計量標準総合センター : National Metrology Insutitute of Japan (NMIJ)

基本単位の標準(温度(熱力学温度))

ケルビンの定義改定

温度(熱力学温度)の単位ケルビン (K) は、国際単位系(Le Système International d'Unités, SI)の基本7単位の一つですが、2019年5月20日より以下のように改定されました。

「ボルツマン定数kを単位J K-1(kg m2 s-2 K-1に等しい)で表わしたときに、その数値を1.380 649×10-23と定めることによって定義される」

SIでの単位ケルビンは、1954年以来2019年まで、水の三重点温度を厳密に273.16 Kとすることで定義されていました。この定義では、水という物質の性質に依存してしまうため、その三重点の温度は、用いる水の同位体組成や、水に含まれる不純物濃度により影響を受けることが知られていました。近年の計測技術の発展により、それらの影響が顕在化され、水の三重点では、定義としての普遍性に問題があることが分かってきました。これに対し、新しいSIは、ボルツマン定数kという基礎物理定数の値を厳密に定めることで定義され、水の三重点のように物質の性質に依存することがなく、より普遍的なものになりました。SIの定義に従った熱力学温度は、定積気体温度計(Constant Volume Gas Thermometer, CVGT)、音響気体温度計(Acoustic Gas Thermometer, AGT)、ジョンソンノイズ温度計(Johnson Noise Thermometer, JNT)、絶対放射温度計(Absolute Radiation Thermometer, ART)などの熱力学温度計により実現されます。産総研ではそれらの熱力学温度計を開発し、高精度な熱力学温度の計測を目指しています。

音響気体温度計とガラス製密封セル

左:音響気体温度計(Acoustic Gas Thermometer, AGT)
右:水の三重点(Triple Point of Water:TPW)を実現するガラス製密封セル

国際温度目盛

上述のようなAGTやJNTなどの熱力学温度計は、そのシステムが大がかりであり、かつ、1つの温度点の測定に長時間を要するなど、実用的な温度の基準(標準)としては適していません。そのため、産業や研究など様々な場面で測定されている温度の基準には、熱力学温度の最良近似である国際温度目盛が用いられます。この国際温度目盛は、三重点や凝固点などの物質の相転移点において温度値を定めた温度定点(定義定点)と、それらの温度定点の間を補間する白金抵抗温度計や放射温度計など数種類の安定な温度計を利用して定義されています。1927年に最初の国際温度目盛が定められ、その後、温度範囲の拡大と精度向上のために改訂が重ねられています。現在は、1990年に改訂された、1990年国際温度目盛(ITS-90)が使われています。また、2000年には、1 K以下の超低温域の温度目盛として3Heの融解圧の温度依存性を用いた、2000年暫定低温度目盛(PLTS-2000)が暫定的に定められています。2019年のSIの改定後も、ITS-90とPLTS-2000は継続して使用することが認められています。単位「℃」で表されるセルシウス温度の数値は、単位「K」で表される熱力学温度の数値から273.15を引いたもので、2019年の定義改定後もその関係は維持されています。

産総研では、国際温度目盛を高精度に実現する技術の開発を進めるとともに、それらの技術を用いて、日本国内の温度のトレーサビリティを支えています。また、国際的な温度目盛の整合性を保つために、国際比較にも参加しています。

1990年国際温度目盛(ITS-90)と2000年暫定低温度目盛(PLTS-2000)の模式図

1990年国際温度目盛(ITS-90)と2000年暫定低温度目盛(PLTS-2000)の模式図:
ITS-90は物質の三重点や凝固点などを利用した温度定点と、それらの温度定点の間を補間する温度計で実現される。PLTS-2000は3Heの融解圧の温度依存性を利用して1 K以下の温度目盛を暫定的に定めたものである。

水の状態図 水の三重点セルの模式図 水の三重点セルの写真

ITS-90の定義定点の例:水の三重点
水の状態図(左の模式図):水の固相(氷)、液相(水)、気相(水蒸気)の三相が共存する状態を水の三重点という。水の三重点の温度は273.16 K となる。
水の三重点セル(中央は模式図、右は写真):水の三重点は、高純度の水をガラスの容器に密封した水の三重点セル内で実現される。

白金抵抗温度計

白金抵抗温度計
(a) 長さ約5 cmのカプセル型、(b) シースの長さ約60 cmのロングステム型、(c) 感温部センサの拡大写真

射温度計

放射温度計

3He蒸気圧温度計

3He蒸気圧温度計

ITS-90を実現する温度計の例:
白金抵抗温度計は約-259℃から約962℃までの温度域のITS-90を実現するのに用いられる温度計である。低温では写真(a)のカプセル型が使われ、液体窒素温度以上の広い温度域では、写真(b)のロングステム型が使われている。カプセル型もロングステム型も感温部のセンサは同様な構造のものが用いられている。写真(c)は(b)のロングステム型の先端部にある感温部センサの拡大写真である。放射温度計は約962℃以上の温度域のITS-90を実現する温度計である。3He蒸気圧温度計は、ITS-90の下限温度0.65 Kまでの低温域の温度目盛を実現する温度計である。

https://unit.aist.go.jp/ripm/thermog/its-90/ITS-90J.pdf

https://unit.aist.go.jp/ripm/thermog/its-90/ITS-90supJ.pdf


ケルビンの定義
ボルツマン定数kを単位J K-1(kg m2 s-2 K-1に等しい)で表わしたときに、その数値を1.380 649×10-23と定めることによって定義される

https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/SI_9th/

https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/SI_9th/pdf/5_SI_ケルビン.pdf