長さの単位メートルは、地球の子午線の赤道から北極までの長さの1000万分の1と定められ、実際の測量に基づいてその長さを表すメートル原器が作られました。1889年の第1回国際度量衡総会においてメートル原器が長さの標準として国際的に採用されました。その後、1960年にクリプトン86原子のスペクトル線の波長を用いて定義することになりましたが、レーザ技術の発展により、1983年に真空中の光の速さを用いた現在の定義に変更され、より高精度の標準となりました。2018年の第26回国際度量衡総会において、内容は変わらないまま、表現が他のSI基本単位とそろえられることが決議され、2019年に施行されました。
現在のメートルは、真空中の光の速さを299 792 458 m/sと定めることによって定義されています。
光の速さを定義値299 792 458 m/sとして固定してしまえば、逆に1 mの長さが決定されます。
現在のメートルは光の速さによって定義されていますが、その定義を使って実際の1 mを測定するために、レーザ光の波長を「長さのものさし」として使う干渉と呼ばれる手法が主に用いられています。メートルの定義から分かるとおり、長さの単位の定義に時間の単位である秒(s)が入っており、長さと時間は密接に関連しています。電磁波である光の速さ、波長、および周波数の間には、光の速さ(次元: LT-1)=波長(次元: L)×周波数(次元: T-1)の関係があり、光の周波数を正確に測定することにより、299 792 458 m/s ÷ 周波数 s-1から、光の波長を正確に決定することができます。現在の日本の長さの国家標準である「協定世界時に同期した光周波数コム装置」は、時間の定義に従い正確な光周波数を発生させることのできる「光周波数のものさし」であり、この装置により正確なレーザ光の波長=「長さのものさし」を決定することができます。