エネルギー・環境領域
Department of Energy and Environment Renewable Energy Advanced Research Center

太陽光システム研究チーム

太陽光発電の長期安定電源化技術

研究背景

2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画における再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取組は、S+3Eを大前提に、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、地域との共生と国民負担の抑制を図りながら最大限の導入、長期安定電源化に取り組む、とされています。
太陽光発電がエネルギーインフラとして根付き主力電源となるためには、太陽光発電の長期安定電源化を実現することが重要な課題となっています。

研究目標

当チームでは、太陽光発電の主力電源化を実現するために、太陽光発電設備の安全性に関する設計技術、運用技術に関する研究開発や基盤整備を行っております。
また、太陽光発電の大量導入時におけるスムースな電力系統への接続と持続的な発電事業を実現するための発電予測・制御の高度化技術開発を進めています。
さらに、将来に向けた導入拡大のための利用領域拡大に関するシステム技術開発を行っています。

研究内容

太陽光発電を単に有用な発電技術とするだけでなく、エネルギーインフラを構成するために必要な技術的拡充を担う役割が、当チームには求められています。
国内太陽光発電産業の支援とともに、「太陽光発電システムの所有者・利用者の視点」と「エネルギーインフラを形成する太陽光発電システム」という視点から、わが国における太陽光発電システムの持続的な普及拡大に資することを研究の目的としています。

【図1】太陽光システムチームの研究概要

太陽光発電システムの長期信頼性および安全性に関する研究開発

太陽光発電システムは一般に20年以上運用することが期待されていますが、もっとも重要な構成機器である太陽電池モジュールは利用者の目の届かない場所に設置されており、運転中は無音・無可動です。
また、太陽光発電システムの発電電力は周辺環境や時々刻々変動する気象の影響を受けるため、その長い運用期間中における発電性能の低下や安全リスクの増大を把握することが困難な工業製品といえます。
また、日中においては、太陽光発電システムの運転を停止しても太陽電池モジュール自体は直流電圧を発生し続けるため、昼間に太陽光発電システムを搭載した建築物の火災が発生した場合などに、作業者が感電するというリスクも潜在します。

そこで、当チームでは、さまざまな調査・分析を通じて太陽光発電システムの安全性向上のため技術的・制度的対策を検討しています。

【図2】太陽光発電システムの長期信頼性および安全性に関する取り組みの例

太陽光発電システムの持続的な発電事業に関する研究開発

太陽光発電システムは、太陽エネルギーを直接かつ瞬時に電力に変換しそれ自身は蓄電機能を持たない、いわば「お天気まかせ」の発電技術です。
このような既存の発電技術にはない特性をもった太陽光発電システムがわが国の電力系統に無秩序に大量に連系された場合、太陽光発電システムの発電電力の変動を電力インフラ全体として吸収できなくなり、電力の安定供給を阻害するリスクをはらんでいます。
一方、このリスクを低減する方策の一つとして電力インフラでの電力貯蔵機能の増強が検討されていますが、これも相応の経費を要するものであり、可能な限り最小限にとどめることが理想です。
当チームでは気象観測・予測技術や機械学習などの理学・工学の両面のアプローチから太陽光発電の出力の把握と予測技術の研究開発を進めています。

また、太陽光発電自ら上げ調整力を創出する研究にも取り組んでいます。

【図3】太陽光発電システムの発電予測高度化に関する研究開発の概要
【図4】太陽光発電システムの上げ調整力に関する研究概要

太陽光発電システムの利用領域の拡大に関する研究開発

太陽光発電の更なる導入拡大が必要ですが、地域共生・裨益する事業、またネイチャーポジティブを実現する導入形態を目指す必要があります。
導入の企画から廃棄・リサイクルまでの太陽光発電の生涯を一貫してマネジメントする持続的価値連鎖循環型太陽光発電システムの技術をベースとした、利用領域の拡大が必要となる。

今後は建物設置型への回帰、農業との融合、ネイチャーポジティブへの貢献、モビリティへの適用など、システム多様性への対応や土地利用政策との連携が必要なると考えています。

【図5】太陽光発電システムの利用領域の拡大に関する研究開発の概要

福島県企業との連携による被災地復興と太陽光発電の主力電源化

「太陽光発電のO&M等の技術開発・人材育成拠点の形成」として、太陽光発電の運用と保守(O&M)等のシステム化とそれを扱う人材育成を行うことにより、福島県における太陽光発電の長期安定電源化の実現に資する福島県内企業の創出を目的として、FREAに所有している実証試験用太陽光発電設備に、O&M等の技術開発に必要な機器等を設置して高度化するとともに、福島県内企業が事業期間にわたって保守のシステム化技術開発と運用の効果検証を共同実施する拠点形成を行い、太陽光発電のO&M等の技術開発および人材育成の事業を行っています。

