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Ⅲ−1 エネルギー・資源 〜日本の危機克服、世界に貢献〜

 日本の産業を元気にするため電力の安定確保が重要な課題となっている。再生可能エネルギーと省エネルギー技術の高度化や普及が電力問題の解決に貢献できる。長期的にみれば再生可能エネルギーによる分散型電源を拡大し、従来の集中型電源とのベストミックスを実現することが重要であり、天候に左右される再生可能エネルギーの弱点を補う蓄電池など系統安定化技術の開発に取り組む必要がある。

 海外では気候変動への対応やエネルギー資源の制約から再生可能エネルギーや省エネ関連の市場が拡大している。この成長市場に注目したい。太陽電池市場では日本企業は海外勢との激しい価格競争にさらされる一方で発電効率や信頼性を高める研究開発が進んでいる。また世界で使われている地熱発電用のタービンの約7割は日本製であり高い競争力を持つ。優れた製品や技術が正当に評価されるよう国際標準化で主導権をとる動きもある。

 浮体式の洋上風力や潮流発電といった「海の再生可能エネルギー」は技術開発段階にあり、これから世界市場の広がりが見込める。産学官が知恵を集めて世界を先導する技術を編み出す好機だ。

 省エネ分野で日本は高い技術と実績を誇る。この技術に一段と磨きをかけ「省エネ・日本」のブランドを生かし海外市場を開拓していきたい。とりわけ情報技術(IT)を活用した省エネ型社会・都市づくり(スマートシティ、スマートコミュニティ)の技術は電力需要の平準化を通じ電力会社のバックアップ設備負担を減らし、長期的に電力供給と料金の安定化に貢献すると期待される。行政や医療のサービスなどの情報も合わせて提供する地域の実情に即したスマートシティづくりは地域住民の生活の質の向上に貢献できるはずだ。国内で蓄積したノウハウをスマートシティ関連の製品・サービスの輸出も生かせる。

 省エネの一段の深掘りのため工場などの未利用熱の活用が大きな課題だ。

 メタンハイドレートやシェールオイルなど国内の資源は量が少なかったり採掘が高コストであったり海外の資源と競争するのは容易ではない。しかし資源探査・採掘に関する自前技術の開発は日本企業が海外の資源開発プロジェクトに参画する際に役立ち、資源調達でバーゲニングパワーとなる期待もある。

 以下の3点を提言する。

① 再生可能エネルギーを中心に分散型電源の技術に磨きをかけ国際競争力を高めよう。

 足元の電力供給は化石燃料への依存を容易には脱しきれないが、中長期で考えれば石油や石炭を燃やす大規模集中型発電のウェートを減らし、再生可能エネルギーによる分散型電源に重心を移していくのが望ましい。

 太陽電池は高効率、低コスト化を実現する新技術を追求、高信頼性と合せて総合力で勝負する。太陽光や風力など複数のエネルギー技術を組み合わせ、最適運用を実現するインテグレーション技術の国内実証に取り組み、その海外展開につなげる。大規模な再生エネルギー発電基地の設計から建設・運用に至るまでのパッケージ型輸出を狙う。洋上浮体風力発電、潮流発電などでも産学官の連携で技術開発と実証を急ぎ海外市場への進出を狙う。

 太陽光や風力などの活用には変動する電力供給と需要のバランスをとるため送電技術の高度化が求められる。パワー半導体など送電技術は日本の強みになる。また蓄電技術の性能やコスト面での改善が欠かせない。短時間の繰り返し充放電には蓄電池が適するが、長時間の蓄エネルギーには水素、あるいは水素から合成する化学燃料が選択肢だ。燃料電池をはじめ水素関連技術の開発も課題となる。送電網と分散型電源のバランスをとるシステム開発も重要だ。

