標準 Standard
国家標準
抵抗標準
- 抵抗国家標準
測定能力 (拡張不確かさ(k = 2))
100 Ω : 48 nΩ/Ω (0.000 004 8 Ω)
10 kΩ : 50 nΩ/Ω (0.000 50 Ω)
電圧標準
- 電圧国家標準
測定能力 (拡張不確かさ(k = 2))
1 V, 1.018 V : 8 nV/V (0.000 000 008 V)
10 V : 4.5 nV/V (0.000 000 045 V)
冷凍機関連装置
希釈冷凍機
- OXFORD Kelvinox 100
- 最低到達温度 20 mK
- 再凝縮デュワー
- DC line ×20 / Source drain line / RF line (~1.35GHz) ×20
- 12 T magnet
無冷媒希釈冷凍機
- BlueFors LD400
- 最低到達温度 6 mK
- DC line / Source drain line / RF line
- 12 T magnet
He3冷凍機
- トップローディング
- 最低温度保持時間 30時間
- 最低到達温度 500 mK
- 到達磁場 15 T/17 T
極低温電流比較器
- Core home made
- Conductus 社製 SQUID
- 最大 2065 ターン
その他 4K パルスチューブ冷凍機、室温ボアマグネット 等
素子作製関連装置
電子線描画装置
- Elionix
- 加速電圧 50 kV
真空蒸着装置
- EIKO
- EB蒸着 5源:Thermionics 3 kW 5連e-gun/270度偏向/xyビームスイープ
- 抵抗加熱蒸着 1源
- 基板傾斜 (360度)
- ロードロック(スパッタ / 酸化(アルゴン酸素・アルゴン))
ドラフト
- Mikasa スピンコーター
- ホットプレート
- 超音波洗浄機
オートプローバー
- Cascade Auto prober
- 4 ch
- 半導体パラメーターアナライザ
ナノチューブ成長装置
- Hand made
ワイヤーボンダ―
- Au , Al
その他 レーザー顕微鏡・光学顕微鏡 等
マイクロ波関連装置
シグナルジェネレーター
Hittite Microwave HMC-T2220
- 0.01 to 20 GHz 1Hz step
- Power 24 dBm
ネットワークアナライザ
Keysight N5232A 2ch
- 300k to 20 GHz
- Powe 13 dBm max
任意波形発生器
Keysight M8190 2ch
- 12 Gsample/s 12bit
- memory 2G sample/channel
Keysight 33622A
- 1 G sample/s 14 bit
- 4M sample per channel
AD/DAボード
SP devices SDR-14 AD2ch/DA2ch
- AD: 800 Msample/s 14bit 500Mbyte Memory
- DA: 1600 Msample/s 14bit 500Mbyte Memory
- FPGA Vertex-6 LX240T
National Instruments NI 5170R
- 8ch AD: 250 Msample/s 14bit 1.5 Gbyte Memory
- FPGA Kintex-7 325T
高周波部品
- 低温アンプ (~0.1 GHz) Home made
- 低温アンプ (0.001 to 1.5GHz) Caltech製 CITLF1
- 低温アンプ (0.3 to 14 GHz) Lownoise factory製 LNF-LNC03_14A
- サーキュレーター、方向性結合器、アテネーター、スプリッタ―、ミキサー、IQミキサー 等
直流・低周波関係
- ロックインアンプ
- デジタルマルチメーター
- ナノボルトメーター
- 直流電圧源
- IV conveter
- ソースメーター
- 電流アンプ、電圧アンプ
- 18ch DAC
校正 Calibration
直流電圧
「オームの法則」(V = R × I )(V :電圧、R :抵抗、I :電流)は、直流の電気量を扱う際に最も基本となる関係式です。それらの電気量の中で、V の基準となるのが「電圧標準」です。 直流電圧の日本における国家標準は1977年から現在に至るまで、超伝導素子で生じる「ジョセフソン効果」という量子現象を利用して実現されてきました。2015年からは、冷媒として従来用いられていた液体ヘリウムに代わり、 無冷媒の機械式冷凍機を用いた新しい国家標準システムが稼働しています(図1)。
