研究目的

近年、半導体デバイスの分野では微細加工技術に限界が見られ始めムーアの法則を維持することが困難であると言われています。これを解決するために、従来技術の単なる延長とは全く異なる新しい原理・構造に基づく次世代不揮発メモリの研究開発が提案され、現在精力的に開発が進められています。中でも抵抗変化メモリ(ReRAM)・磁気ランダムアクアセスメモリ(MRAM)・相変化メモリ(PCM)はその有力候補として注目されています。しかしながら、これらの素子は微細化に伴って記録状態のばらつきが大きくなる等、信頼性の低下が深刻化することが知られており、高集積化メモリ応用におけるボトルネックとなっています。これらの問題を解決し、さらに研究開発を加速させるには、微細なメモリ素子ひとつひとつを実際に動作させ個々の記録状態をリアルタイムで可視化する、という「ナノスケール・オペランド計測技術」が必須となります。本研究では、これを世界で初めて実現するため、高分解能・深い検出深さ・記録状態の可視化という特長を有するレーザー光電子顕微鏡(レーザーPEEM)技術を開発します。また実際に動作するReRAMデバイスへの適用を実施し、メモリ動作下(オペランド)で記録されたデバイスナノ構造を「非破壊」かつリアルタイムで観察にする顕微手法の実現を目指します。

  研究内容

 

本研究グループではこれまでに「光」と「電子」のそれぞれの顕微手法の長所を併せ持つ新しい顕微技術としてレーザーPEEMを提案してきており、連続波の紫外レーザー光源と電子光学の収差補正機構を導入することで2.6 nmという世界最高の空間分解能を達成しました(図1)。このレーザーPEEMでは、放出される光電子の特性を考慮すると、10 ~ 100 nmの深さに存在する埋もれたナノ構造を検出する能力があると考えられ、これを利用すればデバイスを破壊することなく動作中(オペランド)観察が実現できると期待されます。本研究ではその実証実験を行い、初めてのメモリの動作中観察を実現していきます。さらに上述のレーザーPEEM開発を実現した後、実際にデバイスでの測定を実施していきます。具体的には動作可能なReRAM素子をそのまま動作・観察することで、各素子のばらつきや信頼性の原因究明を進めます(図2)。本研究で開発するオペランド・レーザーPEEMが実用化に成功した場合、ReRAMだけでなくMRAM、 PCMといった主要な次世代記録デバイス全般にとって、非破壊で動作検証・信頼性を一括評価できる初めての技術となり、その波及効果は極めて大きいと期待されます。

  産業化に向けた取り組み

開発当初から、大学での基礎研究、デバイスメーカーの開発プロセスに用いることが出来る程度の価格帯になることを想定して、その機器設計を行っていると同時に、実用化に際しては、辛研究室から分析機器メーカーへの技術移転を行っていく予定です。

    

またReRAMに関するオペランド・レーザーPEEMを用いた研究では、メモリ開発を行っている企業と協業しており、本研究で得られた知見を開発現場へすぐにフィードバックできる体制を構築しています。さらに、産業の高度化に必須である非ノイマン型情報処理(人工知能)デバイスの開発も推進しています。