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環境暴露モデリングチーム


環境暴露モデリングチームは,東野晴行をチームリーダーとして,5名(研究員4名,テクニカルスタッフ1名)で構成しています。当チームは,大気環境,室内環境及び河川における暴露評価モデルの開発を中心課題として,研究を進めております。
 


■ 地域スケール大気モデル(ADMER)  ■
 
ADMER(正式名称:産総研−曝露・リスク評価大気拡散モデル(national institute of Advanced Industrial Science and Technology - Atmospheric Dispersion Model for Exposure and Risk assessment : AIST-ADMER ) は,化学物質の大気中の濃度と暴露人口を,排出量と気象条件から計算するモデルです。 

2007年1月から配布を開始した最新版のVer.2.0では,市区町村程度の比較的小さい領域での使用場面で強く望まれていた高解像度化を, 5 x 5kmグリッドの内部をさらに細かいグリッドで解析する機能(サブグリッド解析機能)を新たに開発し搭載することによって実現しました。また,地理情報システム(GIS)の導入による図化機能や操作性の向上,気象データやグリッド排出量の作成や曝露人口の推計に用いる各種統計データの自動ダウンロード機能の搭載,市区町村別の排出量や平均濃度を自動的に計算する機能を搭載するなど,多くのユーザーの方々からの要望に応えるための様々な改良を同時に行いました。 

現在,ADMERは,簡便な操作性や入手の容易さ,さらに, PRTR制度が施行され様々な排出量データが容易に入手できるようになったことから, ユーザーが年々増加しており,国,自治体,教育機関,企業などすでに様々な場所で,大気系化学物質のリスク評価に活用されています。 

ADMERは一般に公開されており,誰でも無償でダウンロードして利用可能です。ダウンロードやADMERの詳細については下記のWEBサイトを参照して下さい。
ADMER WEBサイト:http://www.riskcenter.jp/ADMER/

 

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ADMER Ver.2.0 の機能概略図

■ 次世代型広域大気モデル(次世代ADMER) ■
 
溶剤・溶媒などで用いられるVOC類は,近年,PRTR対象物質からアルコールなどの非PRTRの有機化学物質への代替が進んでいますが,これらの代替物質の中は,そのものの有害性は低いものの,環境中での二次生成まで考えた場合,アルデヒドやオゾンなど有害性の高い物質の前駆物質となるものも多く,必ずしもリスク削減にはつながっていない可能性があります。このようなリスクトレードオフ問題を解析するためには,排出物質の大気中濃度に加えて,光化学反応等によって二次生成されるアルデヒド類等の分解生成物の大気中濃度を知る必要があります。

このような背景から,揮発性有機化学物質の大気環境中の反応及び沈着過程をモデル化し,三次元オイラー型の気象・拡散モデルに組み込むことにより,揮発性有機化合物の二次生成物質(主にオゾンとアルデヒド類)の大気環境中濃度が推定可能となる大気モデルの開発を進めております。

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次世代型広域大気モデル(次世代ADMER)の概念図

 

■ 室内空気暴露モデル ■

化学物質の暴露によるヒト健康リスクは,大気を含む一般環境経由の暴露の寄与よりも,室内暴露による寄与の方が大きいケースもあり,暴露総量を勘案した適切なリスク評価を行うためには,室内暴露の影響は無視できません。そこで,室内での暴露及びリスク評価手法の確立のために,製品からの放散量と,その室内での挙動を明らかにし,吸入経路を中心とした暴露量の推定を可能にする数理モデルの開発を進めております。

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室内空気暴露モデルの概念図

 

■ 河川における化学物質の暴露濃度推定モデル ■
 
河川における水生生物の生態リスクを評価するには,河川水中の化学物質の濃度を知る必要がありますが,観測の地点や回数は限られているため,観測データだけでリスク評価を行うことは困難です。このような背景から,水系における時空間的に詳細な化学物質の暴露濃度を推定できる化学物質のリスク評価・管理のための産総研−水系暴露解析モデル(AIST-Standardized Hydrology-based AssessmeNt tool for chemical Exposure Load,通称AIST-SHANEL)の開発を進めております。

本モデルを使えば,水生生物に影響が出る濃度を超える確率を水系全体で見ることもできます。例えば,生態リスクの削減が必要な場合,業種や用途別の排出量削減や下水処理場での除去率向上に関わるモデル入力部分を変えて計算すれば,リスク削減対策が化学物質濃度の低減にどのような効果があるのかを定量的に評価することもできます。

AIST-SHANELは一般に公開されており,誰でも無償でダウンロードやCD-ROMで利用することができます。AIST-SHANELの詳細については下記のWEBサイトを参照して下さい。
AIST-SHANEL WEBサイト:http://www.riskcenter.jp/SHANEL/

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利根川・荒川流域のノニルフェノールエトキシレート濃度が5.0mg/m3以上になる超過確率

 

 


化学物質リスク管理研究センター

独立行政法人 産業業技術総合研究所