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46th Annual Meeting of the Society of Toxicology
(第46回米国毒科学会年会)

健康リスク評価チーム  納屋聖人     

 

学会名:46th Annual Meeting of the Society of Toxicology(第46回米国毒科学会年会)
日時:2007年3月25日〜29日 (出張期間:3月24日〜31日)
場所:シャーロット(米国ノースカロライナ州)
参加者は約6000人,演題総数は2174題
主として,ナノ材料の有害性情報に関する情報収集を行なった。
 

【カーボンナノチューブのワークショップ】

Health risks of carbon nanotubes: What can we learn from mineral fibers or ultra-fine particulates?

J.S. Tsuji, Exponent(USA)

単層カーボンナノチューブ(SWCNT)はニッケル,鉄,コバルトなどの金属を含む。多層カーボンナノチューブ(MWCNT)はSWCNTよりも金属含有は少ない。in vivo毒性試験として気管内投与試験が実施されていことを紹介。


 

Challenges of monitoring exposure to airborne carbon nanotubes.

A. Maynard, Woodrow Wilson Int. (USA)

SWCNT,MWCNTは製造方法,ロットによって物理・化学性状が異なるので,暴露モニタリングは容易でない。SWCNT,MWCNTのキャラクタリゼーションは透過型電子顕微鏡による観察がよい。


Bio-persistence of synthetic vitreous fibers and tumorigenic potential. 

T.W. Hesterberg, Int. Truck Engine Corp. (USA)

合成ガラス質繊維(SVF)の肺に対する影響を紹介。SVF を5日間吸入暴露し,その後1年間観察。長さ20 μm以上の繊維は肺に長期間残留。CNTは溶解されず,肺に残留し,凝集する可能性がある。


How the progression of pulmonary toxicity research is informing comparisons of CNT with mineral fibers. 

D.B. Warheit, DuPont (USA)

カルボニル粒子,クォーツ粒子,カーボン粒子,SWCNT(5mg/kg)をラットに気管内投与して,肺に対する毒性を比較。投与後1,3ヶ月間観察したところ,マクロファージの集簇,肉芽腫がみられた。SWCNTの肺毒性はシリカ,アスベストの肺所見とは異なる。SWCNTは凝集することから,気管内投与と吸入暴露では病理所見が異なるので,肺毒性は吸入暴露で評価すべき。


                

Comparison of pulmonary responses to single-walled vs. multi-walled carbon nanotubes.

 V. Castranova, NIOSH (USA)

マウスにSWCNT, MWCNTの10, 20, 40μgを咽頭部アスピレーション法で単回投与。投与後1-90日間観察し,気管支肺胞洗浄液(BAL)検査,病理組織学的検査を実施。SWCNTは投与後60日に10μg以上で肺に線維化。SWCNTとMWCNTの比較では,BAL中の多核白血球数はSWCNTのほうが増加,乳酸脱水素酵素(LDH)はMWCNTのほうが上昇。また,MWCNTでは投与後7日に嗅球で炎症関連物質が増加し,酸化ストレスマーカーのHO-1が大動脈,心臓,肺で上昇。ただし,投与後1,28日では正常範囲内。SWCNTについては in vitro での評価を実施したが,線維化に関しては in vivo の予測性は低かった。


 

Toxicity of carbon nanotubes and its implications for occupational and environmental health.

C. Lam, NASA (USA)

各種のナノ材料をラットに気管内投与し,投与後90日間観察。肺における炎症,肉芽腫,線維化,BAL所見,大動脈におけるDNA障害,血栓形成などを観察。



【ナノ材料のポスター発表】

Assessing the adequacy of in vitro cell culture systems to accurately predict the in vivo pulmonary toxicity of fine and nano-sized particulates.

C.M. Sayes, DuPont (USA)

in vitro の細胞培養系による評価と,in vivo の肺毒性評価を比較したところ,関連性は少なかったことから,in vitro試験のさらなる改良が望まれるとのこと。


 

Dispersion significantly enhances the pulmonary toxicity of single walled carbon nanotubes. 

R.R. Mercer, NIOSH (USA)

マウスに分散させたSWCNT(平均径0.69μm)の10 µgを咽頭アスピレーション法で単回投与,その後1ヶ月間経過を観察し,BAL検査と病理組織学的検査を実施。よく分散したSWCNTは肺胞から間質へ取り込まれて,線維化を生じる。分散していないSWCNTは肺胞に長く残留。



<以上>


化学物質リスク管理研究センター

独立行政法人 産業技術総合研究所