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Ⅲ−3 先端材料・製造技術 〜ものづくり王国復活へ〜

 21世紀もものづくりを日本産業の基盤とするため、ものづくりをさらに究める必要がある。欧米の企業や研究機関は次世代のものづくり技術に果敢に挑戦している。日本の製造業に慢心は許されない。先端的な材料開発やものづくりの基盤技術の革新を不断に推進する必要がある。また高い技術力と旺盛な研究開発意欲を備えた中堅・中小企業が日本の製造業の底力であり、優れた中堅・中小企業の力をもっと伸ばしていきたい。

 ナノテクノロジーは日本が競争力を持つ技術だ。ナノ材料やナノ加工はものづくりに大きな変革をもたらす潜在力を秘め諸外国に遅れをとりたくない。シーズ指向が色濃い研究開発の進め方を改め、企業と公的研究機関、大学が一体となり「出口指向」の課題解決型の開発を進める。こうした努力によって、デジタル機器や半導体素子など海外の激しい追い上げで苦境にある産業分野でも再び活力を呼び戻すことができるはずだ。ナノ材料の実用化には材料科学から製造プロセスまでをつなぐ総合的な技術力が求められている。ナノ材料の安全性に関する国際標準・認証制度に産学官が協力して取り組み世界を主導したい。

 また地球規模での環境問題や天然資源の量的制約から、大量生産と大量消費、大量廃棄を前提としたものづくりのあり方が問い直されている。海外での大規模な鉱山開発と大量の資源輸入の上に立った大規模集中型のものづくりとは別に、バイオマスや二酸化炭素(CO2)といった、国内にほぼあまねく存在する分散型の資源に立脚した新たな製造技術の追求にも乗り出したい。東日本大震災を契機に、既存の大規模集中型に分散型の電源を組み合わせた新たな電力供給の仕組みづくりが議論されている。ものづくりでも同様の挑戦をしたい。

 情報技術(IT)とものづくりの結合で生産設備のインテリジェント化・小型化が実現し、大きな敷地や建屋がなくても高度なものづくりを可能にする「ミニマルファブリケーション*1」などの新しい生産技術が実用化段階に入った。少量・超多品種のものづくり、あるいは非常に迅速な試作ができる。プロトタイプ(試作版)をまず世に出し顧客からのフィードバックをもとに顧客志向を高めたものづくりの可能性を広げる。

 ものづくりの力を磨くにあたって、日本の競争力が高い「組み込み型ソフトウエア」の開発力の維持・強化や分析検査機器の開発・実用化も見逃せない大事な要素だ。

 以下の3点を提言する。

① ナノテクノロジーの応用でものづくりを革新しよう。

 超微細化によって同じ材料が思いがけない物性を示す。ナノテクノロジーは単にものを小さくする技術ではなく、新しい機能材料の探求である。顧客や現場のニーズにこたえるまったく新しい材料を提供する潜在力を秘める。

 実用化を見据えたナノテクノロジーの開発に重点を置くため、企業と大学、公的研究機関の研究者が一堂に会し共同研究に取り組む場が要る。つくばイノベーションアリーナ(TIA)をそうした連携の場所のひとつとして機能させる。ナノテクノロジーの研究開発は世界の多くの企業や研究機関が取り組みナノ材料の分析・計測や加工装置は市場性が高い。日本の計測、加工機器は有力な輸出商品になりうる。

② 分散型資源に立脚した新しいものづくり(グリーン分散型ものづくり)を追求しよう。

 日本の化学産業が取り組む「グリーン・サステナブル・ケミストリー*2」は資源と環境の持続性を重視したものづくりの先駆的試みだ。触媒などの技術開発を通じて、バイオマスやCO2などの分散型の資源に立脚した素材生産を既存の石油化学産業と競争力で引けをとらない産業に育てる。金属やセラミックスなど無機材料の研究開発も環境指向のものづくりを実現する上で重要だ。

 金属や希少資源のリユースやリサイクル技術、製造過程で発生する廃棄物の量を減らすことも環境負荷を軽減するうえで重要である。歩留まり向上につながる技術開発はもとより、そもそも廃棄物を出さない製造法の開発が求められている。

③ 自立分散型生産システムで顧客視点を重視したものづくりに挑もう。

 デスクトップ工場やマイクロリアクターを活用する迅速な試作は製品開発のスピードを上げ競争力の向上に貢献する。市場に出した試作品への反響をもとに製品を改良した後、設備をスケールアップして本格量産に乗り出すことができ、顧客ニーズをより的確に反映したものづくりを可能にする。

 個人の感性・創意や多様なデザインを生かしたテーラーメードのものづくりを容易にし、都会の真ん中のオフィスに設備を置けるため個人の起業や女性のものづくりへの進出を促す。


 <政府や産業界、大学と協働する日本全体での取り組み>

  • つくばイノベーションアリーナにおいて、産学官それぞれの研究者や研究機関が組織の壁を越えて結集・融合する「共創場」を築き、共通基盤インフラでの実用実証により世界的な新しい価値や新事業を創出する。
  • ナノテクノロジーの共通基盤技術としての俯瞰マップを作成し、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーション、震災復興などへの研究開発投資の重点化を図る。
  • 製品ライフサイクルでのCO2排出量など新たな環境指標やその計測法を開発・普及することを通じ、ものづくりのグリーン化を後押しする。
  • 希少金属を回収するための社会システムの構築を進める。
  • 災害復興や協業促進のため、全国に展開する既存の製造資源や製造業と新たに導入する自立分散型生産システムとのネットワーク化を促す。
  • 生産規模の拡大を前提としない「ミニマル生産システム」の応用分野に関する調査とともに、大学や公的研究機関、産業界との人材交流の活性化を進める。

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