エネルギー・環境領域
Renewable Energy Advanced Research Center

ペロブスカイト太陽電池研究チーム

ペロブスカイト太陽電池に関する技術開発および基礎研究

研究背景

2050年カーボンニュートラルに向けて太陽光発電の更なる導入拡大は必要不可欠です。
ペロブスカイト太陽電池はこれまでの太陽電池とは大きく異なり、曲げ等に強いことから、薄いフィルム型軽量太陽電池(図1、2)の実現が可能です。
フィルム型軽量ペロブスカイト太陽電池が実用化すれば、これまで「太陽電池が重い」という理由で設置できなかった工場や体育館の屋根、カーポート等、耐荷重の低い場所への太陽電池が導入できるようになります。
また、ペロブスカイト太陽電池の構成材料もこれまでの太陽電池とは異なる為、国内産業による新しいサプライチェーンを構築することが可能です。
当研究チームはペロブスカイト太陽電池の早期実用化を目的とし、これまで蓄積した技術を活用しつつ、産業化に向けた課題を解決する革新的な研究および技術開発を進めます。

<関連情報>産総研マガジン:ペロブスカイト太陽電池とは?(2022/11/24)

<関連情報>ペロブスカイト太陽電池研究チーム紹介ビデオ[YouTube 11分]

<関連情報>新潮社フォーサイト>ポイントアルファ(21)>ブレイクスルーを待つ「ペロブスカイト太陽電池」(外部サイトへのリンク)

【図1】当研究チームで試作したフィルム型ペロブスカイト太陽電池(写真:山本 晃平)
【図2】研究用に作製しているペロブスカイト太陽電池セル

ペロブスカイト太陽電池の構造

ペロブスカイト太陽電池(図3)は光を吸収し電荷を生成させるペロブスカイト層をn型半導体(電子輸送層、正孔ブロック層)とp型半導体(正孔輸送層、電子ブロック層)で挟み込んだ構造で、さらにその外側を集電極で挟んだ構造です。
ペロブスカイトとは結晶の形の名前なので、ペロブスカイト結晶を作る材料は様々です。
太陽電池に使われるペロブスカイト型結晶材料はメチルアミン(MA)、フォルムアミジン(FA)と呼ばれるアミン系有機物と鉛、スズ等の金属、ヨウ素や臭素等のハロゲンから構成されます。

ペロブスカイト太陽電池業界ではn型半導体から順番に材料を積層させ、n型半導体側が光入射面となる太陽電池を順構造(図3)また、光入射側にp型半導体が配置されるものは逆構造と呼んでいます。
光入射面の電極は光を取り込むために透明である必要があり、透明導電材料であるフッ素ドープ酸化スズ(FTO)やインジウムドープ酸化スズ(ITO)等がコートされたガラス基板やフィルム基材を透明導電性基板として使用し、その基板上に材料を積層させてペロブスカイト太陽電池を作ります。

【図3】ペロブスカイト太陽電池の断面図(右側は断面SEM像、左側は各層を説明)

ペロブスカイト太陽電池の発電原理

発電原理(図4)は順構造、逆構造いずれも同じで、半導体の性質を持つペロブスカイト層が光を吸収し、電子(マイナス電荷)と正孔(プラス電荷)を発生させます。
電子はペロブスカイト層から電子輸送層を経由し、透明電極や金属電極等の集電極に移動します。正孔も同じくペロブスカイト層から正孔輸送層を経由し、集電極に移動します。
このようにペロブスカイト層は光吸収から電荷生成を同一材料内で起きる点が特長であり、電子と正孔は外部回路を通じで仕事(発電)をすることができます。

【図4】ペロブスカイト太陽電池の構造と発電原理

研究目標

ペロブスカイト太陽電池の実用化には「耐久性の向上」、「量産化可能なプロセス開発」、「高効率化技術」、「モジュール化技術」、「市場の開拓」、「国際ルール」が必要です。
当研究チームは前述の課題解決を、企業、大学等と連携して進めます。
また、各チームメンバーの得意とする分野を活かし「デバイス作製」、「材料開発」、「劣化分析」、「デバイス評価」、「国際標準化」について取組みます。
グループの強みとなる技術を醸成、その技術は適切に企業へ展開することでペロブスカイト太陽電池の早期実用化に貢献し再生可能エネルギーの導入拡大に貢献することを目標としています。

