のナノ粒子の分散状態については,ほとんどの研究で把握されていなかった.このことが,一部で指摘されているような,サイズと有害性との関係に関する議論を困難にしており,分散状態の把握はナノ粒子を用いた有害性試験において,今後の鍵となると感じた.
以上.