− 新研究員紹介 −

科学研究者ではありませんが・・・

著者写真 客員研究員 
塩沢 文朗

 

今度、CRMの研究活動をお手伝いすることになりました。私は約30年間にわたって行政官をやってきたので、科学研究の実績は大学院時代以降全くありませんが、行政に携わっている間に「レギュラトリー・サイエンス(RS)」に取り組む専門家集団の重要性を痛感してきました。今回、その最前線の研究現場のお手伝いができることを非常にうれしく思っています。 

このコラムは、新しい研究者のバックグラウンドを紹介するためのものと聞きました。私の場合、あれをやったこれをやったという感じになってしまいますが、行政官というのはそんな仕事なので、ご了解ください。大学では化学工学を専攻し、横浜国立大学大学院工学研究科において修士課程を修了しました。また、米国留学の機会を得た際には、Stanford大学大学院コミュニケーション学部でDiffusion of Innovationsを勉強しました。 

役所では、いろいろなことを担当しましたが、CRMともっとも関係深いことをご紹介すれば、経済産業省で初代の化学物質管理課長(最後の化学品安全課長)を務めたことが挙げられます。その際、化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)の制定に携わりました。また、当時(1996〜1999年)は、環境ホルモンやダイオキシン問題で世の中が騒然としていた時代で、科学的根拠に裏付けられたリスク管理の必要性を強く感じた次第です。同時期、経済協力開発機構(OECD)の化学品グループで、同グループの副議長を務めていた関係で、未だにその時に一緒に働いた欧米の専門家とは親交をもっています。2004〜2006年までは、内閣府で総合科学技術会議と原子力委員会の事務局として、それぞれ「第3期科学技術基本計画」や「原子力政策大綱」の策定に携わりました。その際、RSのような科学技術活動の重要性について、基本計画の中に書き入れました。(さあ、どの部分でしょう。探してみて下さい。)現職の(財)日本規格協会、理事としては、国際標準化機構(ISO)におけるナノ・テクノロジーの標準化にも関係しています。 

行政官としてのこれまでの経験をもとに、CRMの研究活動に対して、何らかのお役に立つアドバイスなどができればと思っております。科学研究者ではありませんが、どうぞよろしく。

【略歴】 
・1977年3月 横浜国立大学大学院工学研究科化学工学専攻修了(工学修士) 
・1977年4月 通商産業省に入省 
・1984年6月 Stanford大学大学院コミュニケーション学部修了(M.A.) 
・1996年6月 通商産業省 基礎産業局化学品安全課長 
・1999年9月 通商政策局技術協力課長 
・2001年7月 経済産業省 大臣官房参事官(技術担当) 
・2003年7月 大臣官房審議官(産業技術担当) 
・2004年7月 内閣府 大臣官房審議官(科学技術政策担当) 
・2006年7月 (財)日本規格協会 理事に就任。現在に至る。       
                  この他、早稲田大学非常勤客員教授;東京工業大学、東北大学非常勤講師など。


 

著者写真 健康リスク評価チーム 
研究員 鈴木 一寿


今年度から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの受託研究「ナノ粒子特性評価手法の研究開発」に携わることになりました。東京工業大学大学院原子核工学専攻博士課程終了後、国立環境研究所のポスドクフェロー、産業技術総合研究所の特別研究員を経て、現在、任期付研究員として、これまでと同じ健康リスク評価チームに所属しています。 

工業ナノ粒子の有害性評価の一環として実施されるラット等の実験動物における長期吸入試験結果、およびin vitro/vivo試験結果等のヒトへの外挿法開発が主な研究テーマです。このとき、放射性核種の内部被曝線量評価に使われている粒子状物質のヒト呼吸気道沈着・クリアランスモデル等を応用して、肺沈着特性および体内動態等を解析したいと考えています。また、最近取り組んできたホルムアルデヒドの詳細リスク評価の経験等を生かし、実際に使用・暴露があり社会的関心が高い工業ナノ材料である二酸化チタンの詳細リスクの解析に従事したいと思います。

 
 


化学物質リスク管理研究センター

独立行政法人 産業技術総合研究所