研究内容と主な成果

ペロブスカイト太陽電池の高耐久化に向けた材料開発

ペロブスカイト太陽電池の実用化には高耐久化技術、量産化技術、評価技術の開発が必要です。
耐久性の課題は材料特性に起因するものであり、屋外設置した際に加わる環境要因すなわち湿度、温度、光、酸素による劣化から太陽電池を守り、製品寿命を延ばすための技術課題です。
特にペロブスカイト結晶はイオン結晶であるため湿度に弱く、太陽電池全体を封止するだけではなく、太陽電池内部でも水の侵入を防ぐ技術が必要です。
また、ペロブスカイト太陽電池を構成する有機正孔輸送層の劣化も太陽電池性能低下の原因になります。
私たちはペロブスカイト太陽電池の高耐久化に資する材料の研究開発を行っています。
この研究は省エネルギー研究部門と協力して進めています。

主な研究成果

私たちはこれまで耐久性を向上させる正孔輸送材料の開発や添加剤の開発を行ってきました。
詳しくは下記の論文をお読みください。

<関連論文>

  • 1.高耐久化に資する正孔輸送材添加剤の開発(図5、6):N. Nishimura, et.al., Thermally stable phenylethylammonium-based perovskite passivation: spontaneous passivation with phenylethylammonium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide during deposition of PTAA for enhancing photovoltaic performance of perovskite solar cells, J. Mater. Chem. A, 2024, 12, 15631-15640, DOI: 10.1039/D4TA02036G
  • 2.高耐久正孔輸送材の開発:N. Onozawa-Komatsuzaki, et.al., Short-Step Synthesized Dopant-Free Spiro-Type Hole-Transporting Materials for Efficient and Stable Perovskite Solar Cells, ACS Appl. Energy Mater. 2024, 7, 8, 3082–3090, DOI: 10.1021/acsaem.3c02972
  • 3.高耐久に資するペロブスカイト添加剤の開発:S. Mathew, et.al., Multifunctional Phosphonic Acid-Based Passivation: A Pathway to Enhance Efficiency and High-Temperature Durability in FAPbI3 Perovskite Solar Cells, ACS Appl. Energy Mater. 2025, 8, 8, 4962–4972, DOI: 10.1021/acsaem.4c02660
  • 4.無機正孔輸送材料の開発:A. Kogo, et.al., Effect of Humidity on Crystal Growth of CuSCN for Perovskite Solar Cell Applications, ChemPhysChem 2023, 24, e202200832, DOI: 10.1002/cphc.202200832
  • 5.逆型太陽電池用の無機電子輸送材の開発:A. Kogo, et.al., Inverted-Structured Perovskite Solar Cells with a TiO2 Electron-Collector Layer Formed at Room Temperature from Titanium Halide Solutions, ACS Appl. Energy Mater. 2024, 7, 18, 7769–7774, 10.1021/acsaem.4c01226
  • 6.dynamics of 2D-perovskites under light irradiation and at high temperature, Sustainable Energy Fuels, 2025, 9, 247-255, DOI: 10.1039/D4SE01227E

【図5】PEA-TFSIと効果のイメージ
【図6】PEA-TFSI添加した太陽電池の85℃耐熱性試験における効率の推移(左)と劣化前後の電流電圧特性(右)

プロセスインフォマティックスによるペロブスカイト太陽電池の高性能化技術開発

ペロブスカイト結晶は有機アンモニウム、鉛、ヨウ素や臭素等のハロゲンと呼ばれる原料から作られますが、原料の種類や配合量(組成比)の違いにより、ペロブスカイト結晶の物性が変化するため、効率と耐久性に大きな影響を与えます。
他方、ペロブスカイト結晶を構成する原料の組合せは極めて多く、さらにペロブスカイト層で生成した電子を取出す電子輸送層や正孔を取出す正孔輸送層とのエネルギーバンドの整合性を取る必要があり、その組合せも含めると膨大な条件検討が必要になります。
これまでは研究者の経験や直感で最適な条件を探していましたが時間と労力を費やします。
そこで私たちは、実験プロセスを総合的に解析、最適化していくプロセスインフォマティクス(PI)技術を活用し、ペロブスカイト太陽電池の高耐久化、高効率化を進めています。
より効果的にPI技術を適用するために、実験的にどのようなデータを抽出し、データ科学的にどのような解析をしていけばよいか指針を示せるよう、研究しています。
また、劣化機構の解明、高耐久化を実現するための新規材料の提案を行うために分子同士の反応や相互作用について第一原理計算による解析を行います。
本プロジェクトをモデルとしたケーススタディーによるPI技術の普及も進めています。これらの研究は産総研内のマテリアルDX研究センターおよび電池技術研究部門と協力して進めています。