② 省エネ型の社会インフラ(スマート・エネルギー・インフラ)技術を開発・普及させ海外へのパッケージ型輸出を目指そう。

 日本が高い競争力を持つ省エネ技術を生かしてスマートシティやスマートグリッド、ゼロエネルギービルなどの新しい社会インフラ技術をシステムとして提供する力を蓄える。国内での先導的な社会実証を経て海外へのパッケージ型輸出を展開する。

 サーバーなどIT機器の省エネ化のため消費電力が少ない半導体素子の開発が求められている。また火力発電の効率向上や製鉄所のコークス乾式消火設備(CDQ)、石油化学の分離プロセスの高度化(膜分離や吸着技術の採用など)といったエネルギー多消費型の設備の一段の省エネ性能向上は今後も変わらぬ技術開発の課題である。こうした大型省エネ技術の海外展開は途上国のエネルギー消費の節減に貢献できる。

 工場や発電所の未利用熱の活用を進める必要がある。エネルギー多消費型の製造業が国内で生産活動を続けていくにはエネルギーコストの大胆な削減が前提になる。隣接する事業所間での熱の融通や、病院やホテルなどでの暖房・給湯用に供給するなど異業種、民生・産業間の連携を進める。熱の貯蔵や輸送技術の開発も課題だ。

 自動車のさらなる省エネ化も進める。電気自動車の蓄電池やモーターの効率向上、燃料電池車の実用化、エンジンの燃費効率の向上、エンジン排熱の有効利用などを通じ、革命的な省エネ型自動車を実現したい。

③ 資源探査・掘削の自前技術の蓄積に努めるとともに国内資源の状況を正確に把握する調査を推進しよう。

 メタンハイドレートやシェールオイルなどの探査と掘削に関連する総合的な技術力を磨き蓄積する。国内のエネルギー資源の賦存量を把握し、その開発能力を保有することは海外資源の確保や調達において有利なカードとなりうる。


 <政府や産業界、大学と協働する日本全体での取り組み>

  • 電力システム改革や規制の合理化によって再生可能エネルギー発電事業者の新規参入を促し、同時に電力系統の強化について議論を進め、機器産業の需要拡大を通じグリーン産業を育成する。
  • 地熱発電では温泉事業者、洋上風力発電では漁業者といった利害関係者との共存共栄が不可欠だ。ビジネスモデルを発電事業者は関係者とともに考える必要がある。政府や自治体はそうした動きを後押しする。
  • 国内賦存量が大きく安定電源となりうる地熱の利用、温泉発電の普及のための技術開発と必要な規制の合理化を進める。
  • 海の再生可能エネルギーの実験・実証に恒久的に使える海域をつくり海外企業にも参加を促して国際的な海洋エネルギー研究を推進する。
  • 住宅やオフィス、工場における省エネ設備・機器導入へのインセンティブ付与(住宅断熱化の義務付けやエコポイント制度、税制優遇など)によって省エネ技術の利用拡大を促す。
  • 政府や自治体、産業界は国内外で進むスマートシティ実証試験を実施するに当たって、恒久的な利用の足がかりとなるよう必要な送電などに関する規制緩和なども合わせて検討する。
  • スマートメーターなどの重要なエネルギー関連技術の国際標準化を主導できるよう産学官が協力体制を組んであたる。
  • 鉄鋼や石油化学などの大型省エネ設備の海外展開を産官が協力して進め、輸出先でのCO2削減効果の一部を日本の削減実績として獲得できる仕組み(二国間クレジット制度など)の実現を目指す。
  • 地中熱利用など国内では未開拓に近い省エネ型インフラ技術の利用拡大のため必要な技術開発を産学官連携して進める。
  • 深海掘削船などを利用した深海底や海底下の地層調査を通じて日本の排他的経済水域内にある海底資源・地下資源の把握に努める。
  • 海底掘削や鉱物採取、選鉱、精錬などの技術開発と実証に産学官が連携して取り組む。
  • 人工衛星を用いた遠隔探査(リモートセンシング)技術の開発と、資源国との共同探査などを通じた資源確保戦略を推進する。

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