国際学会参加報告
北米環境毒性化学会(SETAC)第26回年会 生態リスク解析チーム 内藤 航
2005年11月13日から17日、北米環境毒性化学会(SETAC)第26回年会が米国メリーランド州ボルチモアで開かれ、CRMから内藤および孟が参加した。今回のSETAC年会は、全体で発表が約1,800件、参加者が約2,400人であった。内藤は魚食性鳥類に対するCo-PCBsの個体群レベルの生態リスク評価を、孟はニューラルネットワークを用いたアルコールエトキシレート(AE)の異性体の毒性予測に関する研究を発表した。今回の年会のテーマは「グローバル社会における環境科学:今後25年のSETACの役割」であり、その特別セッションでは、環境毒性学や環境化学研究の重鎮らがそれぞれの分野における科学的現状と将来に対する展望について、趣向を凝らした発表をしていた。複合暴露による影響、トキシコゲノミクス、底質毒性、環境化学鑑識学(Environmental Chemical Forensics)等の分野の発表数が増加している印象を受けた。
また今回初めて「中国の経済成長に伴う環境の変化」という中国一国における環境汚染の実態等を報告するセッションが開かれていた。ナノテクノロジーの環境やヒト健康に対する影響についてのセッションも開かれ、多くの参加者の関心を集めていた。そのセッションでは、米国環境保護庁などの政府研究機関の取り組みや研究プロジェクトの紹介から毒性や環境挙動に関する研究まで幅広い報告が行われていた。
ナノマテリアルの毒性や環境挙動の解明に関する研究発表では、研究目的に対する最終成果ではなく、試験方法や分析法の事前検討結果などむしろ中間報告的な感じの発表が目立った。米国のスーパーファンド法で指定された汚染地域の生態系に対するリスク評価等、多くの生態リスク評価研究が発表されていたが、評価手法は生物の無毒性量と暴露量を単純に比較したものが大半を占め、筆者の研究のような個体群レベルでの評価研究はほとんど見られなかった。
筆者は、これまで何回か本学会の年会で研究成果を発表してきたが、今回の研究発表はその中でも比較的好評であった。共通の関心を持つ研究者との人的交流も深めることができ有意義な学会参加であった。