<関連情報>「太陽光発電のO&M等の技術開発・人材育成拠点の形成」事業(2021~2026年度)

【図6】太陽光発電(PV)のO&M等の技術開発・人材育成拠点の形成の概要

主な研究成果

太陽光発電の安全性に関する基盤整備

太陽光発電の安全性に関するする基盤整備として、これまでに太陽光発電の直流電気安全、火災リスクおよび対策をまとめた技術情報、現地での保守点検手順、ヒヤリハット・インシデント情報、構造設計における積雪荷重に関する設計支援ツール、などについて公開しています。

詳細は、「太陽光発電の安全性に関する情報等」を参考にしてください。

<関連情報>「太陽光発電の直流電気安全のための手引きと技術情報(第2版)」他

また、太陽光発電設備の安全確保を目的として、感電リスクを把握するための実証実験を実施し、対地静電容量による過渡的な感電電流を求め、許容できる並列数の設計目安などを含んだ、各種太陽光発電設備の設計・施工ガイドラインの策定を行っております。

詳細は、NEDO HPを参考にしてください。

<関連情報>NEDO「太陽光発電システムの信頼性・安全性向上に関するガイドライン」(外部サイトへのリンク)

太陽光発電の発電予測技術の開発

気象予報技術をもとに太陽光発電の予測の大外れの低減の研究開発を実施しています。
図7は東京電力エリアを対象とした時のアンサンブル予報(メソアンサンブル)というシステムで同時に複数の予報を行ったときの気象予報の一例です。
予測のばらつき(不確実性)を区間幅で表現できるという特長を持つアンサンブル予測を活用し、予測の大外れの要因分析などの検討を実施しています。

また、図8はメソアンサンブル予報を入力とした機械学習モデルにより、予測の大外れの低減を行った結果です。
平均誤差をある程度保ちながら大外れの誤差を低減する手法の開発を行っています。
この研究によって、太陽光発電システムが大量に連系された電力インフラにおいても既存発送電設備の運用計画の策定・調整、電力の安定供給リスクを低減できる可能性があります。

【図7】メソアンサンブルの誤差発生時の分析例
【図8】機械学習の学習方法の調整による平均誤差と最大誤差の最適化

太陽電池搭載電気自動車の実証実験

カーボンニュートラル社会の実現に向け運輸部門の二酸化炭素排出量の削減が喫緊の課題であり、自動車の電動化が加速しています。
自動車の電動化と太陽電池の搭載は脱炭素化社会の実現に向けて親和性が高く、太陽電池を搭載することによりユーザーの利便性やサービスの向上につながると期待されます。
当チームでは、このような太陽電池搭載電気自動車(PVEV)の社会実装を加速させるための実証実験に取り組んでいます。

図9に示すように商品配送やコミュニティバス等の商用車ユースケースに開発したPVEVを導入し、一日の走行に必要なエネルギー(電力量)に対しどの程度PVからの電力が貢献できるか(PV供給率)等を検証しています。

【図9】実証用に作成したEV(左)とPVEV(右)

<参考動画>PVEVの実証走行実験【YouTube:2分41秒】(外部サイトへのリンク)

【図10】各ユースケースのPV供給率の評価例

主な研究設備

実験用太陽電池アレイ

太陽光発電の各種実験を行うための太陽電池アレイです。
両面モジュールや垂直設置用の架台があります。

【図11】実験用太陽電池アレイ

実証用太陽光発電設備

FREA敷地内に設置の太陽光発電システムは、複数の10kWの分散型PCSに接続(図12右)と、250kWの集中型PCSに接続(図12左)の二系統あります。
実際の発電状態における実験できます。
また、常時監視装置等を設置した実証実験や模擬的な不具合を再現した実験などを行うことも可能です。

【図12】FREA設置の実証用太陽光発電設備
上:全景、下:上の左部拡大

メンバー

役職 氏名  
研究チーム長 大関 崇 OOZEKI Takashi
上級主任研究員 水野 英範 MIZUNO Hidenori
主任研究員 加藤 和彦 KATO Kazuhiko
主任研究員 髙島 工 TAKASHIMA Takumi
主任研究員 大竹 秀明 OHTAKE Hideaki
研究員 高松 尚宏 TAKAMATSU Takahiro
研究員 BUNME Pawita BUNME Pawita
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