取り組みについて
イノベーション・ハブ総括
米田 晴幸 上席イノベーションコーディネータ
光ネットワーク超低エネルギー化技術拠点”VICTORIES”は文科省の「先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム」事業で、次々世代に必要となる巨大容量のネットワーク通信を、現状から3桁少ない消費電力で実施できる基盤技術を確立しようとするものです。民間企業5社(日本電信電話㈱未来ねっと研究所、㈱富士通研究所、古河電気工業㈱、㈱トリマティス、日本電気㈱)から資金的、人的協力を得て平成20年度からスタートし、22年度の再審査で拠点事業の継続が承認されましたので、23年度から、新たに5社(富士通㈱、日立電線㈱、㈱フジクラ、㈱アルネアラボラトリ、住友電気工業㈱)、25年度から日立電線㈱に代わり北日本電線㈱の参画を得て、要素技術開発ならびに実用化技術開発を強化し、規模を拡大して推進することになりました。平成26年秋には、これまで開発してきた要素技術を統合し、実運用形態によるデモンストレーションを実施する予定です。
- (1)研究開発領域間および事業領域間をまたがる垂直連携拠点となること
- (2)到達目標が改良技術の域を超えた真にイノベーションに繋がるものとなること
- (3)国際的な求心力となり得ること
- (4)垂直連携を担う視野の広い人材の育成を図ること
これらはいずれもかなりチャレンジングな取り組みであり、私たち産総研自身が従来の発想を超えた考え方で取り組む必要があると思います。そうでなければ、産業界、大学との協働のコアとなり得ないからです。研究課題の詳細は別項に示してありますが、次々世代の通信ネットワークの構想を実現するため、シリコンフォトニクスのデバイス技術と光パスコンディショニング技術との融合を、さらに、より上位レイヤーのネットワークアプリケーションインターフェース技術との融合までを見渡して、超低エネルギー・ネットワークアーキテクチャの構築を目指すものです。
このため、産総研内ではネットワークフォトニクス研究センター、情報技術研究部門、ナノエレクトロニクス研究部門、ナノデバイスセンター、電子光技術研究部門が連携、相互補完しながら活動を進めることになります。同様に、参画企業にも垂直連携を意識した研究開発活動をお願いしています。効果的に垂直・水平の連携を図るため、今回の拠点運営ではイノベーション・ハブ機能を設けています。また、この拠点活動においては、協働企業ならびに産総研が先端的かつ革新的な技術開発に注力しやすい環境を整えるため、拠点活動の一環として成される知的財産について、協働企業各社は原則として相互に実施許諾することを合意しています。
2011年3月11日の東日本大震災を受けて、事業領域を問わず抜本的な低消費電力化の重要性が一層高まっています。また、情報通信ネットワークの安定性の向上も重要な課題です。私たち産総研も、どうやったら技術課題を突破できるか、また、社会システムにポジティブな変革を引き起こせるかをよく考え、論議しながら”VICTORIES”の活動を進めたいと思っています。理事長の挨拶にもあります「持続的発展可能な社会」には、このような価値観とマネージメントが必須であろうと思います。イノベーションにおいて、リニアモデルではなく、連鎖(コンカレント)モデルに基づく拠点活動を推進するため、産総研内のみならず、大学、産業界の関係者との真摯な議論を通じて、大局観を持ち、合せて柔軟な拠点運営を図っていきたいと考えていますので、関係する皆様の積極的なご支援をお願いする次第です。