エネルギー・環境領域
Renewable Energy Advanced Research Center

太陽光モジュール研究チーム

太陽電池モジュール技術

研究背景

2025年2月、第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました。
2040年度のエネルギー需給の見通しのなかで発電電力量が1.1~1.2兆kWh程度と示されているところ、主力電源として期待される再生可能エネルギーの電源構成は4~5割程度です。
このうち太陽光発電は23~29%程度と最も大きな割合を占めます。再生可能エネルギーの主力電源化には太陽電池の利用拡大が不可欠であり、立地制約を克服するための技術革新を図るとともに、太陽電池の新たな価値を見出すための取組が必要です。
太陽電池は事業用の大規模発電のみならず自家消費や地産地消を行う分散型エネルギー源として、更に災害に対する強靭化の観点からも活用が期待されています。

研究目標

当チームでは国内唯一とも言われている太陽電池製造ラインを活用して各種太陽電池の試作から信頼性評価、さらに屋外試験を通じて、太陽電池の利用拡大に資する以下の研究開発に取り組んでいます。

  • 次世代高効率「シリコンタンデム太陽電池」の実用化研究
  • 太陽電池の設置形態の多様化に向けたモジュール技術の開発
  • 太陽電池の熱管理・利用技術の開発
  • 結晶シリコン太陽電池モジュールの寿命予測技術の開発
【図1】太陽光モジュール研究チームの研究環境と取り組みの概要

研究内容

次世代高効率「シリコンタンデム太陽電池」の実用化研究

自動車を始めとする移動体での太陽電池の利用が進んでいます。太陽電池を搭載した電気自動車が市販されていますが、太陽電池の設置面積が限られるなか、より高い出力を得るためには高いエネルギー変換効率をもつ太陽電池セルが必要とされます。

当チームでは、結晶シリコン太陽電池にペロブスカイト太陽電池を積層したタンデムセルの開発を行っています。
ペロブスカイトとシリコンそれぞれが得意とする波長の光を効率良く利用することにより、個々の特性を凌駕する高いエネルギー変換効率が期待できます。

当チームでは国内初となるDMF(ジメチルホルムアミド)フリーのペロブスカイト溶液と真空クエンチ法を用いてセルを作製し、貧溶媒法と同等の特性が得られることを明らかにしました。
スロットダイコータ塗布とこの技術の組み合わせでシリコン基板サイズ(157mm角)のガラス基板上にペロブスカイト層を作製し、その一部を利用する小面積セルでは高い開放電圧が得られています。
このように当チームで開発したペロブスカイト作製技術は実用サイズ基板においても適応可能な技術です。

さらに当チームでは世界初となるハイパースペクトルイメージングを用いたペロブスカイト層フォトルミネッセンス(PL)評価技術を新たに開発しました。
本手法によれば、基板面内各点でのPLピーク強度・ピーク位置(~バンドギャップ)、ピーク幅の情報を同時に短時間で取得できるため、インライン検査での活用も期待されます。

【図2】スロットダイコータ塗布と真空クエンチ法を用いて作製したペロブスカイト太陽電池セル(ガラス基板上)
【図3】ハイパースペクトルイメージングによるペロブスカイト層のPL評価の模式図

太陽電池の設置形態の多様化に向けたモジュール技術の開発

耐荷重が小さく重量制限のある工場や倉庫の屋根へ太陽電池を設置するためには、モジュールの軽量化が必要です。
現在利用されている多くのモジュールは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(ethylene vinyl acetate, EVA)を封止材として、太陽電池のセルをガラス(受光面側)とバックシート(裏面側)でラミネートしています。
そのため、モジュールの重量の大半はガラスが占めています。また、ミリ単位の厚さのガラスが用いられているため、モジュールは硬くて曲がり難いという性質があります。

当チームでは、ガラスをフィルムへ置き換えた軽量モジュールの開発を行っています。
このガラスを使用しないフィルム型モジュールは、「曲がる」という特徴も兼ね備えています。

【図4】ガラス型結晶シリコン太陽電池モジュールの基本構造
【図5】フィルム型結晶シリコン太陽電池モジュール(太陽光モジュール研究チーム製)

従来のガラス型モジュールの良い点として、表面のガラスが雹や飛び石による衝撃や積雪による荷重から太陽電池のセルを保護していることが挙げられます。
ところがガラスからフィルムへ置き換えることにより、衝撃や荷重から太陽電池のセルをいかに保護するかが課題となります。
また、ガラスには表面から水分などの侵入を防ぐという働きがありますが、一方、EVAから発生し電極腐食の原因となる酢酸が放出され難いという課題があります。
それに対してフィルムは水分や酢酸ともに透過し易いという特徴があります。

当チームでは、衝撃や加重、温度や湿度、紫外線などの環境ストレスに対して耐性をもつフィルム型結晶シリコン太陽電池モジュールの開発を進めています。
フィルム型モジュールのストレス加速試験において、ある試験条件下ではガラス型モジュールよりも高温高湿に対するストレス耐性が高いことを見出しました。

このフィルム型結晶シリコン太陽電池モジュールは、長年市場での利用実績がある結晶シリコン太陽電池を用いていること、ガラスからフィルムへ材料を置き換えるだけでこれまでの製造設備が利用できることから、太陽電池の利用拡大に向けたモジュールとして期待されています。

【図6】ガラス型とフィルム型の結晶シリコン太陽電池モジュールの高温高湿試験後(4000時間)の外観写真とエレクトロルミネッセンス(EL)像
【図7】各種結晶シリコン太陽電池モジュールの高温高湿試験における特性変化

