1: 「不確かさ」ってなに?

 何かを測定しているとき、一つ一つの測定器の読み値(観測値)が少しずつ異なっていることがあります。観測値が同じ値にならず、ばらついているわけです。観測値にいろいろな補正をしたり、平均値をとるなどのデータ処理をして、一つの数字にまとめます。測定結果としては測定値という数字を報告します。

 ところで、測定値を見ても、一つの数字になっていますから、そのもとになった観測値がどの程度ばらついていたか分かりません。測定の結果を報告するときに、測定値という数値と一緒に、ばらつきの大きさを報告すれば、それが分かります。それが分かれば、そのばらつきの範囲の中に、測定される量の本当の値があるだろうと思えるわけです。

 ばらつきが小さいときには精密であるといい、測定値は精密な測定の結果であることが推定できます。一方、ばらつきが大きいときには、測定値は精密な測定の結果ではなく、その信頼性は低くなります。もともと、測定はその結果を利用して、何らかの判断をしたり、アクションを取るためのものです。信頼性の高い測定値は安心して使えますが、信頼性の低い測定値の場合には、例えば、関連の情報を集めたり、他の測定値を集めて総合的な判断に持ち込むとか、その測定値は注意しながら使うことになります。

 ばらつきの大きさも数値として表現することができれば、定量的な判定がより容易になります。直観的には、測定値のばらつきの大きさを数値で表したものが「不確かさ」です。

 ここで、「測定値のばらつきの大きさ」といったのですが、ここで「ばらつき」は英語の“dispersion”を直訳したものです。ここでいうばらつきには、データが変化するという様な目に見えるばらつきだけでなく、我々の知識のあいまいさによって不確かになっている部分があります。例えば、使用している物理的な定数のあいまいさや補正値のあいまいさなども含むことになります。ここは表現が難しいところですが、もとになるデータの変化やもとになる知識のあいまいさによって、測定値があいまいさを持っており、そのあいまいさを数値で表した「拡がり」が不確かさである、ということができます。

 測定値と共に、その値の不確かさを併せて報告したとき、それを「測定の結果の完全な記述」と呼んでいます。