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Ⅲ−5 人材育成 〜創造力は多様な個性から〜

 オープンイノベーションの推進やグローバル課題解決への挑戦、新しい価値づくりを目指す産業の転換には多様な能力を備えた厚みのある技術人材が求められている。専門性に加えて幅広い視野や国際感覚、デザイン能力、コミュニケーション能力などを身につけた強いリーダーシップを持つ高度技術人材の育成が必要である。さらに社会や市場のニーズをとらえ多様な専門家を結びつけて斬新なものづくりやことづくり(価値づくり)を実現する「プロデューサー型人材」も不可欠だ。

 イノベーションは視野の広い高度技術人材と未来を先取りするプロデューサー型人材が協働することで加速する。産学官の連携と、国際間の研究協力を通じて、二つのタイプの人材が出会い協働する場をつくりだすことが新しい技術と価値の創造につながるだろう。

 大学や企業、公的研究機関などはそうした多様な人材を育てるため、大学・大学院の時期から企業の研究開発の現場や文化・価値観が異なる海外の実情を知る機会を若手人材に提供できるよう協力する。正規就業以前に企業等でのインターンシップや海外経験は専門性と幅広い視野を兼ね備えた若手人材を育てる有効な手段である。

 若者が多様な世界を知ることで自らの能力の可能性とキャリアパスを広げることが長い目で見れば厚みのある人材づくりに資する。大学はカリキュラムを工夫し社会との接点を増やし、企業は新卒一括採用など旧来の仕組みを大胆に見直して海外留学などを経験した人材をより積極的に採用していく必要があるだろう。すでに大学や公的研究機関において若手研究者に内外企業へのインターンシップ拡大を地道に進める動きがありこれを支援したい。

 経営のトップには高度技術人材の必要性と期待を社会により強く明瞭に発信することに努めてもらいたい。公的研究機関は大学と産業界の努力を補完・橋渡しし高度技術人材育成やキャリアアップ教育に貢献するよう努めるべきだ。

 以下の2点を提言する。

① オープンイノベーションに挑む視野の広い高度技術人材を育てるため産学官の連携による「人材育成オープンプラットフォーム」を創設しよう。

 日本の技術開発力の底上げと強化には多様な人材が必要である。日本の長年の強みであるものづくりにたけた技術人材の蓄積の重要性は変わらない。しかしオープンイノベーションの実現や新しい価値創造力を高めていくには、専門的な知識や技量に加え、高いコミュニケーション力や複数領域の技術知識、マーケティングや営業、企業経営などといった幅広い視野とプロデューサー的なセンスを備えた人材が求められており、その育成に産学官は知恵を結集する。既存の制度や慣習を大胆に見直す。

② グローバル課題に挑む人材の育成に向け大学や公的研究機関は英語を公用語化するなど「人材開国」に取り組もう。

 欧米やアジアの優れた研究者・技術者と競い合えるグローバルな競争力を備えた技術人材の育成のため、異なる文化や価値観を理解し言語や文化の違いを乗り越えて、創造的な研究開発や事業を協働できる人材の育成が急務だ。若手研究者や学生に海外経験を積ませる。

 海外から優れた研究者や留学生を呼び込むため、大学や公的研究機関は英語公用化など既成概念にとらわれない大胆な改革を進める。改革はすべての大学や公的研究機関が一律・一様に取り組めるものではなく、組織の個性や特質を生かした国際化戦略をつくる。


 <政府や産業界、大学と協働する日本全体での取り組み>

  • 産官学は実践的な能力を備えた若手高度技術人材の育成のためインターンシップを拡充する。インターンシップは長ければよいというものではない。インターンシップを通じて大学と企業が人材育成の進め方について相互に啓発し合うことが大事である。インターンシップを経験して成長し社会で活躍する若手人材の成功例を広く紹介し博士課程進学に対する社会の否定的な見方の払拭に努める。
  • 高度技術人材の獲得を目指す企業は経営者自らがその必要性と期待を社会に向けて発信する。すでに社員の通年採用に移行した企業があるが、産業界においては新卒一括採用という従来の慣行にとらわれず高度技術人材の採用を積極的に進めてもらいたい。
  • 学生や若手研究者の海外留学を促すため奨学金や留学制度を充実する。
  • 留学生の受け入れ拡大のため、研究開発型大学(リサーチ・ユニバーシティ)を標榜する大学や主要な公的研究機関では英語を公用語化する。

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