計量標準総合センター : National Metrology Insutitute of Japan (NMIJ)

工学計測標準研究部門
強度振動標準RG
穀山 渉さん
工学計測標準研究部門
気体流量標準RG
岩井 彩さん
物理計測標準研究部門
量子電気標準RG
大江 武彦さん
物理計測標準研究部門
高周波標準RG
木下 基さん
物質計測標準研究部門
ガス・湿度標準RG
天野 みなみさん
物質計測標準研究部門
粒子計測RG
村島 淑子さん
分析計測標準研究部門
放射線標準RG
清水 森人さん
分析計測標準研究部門
X 線・陽電子計測RG
オロークブライアンさん

PROFILE
清水 森人さん
Morihito SHIMIZU
分析計測標準研究部門
放射線標準研究グループ
入所年 2011 年

「目に見えないもの」を測るということ
研究内容

「放射線がん治療における装置から出る放射線の量の標準開発」

 「私の関わる医療分野では、体温や体重、血圧な どをはじめとして様々な計測が行われる。計測標準の 仕事のどれか一つが欠けただけで、私達が受けるこ とのできる医療は成り立たなくなる。“ 健康で文化的な 最低限度の生活を送る”という基本的人権を守るため にも、計測標準の仕事は欠かせない。 そもそも、mやkgという基本単位を作ろうとした人た ちは、民衆の基本的人権を守ることを一つの目的とし て、最初の仕事を行ったとされている。数百年以上 前からこの目的は変わることなく計測標準の分野で 脈々と受け継がれているのではないだろうか。」
 計測標準の魅力を力強く語ってくれた清水さんは現 在、放射線治療で患者さんにあてる放射線の量を計 測するのに使われる電離箱線量計を校正する際の基 準となる水吸収線量標準の開発を行っている。放射 線治療では、がん腫瘍に照射する放射線の量に± 5%ばらつきがあると、がんの再発率に±15%の差が 生じると報告されている。
 そのため、放射線治療の分野ではこのばらつきを できる限り減らすために、様々な努力が行われている。 清水さんが専門とする線量計測の分野では、計測の 不確かさを±2%以下に抑えることを目標としていて、 これが実現するとがんの再発率のばらつきを小さくす ることができ、確実な放射線治療ができるようになる。
 現在、線量計測の不確かさのうち、多くの部分は 電離箱線量計の校正方法の問題から生じるとされて いる。これを解決するために、より不確かさを小さく 抑えることができる標準の開発を研究しているのだと いう。
 放射線治療は手術をする必要が無いので、患者さ んへの負担が少なく、日帰り治療なども可能という優 れた特徴がある。しかし、がん腫瘍に放射線をあて すぎると健康な組織まで破壊してしまうというリスクもあ る。新しい標準はこのリスクを軽減することにも大きく 貢献しており、標準供給の立場から放射線治療の治 療効率を改善することで、誰もが安心して治療を受け ることができ、豊かな生活を続けられるようにすること に貢献できるのがこの研究の最大の魅力だと清水さ ん。今後は標準をもっと発展させていきたい。放射線 治療技術は日々発展し、短期間の 間に数種類の放射線治療が開発 されることもある。そのため、新し い放射線治療に対応した標準の 開発は医療現場からのニー ズも高く、終わりなき挑戦 に強い使命感を日々、実 感している。
 「この研究の対象は、 目に見えないもの。是非、 測るということの重要性を 感じて意識を持っている 人に来てほしい。」命に 関わる研究を進める中、一 日一日の地道な努力を大切 にしている清水さんだから こその思いである。      
清水 森人さん 清水 森人さん
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