社団法人環境科学会 論文賞受賞のことば

リスク解析研究チーム 手口 直美

 

 

このたび、2005年の環境科学会誌に掲載されました論文、「フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)のヒト健康リスクの評価」(手口直美・神子尚子・吉田喜久雄 (2005) 環境科学会誌,18(4),373-383.)に対して、社団法人環境科学会より論文賞をいただきました。この論文は、軟質塩ビ用の可塑剤として大量に使用されているフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)について、既報のモニタリングデータを緻密に調査・解析し、わが国におけるDEHP平均一日摂取量の分布を年齢群別に詳細にモンテカルロ・シミュレーションを用いて推定し、既報の有害性情報をもとに、わが国一般住民における年齢群別のヒト健康リスクを評価したものです。この論文の内容にもとづいて、去る9月10、11日に長崎大学にて行われた環境科学会2007年会において、論文賞記念講演を行い、表彰式に出席いたしました。
 
受賞理由は、「本論文で評価されたDEHPのヒト健康リスクは、当該物質についての従来に行われたワーストケースの暴露シナリオに基づく初期評価結果を大きく進歩させた。当該物質については国内ではじめて詳細なリスク評価結果を与えているものであり、有害化学物質の管理において国際的に求められている「科学的根拠に基づくリスク評価」の推進に大いに貢献するものであることから、環境科学会論文賞としてふさわしいと評価できる。」というものでした。
 
私たちCRMが全力を挙げて取り組んできました詳細リスク評価の成果が環境科学の分野で広く認識され、このような賞をいただくことができましたことを大変喜ばしいことと思っています。詳細リスク評価および論文の作成に際してご指導、ご支援いただきました多くの皆さまに深く感謝いたします。また、今回ご選考いただいた先生方および環境科学会の関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。

 



第48回大気環境学会年会ベストポスター賞受賞のことば


大気圏環境評価チーム 梶原 秀夫

 

去る9月4日〜6日に岡山理科大学で開催された第48回大気環境学会年会において、私たち(梶原秀夫、高井 淳、吉門 洋)の研究発表「METI-LISモデルを用いた大気汚染物質の発生源逆解析−新潟県燕におけるトリクロロエチレンについて−」が、ベストポスター賞を受賞いたしました。年会運営関係者の方々、また投票してくださった学会参加者の皆様に、厚くお礼申し上げます。この研究は、工場周辺の大気中濃度分布を予測するためのモデルであるMETI-LISを通常とは逆に使い、濃度データから発生源の情報(位置、排出量)を求めるというものです。ポスターセッションでは、説明を聞いてくださった方がこの研究に興味を持ってくださっていることが伝わってきて、大変勇気づけられました。また、これまで気づかなかった視点や今後の課題についても示唆に富む指摘をいただきました。学会全体としては、岡山理科大学のキャンパスという会場にも恵まれ、まとまりのある学会だったという感想です。今回の受賞を励みにして、逆解析モデルの研究成果が1つでも多くの化学物質管理の問題解決につながるよう努力していきたいと思っています。

 

 


化学物質リスク管理研究センター

独立行政法人 産業技術総合研究所