主な研究成果

私たちはこれまで研究者の知見により最適化されたペロブスカイト太陽電池の変換効率を超える変換効率をPI技術により達成しました。
詳しくは下記の論文をお読みください。

<関連論文>AIを用いたペロブスカイト太陽電池の最適化手法の開発(図7):N. Eguchi, T. Fukazawa, et.al., Performance optimization of perovskite solar cells with an automated spin coating system and artificial intelligence technologies, EES Sol., 2025, 1, 320-330, DOI: 10.1039/D5EL00007F

【図7】ベイズ最適化の試行回数と変換効率の関係

セル自動作製システムの開発

ペロブスカイト太陽電池は太陽電池特性の再現性が低いという課題があります。
ペロブスカイトの結晶化が数秒程度と短時間で起こるため、ペロブスカイト層成膜時の水蒸気や僅かな成膜作業の違いで太陽電池特性が大きく変化します。
その結果、太陽電池性能のバラツキが大きくなり、材料‧プロセス技術を評価する際に時間がかかります。
他方、新しい技術を比較し、正しく評価するためには太陽電池特性を短時間で再現良く評価できる技術と手法が必要になります。
私たちはセル自動作製システムを開発し、高い再現性で新規技術の評価を行う環境を整えました。
具体的には太陽電池を作製する透明電極基板の洗浄に始まり、電子輸送層、ペロブスカイト層および正孔輸送層の塗布‧成膜、裏面電極の蒸着を自動化させるシステムを構築しました。
これらのシステムを活用することで、再現性の高い太陽電池評価が可能になり、企業の技術開発を直接サポート、早期社会実装に貢献します。

主な研究成果

私たちはこれまで研究が手作業により作製していたペロブスカイト太陽電池を自動で作製するシステムを構築し太陽電池の作製数をこれまでの10倍以上とすることに成功しました。
この成果は2024年10月にプレスリリースされ多くの報道で取り上げられたことで、様々な機関からの反響がありました。
詳しくはプレスリリース記事をお読みください。

<関連情報>産総研マガジン:世界初となるペロブスカイト太陽電池自動作製システムを開発(2024/10/02)(図8、9)

<関連情報>国立国会図書リサーチ「世界初のペロブスカイト太陽電池自動作製システムの開発, クリーンエネルギー, 山本晃平 他, 2025, 5, 48-55」(外部サイト)

【図8】ペロブスカイト太陽電池自動作製システム
【図9】稼働中のペロブスカイト太陽電池自動作製システム

ペロブスカイト太陽電池の量産化に向けた成膜技術および加工技術開発

量産化に向けたペロブスカイトの成膜技術も低コスト化に向けて重要です。
これまでのペロブスカイト太陽電池の論文報告の多くはスピンコート法と呼ばれる枚葉式の成膜技術を使ったもので、ペロブスカイト原料溶液をスピンコート中に貧溶媒を滴下する処理(アンチソルベント処理)を行うことで緻密で平滑なペロブスカイト結晶層を成膜しています。
しかし、量産時には大面積で連続成膜する為、アンチソルベント法をそのまま使うことが難しく、連続成膜手法においてもピンホールが無く、緻密で平滑なペロブスカイト層を成膜させる技術開発が必要です。
さらに、量産する際には大面積のペロブスカイト太陽電池を直列や並列に接合させるモジュール化が必要です(図10)。
しかし、モジュール加工時に太陽電池性能が低下することがあり、性能低下を起こさない加工方法の開発も進めています。
この研究は当研究センタータンデム太陽電池研究チームおよび製造基盤技術研究部門と協力して進めています。

