研究目的

現代社会を特徴づける問題として、ストレス社会や高齢化社会があります。いずれの問題も人々の身体や精神、認知機能、感情、および行動に大きな影響を与えており、生活の質の確保・向上が特に先進国で大きな懸案となっています。このため、様々な医薬品の探索が進められていますが、より安全で即効性、耐容性が期待される候補として、天然物由来の活性物質に注目が集まっています。

本研究では、微細藻類生産物をはじめとするこれまで未活用であった生物資源由来物質が持つ細胞活性機能を形態プロファイリング法などの先端的オペランド細胞観測技術を用いて明らかにすることにより、より安全で即効性、耐容性がある機能成分を解明すること、これらの成分の作用機構解明に基づく新たな候補化合物の探索指針を確立すること、そして最終的には医療・食品分野における実用化を目標としています。

  研究内容

東大・大矢研究室で開発された形態プロファイリング法は細胞内で化合物が相互作用する遺伝子産物を細胞の形態情報の類似性を基に推定するケミカルゲノミクスの方法の一つです。これまでに同研究室ではこの方法を使って木質バイオマスの分解産物3種の細胞内標的を同定することに成功しており、遺伝子の動作下で化合物の相互作用を観測することができます。

本研究では、まず真核細胞のモデルとして出芽酵母を用います。各種生物由来物質を出芽酵母に作用させ、それによって生じる細胞の形態変化を情報学的に解析することにより、その物質の細胞内での作用を動作下で観測します。

望ましい活性を持つ生物由来物質については、類似した構造を持つ化合物群を探索・合成し、形態プロファイリング法や他の評価方法による構造活性相関を評価し、さらに望ましい活性を持つ化合物の探索・合成指針とします。

  産業化に向けた取り組み

得られた成果を産業界と共有するために、産総研では「生物資源と触媒技術に基づく食・薬・材創生コンソーシアム」を、東大では「機能性バイオ研究支援フォーラム」を設立しました。両組織の良い連携を基盤とした産学官連携体制により、実用化に向けた研究を強力に推進します。