マンモグラフィX線の線量標準
−乳がん検診の一層の安心・安全を目指して−
 

マンモグラフィX線の線質に適合した線量標準を確立
乳がん検診におけるX線照射線量の正確な評価が可能に
計量トレーサビリティの確保により診断装置の精度向上に貢献

 近年、乳がんの早期発見、早期治療の重要性が指摘され、乳がん検診でX線を用いた乳房撮影(以下「マンモグラフィ」という)の受診者数は、2000年度から増加し、2005年度には視触診のみの受診者数を抜き、2006年度には約163万人に達しています(厚生労働省統計表データベースより)。このような受診者数の増加に伴い、マンモグラフィ装置の精度管理も重要となっています。
 マンモグラフィ検診では乳房組織を撮影するため、モリブデンなどの金属から放出される低エネルギーのX線が用いられます。そのため、マンモグラフィ検診におけるX線照射線量を精度良く評価するには、X線の線質に合わせた線量標準が重要です。そこで、マンモグラフィX線と同じ線質での線量標準を開発しました。

図1にX線の線量標準の値を測定する国家標準器の写真(左)と概略図(右)を示します。国家標準器は平行平板タイプの自由空気電離箱と呼ばれるものです。概略図中のcollecting volumeと矢印で示された領域に生成された電荷を測定し、その値を補正することによって、線量の値を評価しています。


図1 マンモグラフィX線の線量を測定する国家標準器

図2はX線照射装置の写真です。写真の左手前の遮蔽容器内に国家標準器を設置しています。照射装置の左側は、軟X線照射装置と呼ばれるもので、放射線防護などの計測器を校正するときに用います。マンモグラフィと同じ線質のX線は、右側のマンモグラフィ用X線照射装置によって発生しています。このマンモグラフィ用X線照射装置内は、図3のように、3つのX線管球が収められています。この3つのX線管球の陽極には、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)の金属が取り付けられ、その金属からX線が発生します。発生したX線を適切なフィルターを用いることによって、マンモグラフィと同じX線を得ることができます。


図2 X線の照射装置


図3 マンモグラフィ照射装置の内部

表1に現在供給している線質を示しています。2009年には、Mo/Moだけでしたが、2014年からはほぼすべてのマンモグラフィ診断装置に対応しています。校正の不確かさは0.8%です。


表1 供給しているX線の線質
X管球の陽極材質フィルター
モリブデン(Mo)Mo、Rh
ロジウム(Rh)Rh
タングステン(W)Rh、Ag(銀)、Al(アルミニウム)

参考文献
[1] プレスリリース 2009年3月5日 「マンモグラフィ線量標準の確立と線量計校正サービスの開始」
[2] 田中隆宏、AIST Today, 9 (5) 13 (2009).