エネルギー・環境領域
Department of Energy and Environment Renewable Energy Advanced Research Center

地熱研究チーム

地熱の適正利用

研究背景

火山国である我が国には膨大な地熱エネルギーが存在しています。
地熱エネルギーは気象条件等に依存せず安定しているため、再生可能エネルギーの中ではベースロードを賄う役割が期待されています。

研究目標

当チームでは「地熱の適正利用」をキーワードに、地熱エネルギーを地下や社会の状態に合わせて適正な規模および形態で持続的に利用するための研究開発を実施しています。
短期的には、温泉と共生した地熱発電のためのモニタリング機器・解析手法の開発や貯留層変動の高度モニタリング等により、持続的な発電と発電量の増大に直接的に寄与すること目指しています。
また、長期的には、深部にある高温・高圧の超臨界地熱資源を利用した革新的発電方法の開発や、地熱エネルギーの社会実装手法の導出等により、ベースロード電源として地熱エネルギーを大規模に利用可能にします。

【図1】地熱研究開発の必要性

研究内容

超臨界地熱発電の実現に向けた研究開発

沈み込み帯に起源を有する超高温・高圧の超臨界地熱流体を発電に利用することにより、国内の地熱発電総容量を飛躍的に増大させる可能性があります。
当チームはこれまでにNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの委託研究を通じ、有望地域において超臨界地熱システムの詳細なモデル化・資源量評価を実施するとともに、調査井の仕様・工程等を提示しました。
現在、国内複数地域の既存調査に対する追加検討およびそれに基づく再評価等を実施し、近い将来の試験掘削フェーズへのスムーズな移行に資する研究開発を進めています。

【図2】超臨界地熱システムの概念

超臨界地熱資源量の評価に関する研究

開発有望地域における地表調査や文献調査、数値計算等を通じて、開発可能な超臨界地熱資源量の評価およびその推定精度の向上のための研究を実施しています。
このため、地震波や電磁波を利用する物理探査技術の高度化、室内実験による岩石物性測定・力学的挙動の理解、熱水流動等シミュレータの開発などを進めています。

超臨界地熱システムの構造解明と開発有望地域抽出法の開発

これまでの調査により「超臨界地熱貯留層」の存在可能性は高いと判断されていますが、その起源となるマグマおよびマグマ性流体の地下分布や移動経路は十分に可視化されていません。
本研究は、超臨界地熱システム全体を比抵抗構造探査により可視化し、システムの概念を実データによって裏付けるとともに、超臨界地熱貯留層の存在条件を特定することを目標としています。
また、その結果に基づき、数十〜数百kmの領域内で開発有望地域を抽出する方法の開発を目指しています。

【図3】電磁探査により推定された仙岩地域の3次元比抵抗構造(Yamaya et al., 2022)

地熱ポテンシャルの高度評価に関する研究開発

研究DX加速・展開支援事業の一環として、産総研等が過去に調査した地熱関連データの収集・整理、データベース化を実施し、複数項目のデータからAI的手法により試掘有望地を抽出する手法を開発しました(図4)。
現在、さらに高分解能の開発有望度を予測可能なAIモデルの開発に取り組みます。
これにより、地熱開発に伴う不確定性低減および開発リスクの低減、ポテンシャル評価の高精度化を目指します。

【図4】従来および新しい地熱資源評価手法の概念

主な研究成果

超臨界地熱発電の資源量評価

岩手県の葛根田地域では、比抵抗構造探査(MT法探査)、微小地震、地震波の反射面が等の調査結果から、地熱系概念モデルを作成し、地表下約3kmに超臨界地熱貯留層が形成されていると推定しました。
この超臨界地熱貯留層を発電に利用するシミュレーションを行った結果、100MWの発電が30年以上可能な開発パターンがあることがわかりました。

【図5】葛根田地域の超臨界地熱システム概念モデル(NEDO, 2024)

微小地震による地熱貯留層の高度モニタリング

地熱フィールドで取得した微小地震の高度解析を進め、精度の高い微小地震発生位置の推定を可能としました。
また、震源位置に加え、地震波に含まれる散乱波や反射波および地面の定常的な揺れ(常時微動)の性質変化等の解析から、地下での水の流れや、貯留層構造の可視化を実現しました。

【図6】(左)地熱地域の微小地震分布の概念、(右)常時微動の揺れ方の変化と地下での水の流れの関係性(Okamoto et al., 2021)

人工地熱システムシミュレータの開発

岩石力学・貯留層工学に関する室内実験等を通じてEGS(Enhanced Geothermal Systems)型地熱貯留層造成・生産シミュレータを開発しました。

AI-IoT温泉モニタリングシステムの開発

地熱発電と温泉との関連を科学的に説明可能にするために、温泉の泉質(温度、流量、電気伝導度等)を自動遠隔モニタリングできるシステムを開発するとともに、取得したデータのAIによる解析手法を導出しました。

【図7】開発したIoT温泉モニタリング装置

被災地企業の技術シーズ支援

被災地企業の技術シーズ支援を行い、坑内計測機器、地熱貯留層シミュレータ、温泉発電装置、温泉水利用水素製造システム等について実用化へ向けた機能向上を実現してきました。

主な研究設備

亀裂せん断滑り実験装置

高温・高圧の地熱貯留層内で発生する力学現象を模擬可能な装置です。

亀裂せん断滑り実験装置

超高温坑内模擬装置

350℃、600気圧の坑内環境を模擬可能な装置です。
機器、素材の開発に使用します。

超高温坑内模擬装置

メンバー

役職 氏名  
研究チーム長 山谷 祐介 YAMAYA Yusuke
主任研究員 石橋 琢也 ISHIBASHI Takuya
主任研究員 渡邉 教弘 WATANABE Norihiro
主任研究員 岡本 京祐 OKAMOTO Kyosuke
主任研究員 鈴木 陽大 SUZUKI Yota
研究員 松永 康生 MATSUNAGA Yasuo
研究員 鈴木 健士 SUZUKI Takeshi
研究チーム付 最首 花恵 SAISHU Hanae

▲ ページトップへ