研究内容 Research

時間周波数標準の維持・管理

「協定世界時(UTC)」は、時刻の標準として現在世界中で共有されている時刻系です。UTCは各国の標準研究機関で稼働している数百台の原子時計の荷重平均から計算されるため、高い安定性と冗長性を持つ一方で、リアルタイムには利用できないという性質があります。そこで各国の標準研究機関では、一つもしくは複数の原子時計を切れ目なく運転することで、UTCにできるだけ近い、いつでも利用可能な「現地版UTC」を生成し、それを時間周波数分野の標準供給の原振として利用しています。NMIJでは、時間周波数国家標準であるUTC(NMIJ)を維持・管理し、標準供給の原振として利用しています。また、UTC(NMIJ)の維持・管理に加えて、その生成方法を高精度化する研究にも取り組んでいます。

次世代周波数標準の研究・開発

ほんの数十年前まで、秒は地球の自転や公転に基づいて定義されていました。1955年に英国立物理学研究所で世界で初めてセシウム原子時計が開発され、その後1967年に秒はセシウム原子の遷移周波数を基準に定義されるようになり、今日に至っています。現在、秒の定義として用いられている周波数は約9.2 GHzのマイクロ波ですが、マイクロ波に比べて約50000倍高い周波数をもつ光を用いると、さらに正確な時計を作ることが出来ます。この光周波数標準の正確さは、秒の定義を実現しているセシウム原子時計を凌駕しており、光周波数を用いた秒の再定義が検討されています。時間標準研究グループでは、光格子に捕捉された中性原子群の光領域の遷移周波数の基準として、超狭線幅レーザーを発振器として用いる「光格子時計」を開発しています。

光時計による新しい時系

現在の時系は、セシウム原子時計や水素メーザーなど、マイクロ波周波数標準を用いて構築されています。光格子時計や単一イオン光時計などの光周波数標準は、マイクロ波周波数標準よりも精度が高い事が示されており、今後、この高精度な光周波数標準をどのように高度な時系の構築に生かしていくかは重要な研究課題です。特に、光周波数標準を連続あるいは定期的に運用できるシステムの開発が求められています。

高精度な時刻比較

世界各国で非常に高精度な周波数標準の開発が進められており、その不確かさは年々小さくなっています。それと平行して、遠隔地の周波数標準器間の超高精度時間周波数比較法の開発を推進していく必要があります。例えば、搬送波位相を用いた衛星双方向時間周波数比較法や光ファイバーを用いた光周波数の直接伝送による比較法が有望と考えられており、これらの研究を推進しています。