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熱物性標準研究室

計測・標準分野

熱膨張率

4.研究成果紹介


【ゲージブロックの線膨張率校正/5〜35℃での高感度線膨張率測定システム】

 
【概要】
 ゲージブロック(Gauge block)は一見単なる金属やセラミックス製の直方体ブロックであるが、その一対の端面の間隔を長さの基準とする端度器であり長さ計測における主要な実用標準器である。ゲージブロックの使用に際してはその長さの校正値に対してゲージの温度に依存した膨脹・収縮量の補正を行う必要があり、予めブロック素材の線膨張率の値を正確に知っておく必要がある。ところが、ナノメートルオーダーの精密な長さの計測ではゲージブロックの個々の熱膨張特性のばらつきが長さの補正値に大きな不確かさが生じさせることになり、現在これがゲージブロックの長さ計測の不確かさの主要因の一つとなっている。

 そこで計量標準総合センター(NMIJ)では、室温付近での短尺ゲージブロックの熱膨張率を絶対測定できるレーザ干渉計と熱電式温槽による精密線膨張率計測システムを開発し、線膨張率の依頼試験を開始した。

【精密線膨張率計測システムの説明】

図:計測システムの概要図
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写真1:試験片設置時の様子
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写真2:レーザ干渉計の全景

 図に熱膨張率校正に用いる精密線膨張率計測システムの概略を示す。計測システムは、校正対象とするゲージブロックの温度を精密に測定しかつ制御する部分と、試験片の温度変化に伴う寸法変化を計測する部分の2つから構成されている。試験片であるゲージブロックは真空チャンバー内の温度制御されたステージ上に置かれ、3個の白金抵抗測温センサーによって温度を測定する(写真1)。

 必要な精度での校正を行うためには試験片の温度に関してミリケルビンオーダーで安定した制御が必要であるが、本計測システムでは、単一デバイスで冷却と加熱が可能な熱電素子(ペルチェ素子)の使用によりこれを実現している。一方、温度変化に伴う試験片の寸法変化は、He-Neレーザを光源とするレーザ干渉計(写真2)により、レーザ光の波長を基準としてナノメートルオーダーで絶対測定される。熱膨張率測定では、試験片の微小な寸法変化の測定を温度変動環境下で行うことが避けられない。そこで、本測定システムではこの問題を、温度変動による試験片の姿勢変化による"みかけ"の寸法変化を自動的にキャンセルする機能を持った光へテロダイン式2重光路レーザ干渉計の開発によって解決した。

 現在、JIS K級のゲージブロックについて本測定システムによる熱膨張率の依頼試験を行っている。校正は、呼び長20-100 mmまでの短尺ゲージブロックについて5 ℃〜35 ℃の任意の温度で可能であり、呼び長100 mmのスチール製ゲージブロックの場合の一般的な条件下における校正における最小の拡張不確かさは4.7×10-9-1k=2)である。また、校正手数料は1校正点につきで44,900円、校正点追加1点につき20,200円となっている(測定条件により加算あり(2005年10月現在))。

 本計測システムはゲージブロックと同等の精度で加工でき、かつプローブとなるレーザ光について0.3以上の反射率が確保できる固体材料であれば、ゲージブロックと同様に熱膨張特性の評価を行うことができる。低膨張機能材料(<5×10-8-1)についても、十分な検出感度をもった絶対測定による特性評価を行うことが可能であり、新規機能材料開発、精密機器製造など様々な分野で材料特性の高精度な基盤的情報の提供が期待される。




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