放射能グループの測定機器



4πβ-γ同時測定装置

同時測定法は標準線源が不要である放射能絶対測定法である。分岐比等、崩壊形式のパラメータや、検出器の検出効率も不要である。特定標準器群の中でこの4πβ-γ同時測定装置だけが、標準線源不要な測定装置であり、産総研では放射能標準の主要な測定に用いられる。
4πβ-γ同時測定装置はCs-134やEu-154等β線とγ線を放出する核種、あるいはP-32やS-35等β線のみを放出する核種に適用される。β線のみを放出する核種の場合は、β線及びγ線の両方を放出する核種と混合して測定することによりこの方法を適用する。
この装置の原理は以下の通りである。線源を比例計数管の中に置く。β線は比例計数管で測定し、γ線は比例計数管の周囲に配置してあるNaIシンチレータで測定する。 β-γ同時測定と同じ原理でα-γ同時測定を行うことも可能である。4πβ-γ同時測定装置では、液体の放射性物質をフィルム上に滴下乾燥させ、乾燥線源を製作して測定を行う。計数率は電子回路の応答から数1000 counts/secが上限である。


4πβ-γ同時測定装置


標準線源付加圧型電離箱

標準線源付き4πγ加圧型電離箱は、Ga-67などγ線を放出する核種に適用される。この装置は、ガスを封入した円筒内部に電極を置き、高電圧を印加し、入射した放射線により発生した電離電流を測定するものである。放射能を求めるには、4πβ-γ同時計数装置等で値付けされた放射能を用いて求められた校正定数と、測定された電離電流を用いる。
4πγ加圧型電離箱は極めて安定な電離電流出力、5桁(30kBq〜0.3GBq、Co-60換算)程度の広いダイナミックレンジが特徴である。この電離箱をさらに安定にするため、標準線源Ho-166mが開発された。現在では、この標準線源からの電離電流と、測定対象からの電離電流の比を計算し、既知の校正定数から放射能が算出されている。
また、電流モードで測定しておりエネルギー測定ができないため、γ線放出核種の放射性純物質のみが測定対象となる

加圧型電離箱


高純度Ge半導体検出器

Co-60などγ線放出核種に適用される測定装置である。
高純度Ge半導体検出器は、p-n型のダイオード構造をもつGe半導体を用いて放射線を測定する装置である11)。ダイオード構造に逆バイアスをかけることによって得られる空乏層に、放射線を入射すると、電子正孔対が生成される。これらの電子や正孔は、電場により、電極へ収集される。収集された電荷は、プリアンプで電圧出力に変換される。この電圧出力が、放射線のエネルギーに比例することにより、エネルギースペクトルが得られる。プリアンプ出力はアンプを通し、さらにマルチチャンネルアナライザーにより、γ線のスペクトルが得られる。高純度Ge検出器は、常温で保管できること、固体であり密度が高いこと、エネルギー分解能が高いという利点がある。放射能を求めるには、あらかじめ4πβ-γ同時計数装置等で値付けされた放射能で得られた校正定数とスペクトルから得られる光電ピーク面積を用いる。
この装置の特徴は、高いエネルギー分解能を持つことであり(661.7keVで1.5×10 -3程度)、複数の核種を同時に測定できる。γ線を発生させる微量不純物の同定にも用いられる。
Ge detector

液体シンチレーションカウンター
液体シンチレーションカウンタは、α線、β線等荷電粒子を測定する、放射線検出器である。C-14やAm-241等粒子を放出する核種に適用される。測定原理は、荷電粒子の持つ運動エネルギーをシンチレータ中で光(シンチレーション光)に変換し、この光を光電子増倍管等により、電荷パルスとして取り出すものである。収集された電荷は、プリアンプで電圧出力に変換される。この電圧出力が、放射線のエネルギーに比例することにより、エネルギースペクトルが得られる。プリアンプ出力はアンプを通し、さらにマルチチャンネルアナライザーにより、α線またはβ線のスペクトルが得られる。シンチレーション光のカウント数で放射能が算出される。4πβ-γ同時計数装置等で値付けされた放射能で液体シンチレーションカウンタの校正が行われる。C-14やH-3等の低エネルギーβ線に対しても高い計数効率を持つ測定方法である。
産総研では通常のシンチレーションカウンタに加え、TDCR(Triple-Double-Coincidence-Ratio)方式の3本の光電子増倍管を使用する放射能の絶対値を測定する装置を製作し、性能試験を行っている。  
LSC


荷電粒子測定装置

荷電粒子測定装置は、Am-241等粒子放出核種やハンドフットクロスモニタ、β線サーベイメータの校正用面線源(Cl-36等)の測定に適用される。マルチワイヤー2πガスフロー比例計数管とSi表面障壁型検出器が用いられる。
マルチワイヤー2πガスフロー比例計数管は、中に面線源を封入し、複数本のワイヤーで数十cm四方の広い範囲から放出される荷電粒子を測定するものである。測定原理は以下のようである。面線源から放出された荷電粒子が、比例計数管内のガスを電離させ、電離して発生した電子を高電圧を印加したワイヤーで収集し電圧信号を得る。プリアンプ、アンプで増幅し、シングルチャンネルアナライザー、スケーラーでパルスカウンティングを行う。
Si表面障壁型検出器は、半導体ダイオード検出器の一種であり、Siのn型結晶表面に金を蒸着させた構造か、Siのp型結晶にAlを蒸着させた構造をしている。この検出器からの出力は、プリアンプ、アンプで増幅され、マルチチャンネルアナライザーにより、スペクトルが得れる。室温で動作し、エネルギー分解能が高いので(5.49 MeVで2x10 -3程度)、α粒子や軽イオン粒子に適した検出器である。また、エネルギー校正を異なる荷電粒子で行っても、1%程度の差しかあらわれない。しかし、金の蒸着面の場合、光が透過するので、遮光する必要がある。

charged particle detector