太陽電池の熱管理・利用技術の開発

半導体である太陽電池は熱との関りが非常に強く、当チームでは太陽電池に熱を利用する研究に取り組んでいます。その一つが「熱回収型太陽電池」です。
半導体材料へ光を照射したとき熱となって失われていたエネルギーを利用し、より高いエネルギー変換効率が得られる熱回収型太陽電池を理論的に提案しました。

この熱回収型太陽電池では、単接合シリコンの理論限界効率(約29%)を超えるエネルギー変換効率を得ることが可能です。
この理論に基づき太陽光-熱電ハイブリッド素子の一般論を構築しました。
そしてモジュールを試作し、その温度特性の検証を進めています。
理論的検討と実証実験を繰り返しながら、この新コンセプト太陽電池の実現を目指しています。

【図8】熱回収型太陽電池の理論に基づき設計・試作した太陽光-熱電ハイブリッド素子

このようなハイブリッド素子は、太陽電池の周辺の熱環境を有効に活用して素子全体の総発電量の向上につなげることができます。
当チームでは『熱管理・熱利用に資する熱収支モデルの構築』を目指し、FREA実証フィールドにおいて太陽電池の発電量と熱環境(日射、輻射、風況、温度)の相関データの取得を開始しました。
このモデルは太陽電池の寿命予測にも活用でき、生涯発電量の向上にもつながる技術として期待されています。

【図9】FREA実証フィールドに構築したモニタリングシステム(2023年度から測定開始)

結晶シリコン太陽電池モジュールの寿命予測技術の開発

当チームでは、2020年度からの4年間、京セラ株式会社との結晶シリコン太陽電池の生涯発電量の向上に関する共同研究を通じて太陽電池の導入拡大を目指してきました。
この共同研究では、高効率結晶シリコン太陽電池の研究、太陽電池の劣化挙動の解明と長寿命化、寿命予測技術の研究開発などを行ってきました。
当チームのモジュールの試験/解析技術と京セラ株式会社の長期信頼性設計技術を融合し、太陽電池モジュールの寿命予測技術体系の確立に至りました。

これによって、太陽電池モジュールの長寿命設計が設置地域や設置形態を考慮した形で対応可能となりました。
長寿命で生涯発電量が多い太陽電池モジュールの普及は、カーボンニュートラル社会における再生可能エネルギーの主力電源化と将来のモジュール廃棄量の低減に貢献します。

<詳細情報>
【共同研究】結晶シリコン太陽電池モジュールの発電量向上技術の開発(2020~2023年度)

【図10】 太陽電池モジュール(パネル)の寿命予測

主な研究成果

次世代高効率「シリコンタンデム太陽電池」の実用化研究

スロットダイコート塗布によりシリコン基板サイズのガラス基板(157mm角)にペロブスカイトを成膜し、真空クエンチ法により結晶化する技術を開発しました。

太陽電池の設置形態の多様化に向けたモジュール技術の開発

フィルム型結晶シリコン太陽電池のモジュール(軽量・フレキシブル)の高温高湿ストレス加速試験を実施し、湿熱耐性を明らかにしました。

太陽電池の熱管理・利用技術の開発

熱回収型太陽電池の理論に基づき設計、試作した太陽光-熱電ハイブリッド素子の開放電圧と最大出力が温度とともに上昇し、正の温度特性を示すことを明らかにしました。

結晶シリコン太陽電池モジュールの寿命予測技術の開発

京セラ株式会社との共同研究において結晶シリコン太陽電池の寿命評価技術を開発し、寿命予測技術を体系化しました。

主な研究設備

太陽電池製造ライン

結晶シリコン太陽電池のセル、モジュールの作製から信頼性評価までを行うことができる国内唯一の製造ラインを活用して、上述の太陽電池の様々な研究を行っています。

【図11】太陽電池製造ライン

テクスチャー形成装置

シリコン基板の表面にテクスチャーと呼ばれるピラミッド型の凹凸を形成します。

【図12】テクスチャー形成装置

スピンエッチング装置

基板を回転させながら片面をエッチングする装置です。保護膜なしで片面のみをエッチングできます。

【図13】スピンエッチング装置

熱拡散装置

高温の炉内でリンやボロンを基板へ拡散させてp/n接合を形成します。一度に複数枚の基板を処理できます。

【図14】熱拡散装置

イオン注入装置

リンやホウ素のイオンを加速して基板に打ち込むための装置です。精密な拡散の制御が可能です。

【図15】イオン注入装置製

電極焼成炉

電極に用いる銀ペーストと拡散層とのコンタクトやアルミBSF層を形成するための装置です。

【図16】電極焼成炉

ペロブスカイト太陽電池作製用グローブボックス

小サイズのペロブスカイト太陽電池の作製に使用しています。

【図17】ペロブスカイト太陽電池作製用グローブボックス

大型真空ラミネーター

フィルム、封止材、バックシートなどの部材と太陽電池セルをラミネート加工し、軽量・フレキシブルモジュールを作製します。

【図18】大型真空ラミネーター

太陽光パネル用ソーラーシミュレータ

各種太陽電池モジュールの電流-電圧特性を測定します。

【図19】太陽光パネル用ソーラーシミュレータ

荷重試験装置

屋外へ設置したときと同じ風荷重を太陽光パネルへ印加し、パネルの強度特性を調べます。

【図20】荷重試験装置

メンバー

役職 氏名  
研究チーム長 棚橋 克人 TANAHASHI Katsuto
主任研究員 上出 健仁 KAMIDE Kenji
主任研究員 望月 敏光 MOCHIZUKI Toshimitsu
研究員 髙橋 冴実 TAKAHASHI Saemi
研究チーム付 水野 英範 MIZUNO Hidenori
研究チーム付 立花 福久 TACHIBANA Tomihisa

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