放射能グループの概要


 概要
 
 放射性物質は、原子力を含む理工学、医療、生物学、農業、環境科学等幅広い分野で利用され、人類に利益をもたらしてきた。同時に放射性物質は人体に有害でもあり、適切な管理が必要不可欠である。放射能の測定は、放射性物質を利用するにあたり、最も基本的な要素である。放射能の測定量が正確であり、かつ測定者による差異が小さくしないと、放射能強度の過小評価による被爆事故や放射能汚染に繋がってしまう。
 このため、放射能測定器については、計量法第百三十四条により特定標準器と規定される一次標準器が存在し、校正経路を辿ると、すべての放射能測定器が一次標準器からの校正を受けているトレーサビリティ体系が確立されている。また、国際度量衡委員会放射線諮問委員会第2部会加盟の一次標準機関では、頻繁に国際比較が行われており、一次標準機関での整合性が確保されている。


 現在、産総研が供給できる放射能標準核種の数は60以上ある。放射能標準は、線種、エネルギー、強度において、互いに異なる多くの種類がある。この放射能標準を維持、供給するため、放射能絶対測定装置群と呼ばれる複数の計測装置が稼動している。これらの放射能絶対測定装置群の構成装置は以下の通りである。4πβ-γ同時測定装置、標準線源付き4πγ加圧型電離箱、γ線スペクトロメータ、液体シンチレーションカウンタ、荷電粒子測定装置である。
 これらの装置の維持管理、標準の供給、放射能測定装置および放射線源の高度化の研究が放射能グループのミッションとなっている。


放射能のトレーサビリティ

放射能標準のトレーサビリティとは、放射能測定器がより高位の標準器よって校正され、国家標準にまで校正経路が確立している、ということである。
 この放射能標準のトレーサビリティ体系は日本では以下のようになっている。産総研が放射能絶対測定装置群を保有し、国家標準を維持、供給する。認定事業者である日本アイソトープ協会が特定二次標準器を保有し、校正業者または一般ユーザーに標準放射能を供給し、校正業務を行う。日本アイソトープ協会が保有する特定二次標準器は、産総研の放射能絶対測定装置群で校正される。その他の校正事業者は、常用参照標準器を保有し、一般ユーザーの測定器の校正業務を行う。常用参照標準器は特定二次標準器で校正される。産総研は、さらに、国際比較(キーコンパリソン)に参加し、放射能測定の国際的整合性を確保している。
 国際比較は国際度量衡委員会(CIPM; Comité international des poids et measures)の放射線諮問委員会第2部会(CCRI-II; Comité consultatif des rayonnements ionisants - section II)主催のものと、国際度量衡局(BIPM; Bureau international des poids et measures)の国際γ線核種放射能測定参照システム (SIR; Systéme Inter-national de Référence)を利用したものがある。産総研は両方の国際比較に参加しており、さらに、アジア太平洋計量計画(APMP; Asia Pacific Metrology Programme) においても、国際比較のコーディネイトを実施している。


研究内容

放射能および中性子関連量の国家計量標準の維持・供給・高度化と新しい標準の開発を図りつつ、国際相互承認体制に伴うCMC登録項目の維持と標準供給の円滑化を進める。

BIPM/CCRI(II)
主催の放射能測定基幹国際比較に参加するほか、国際比較へ向けた技術開発を行う。また、産総研が企画してAPMP域内での国際比較を実施する。

福島事故に対応するための技術開発、放射能標準物質の開発、環境放射能標準の開発、医療用放射能標準の開発を行う。