研究内容 Research

単一光子を分光測定できる超微弱光検出技術の開発

"光子”は、粒子と波の両方の量子的な特性を持ち、計測における究極的な感度を達成できる測定対象です。そのため、光子に基づく計測(フォトンカウンティング)は、生物発光計測や量子情報通信、ライダー環境計測など、微弱な光が重要な意味を持つ分野ではその信頼性高く光子を計測できる技術が求められています。

この光子を正しく計測する一つの技術として、弊所では、超伝導転移端センサ(TES; Transition edge sensor)と呼ばれる光検出技術の開発に取り組んでいます。TESでは、ほぼ100 %の確率で単一光子を検出することはもちろん、光子の色、光パルス中の光子数などの情報を得ることも可能です。

本グループでは、この優れた技術を単一光子分光イメージング装置へ応用し、創薬等に重要な知見を与える技術へと展開することに取り組んでいます。

光の量子状態制御と量子イメージング技術への応用


我々が日常で用いているレーザー光(コヒーレント光)は、原理的に取り除くことができない量子的な雑音を持っています。究極的な精度のイメージング技術を実現するためには、この光の持つ量子的な揺らぎや量子状態を高度に制御する必要があります。本研究では、微弱光による量子イメージング技術の実現に向けて、世界最高レベルの高純度な量子揺らぎ制御技術の開発や相関光子対生成技術の確立を目指しています。

微弱光を用いたイメージング技術は、使用できる光の強度が制限されるような状況において、大いに力を発揮することが期待できます。例えば、単一原子の量子状態や目の網膜などの究極的な非破壊・非侵襲イメージングがその一例であり、基礎科学から医療応用などへの様々な展開が可能です。

量子電圧雑音源を用いた雑音温度計測システムの開発

研究概要:抵抗器の熱雑音から熱力学温度を求めるジョンソン雑音温度計の開発に取り組んでいます。雑音電力の絶対値を求めるために、出力信号のパワースペクトル密度が、電気素量、プランク定数、周波数、および任意の係数で記述可能な量子電圧雑音源を雑音電力の基準信号源として利用します。この測定システムによって熱力学温度の精密測定に挑戦しています。

無冷媒冷却技術と高安定低温度場生成技術の開発

研究概要:機械式冷凍機とヘリウムのジュール・トムソン膨張冷却回路を組み合わせた極低温冷却装置を開発しました。1 K以下から数十 K程度の範囲で、極めて温度の安定した低温環境を生成し、温度センサーの特性評価や、物性測定などに活用しています。

極限計測を実現するミリケルビン・プラットフォームの開発

研究概要:超伝導デバイスを用いた超高感度計測の実現には、一般にミリケルビンの極低温度環境が必要です。我々の有する希釈冷凍機や核断熱消磁冷凍機開発技術、超低温度標準などを活用し、極低温度環境を安定に提供するミリケルビン・プラットフォームの開発に取り組んでいます。

新規物質における量子ホール効果の普遍性についての研究

研究概要:精密電気測定技術を用いて、新規物質における量子ホール効果を精密測定しています。未来の量子抵抗標準デバイスへ向けた基礎研究を進めています。

生物発光反応の基礎研究および応用関連技術開発

発光効率が極めて高いと言われている生物発光反応は、バイオテクノロジー研究の基本ツールとして、医療、創薬など幅広い分野で応用されています。

そこで、発光反応の分子機構研究、発光の精密分光定量、発光反応を応用したイメージング技術、検査技術などについて、発光の計測を通じた研究開発活動を行っています。