2個の超伝導を、薄い絶縁層を介して十分に近づけると、トンネル効果によって超伝導電流が流れるようになります。このような素子をジョセフソン接合と呼びます (図2)。そこにマイクロ波を照射すると共振現象が起こり、電流-電圧特性にとびとびの電圧値を持った櫛状の定電圧ステップ(シャピロステップ)が生じます。各ステップの電圧値は、マイクロ波の周波数f とプランク定数h、電気素量e、整数nによってのみ決まる普遍的な値((1)式)のため、これを利用して電圧標準が実現されています。
ここで(1)式におけるKJ は普遍的な基礎物理定数ですが、現実にその値を決定する際には測定精度に依存した不確かさが伴います。また、その値自体も今後、測定技術の進歩と伴に改訂されていく予定であったため、標準供給の上では実用上の不便が生じてしまいます。そこで、1988年に国際度量衡委員会(CIPM)は電圧標準供給における実用上の協定値として、
という値を、1990年1月1日より世界中で統一して用いることを勧告しました。この値は、不確かさをもたない定義値として、量子ホール抵抗標準におけるフォンクリッツィング定数の協定値(RK-90 ≡ 25812.807 Ω) とともに、電気標準体系において2019年まで用いられてきました。
しかし、2018年11月に開催された第6回国際度量衡総会(CGPM)において、国際単位系(SI)における7つの基本単位のうちの4つの定義改定が決議されたことに伴い、2019年5月20日からは電気標準における(2e/h)の値としてKJ = 483 597.848 416 984 GHz/Vという
値が用いられることになりました。このジョセフソン定数の値は、改定されたSIにおける電気素量とプランク定数の定義値(e = 1.602 176 634 × 10-19, h = 6.626 070 15 × 10-34) から得られるものであり、SIにおける力学量などの他の量目
の値と完全に整合するものです。なお、ジョセフソン定数の値の桁数は、多くの測定で丸め誤差が無視できる15桁とすることが原則ですが、必要に応じてeとhの定義値から計算しても構いません。
産総研の計測標準研究部門(NMIJ)では、ジョセフソン効果を利用した図1のシステムを、国家一次標準として定められた特定標準器として維持・管理しています。このシステムを用いて、計量法校正事業者登録制度(JCSS)の登録事業者が有する特定二次標準器(ツェナー標準電圧発生器)の校正を行います。こららの特定二次標準器を用いて、 常用参照標準器(登録事業者が保有)や実用標準器(ユーザーが保有)が校正され、さらにユーザーの汎用測定器(電圧計や電圧発生器など)が校正される、というように直流電圧のトレーサビリティ(校正の連鎖)が保たれています(図3)。また、図1のシステムは、メートル条約に加盟する他の国々が保有する電圧標準システムとの間で国際相互比較が行われており、これによって、日本が保有する電圧標準の国際的な同等性が保証されています。
参考文献
[1] 遠藤 忠:新しい電気の量子標準―ジョセフソン効果電圧標準と量子ホール効果抵抗標準―,応用物理, Vol. 59, No. 6, pp. 712–724, 1990.
[2] 村山泰、坂本泰彦、桜庭俊昭、西中英文、遠藤忠:電圧標準, 電子技術総合研究所彙報 64, 5, 2000.
[3] 吉田春雄:ジョセフソン電圧標準装置のための位相同期回路,産総研TODAY, Vol. 10, p. 29, 2002.
[4] 浦野千春,金子晋久,桐生昭吾:量子電気標準の現 状,電子情報通信学会誌, Vol. 88, No. 10, pp. 829–834, 2005.
[5] 大江武彦:量子電気標準の現状と研究開発動向,産総研計量標準報告, Vol. 6, No. 2, pp. 119–127, 2007.
[6] 丸山道隆:ジョセフソン電圧標準の現状,産総研計量標準報告, Vol. 8, No. 2, pp. 263–278, 2011.
[7] 金子晋久:アンペアの定義の変遷と電気素量に基づく定義がもたらす新たな計測技術, Vol. 58, No. 5, pp. 341 - 348, 2019.
[8] 丸山道隆, 大江武彦:電気標準とSI改定による影響, 電学誌, VOl. 139, pp. 356 - 359, 2019.
直流抵抗
直流抵抗標準は,二次元電子系を低温,高磁場下に置いた場合に,量子化されたホール抵抗が観測されるという量子ホール効果によって実現されています。
通常のホール効果の場合、磁場の増加に対してホール電圧はほぼ線形に増加しますが、量子ホール効果の場合,磁場に対するホール電圧の変化は非線形になり,ホール抵抗 は左の式で表される値で量子化します。
ここで, hはプランク定数、eは電荷素量、iは0以外の自然数です。
量子ホール効果はフォン・クリッツィングによって1980年に発見され、その後の研究を経て1990年1月より世界の主要な標準研究所において直流抵抗の一次標準として用いられています。