主な研究成果

私たちは量産にも適用可能な独自の連続成膜手法を開発し、従来手法である枚葉式で作製したペロブスカイト太陽電池と同等の変換効率を得ることに成功しました。
また私たちが新規開発したペロブスカイト太陽電池の加工技術を使い、セル面積1cm2以上のペロブスカイト太陽電池で20%以上の変換効率を達成しています。

【図10】ペロブスカイト太陽電池のモジュール構造

ペロブスカイト太陽電池の劣化メカニズムの解明

ペロブスカイト太陽電池の耐久性を向上させるには、太陽電池が劣化する場所と原因を追究し、劣化原因を排除する必要があります。
例えば熱や光、湿度の影響でペロブスカイト太陽電池を構成するどの部材がどのように劣化するのか解明し、劣化に強い材料を開発する必要があります。
私たちは実験室で85℃の連続加熱や疑似太陽光の連続光照射、85℃で湿度85%の連続高温高湿試験などを行い、太陽電池性能が低下する原因究明を進めています。
さらに屋外に太陽電池を設置し、実際の屋外環境による劣化と実験室で行う加速劣化試験との整合性についても調べています(図11)。
この研究は当研究センター太陽光評価‧標準研究チームおよび化学プロセス研究部門と協力して進めています。

主な研究成果

私たちは加熱、加湿、光照射の影響を調べ、劣化前後で太陽電池のどの材料が劣化するのか追跡することに成功しました。
しかしながら、これまでわかったことは劣化メカニズム全体のごく一部に過ぎず、現在も解明を進めています。
詳しくは下記の論文をお読みください。

<関連情報>N. Nishimura, R. K. Behera, H. Matsuzaki, et.al., Differentiation between bulk and interfacial properties: analysis of time-dependent carrier injection in perovskite solar cells, J. Mater. Chem. C, 2025, 13, 8734-8744, DOI: 10.1039/D5TC00534E

【図11】研究用小型ペロブスカイト太陽電池を用いた屋外暴露試験(屋外耐久性試験)

主な研究設備

研究設備 説明
ペロブスカイト太陽電池自動作製システム 太陽電池を自動で作製します
波長パルス時間可変レーザースクライバー太 太陽電池モジュール加工の条件出しができます
ブレードコーター 量産可能な連続成膜の条件出しができます
スピンコーター 枚葉式で材料成膜ができます
真空加熱蒸着装置 金属や材料の真空加熱蒸着ができます
ソーラーシミュレーター 疑似太陽光を照射し変換効率を測定します
外部量子収率スペクトロメーター 太陽電池に照射した光子数に対して発生した電子数の割合を照射波長ごとに測定できます
大型光照射試験装置 1200mm角の太陽電池モジュールに長時間疑似太陽光を照射する光劣化試験ができます
大型レーザー光誘起電流測定装置(LBIC) 1200mm角の太陽電池モジュール内の発電量マッピングができます
加熱+加湿+疑似太陽光照射複合試験装置 太陽電池の加速劣化試験ができます
走査型電子顕微鏡(STEM付き) 太陽電池の形態観察ができます
原子間力顕微鏡 材料の形態観察や静電相互作用測定ができます
X線回折装置(加熱ステージ、GIWAX付き) ペロブスカイト結晶等の状態観察ができます
GD-OES 材料を構成する元素の深さ分布がわかります
イオン化ポテンシャル測定装置 有機材料のHOMOレベルや価電子帯準位が測定できます
ドライルーム 湿度1% 以下の低湿度環境で太陽電池を作製できます

メンバー

役職 氏名  
研究チーム長 村上 拓郎 MURAKAMI Takurou
主任研究員 小野澤 伸子 ONOZAWA Nobuko
主任研究員 古郷 敦史 KOGO Atsushi
主任研究員 西村 直之 NISHIMURA Naoyuki
主任研究員 神田 広之 KANDA Hiroyuki
主任研究員 山本 晃平 YAMAMOTO Kohei
研究員 江口 直人 EGUCHI Naoto
研究センター付 近松 真之 CHIKAMATSU Masayuki
研究チーム付 吉田 正裕 YOSHITA Masahiro
研究チーム付 太野垣 健 TAYAGAKI Takeshi

▲ ページトップへ