座標間に相関がある場合の相関の共分散の求め方

 

いくつかの標準に用いて、その濃度から測定器の読み値を校正したい場合にはに対する回帰曲線(校正曲線)を求める一般的な回帰分析という手法があり、特に両座標に不確かさのあるときは重み付きDeming法で校正曲線の回帰係数とその誤差分散を求めることができます。

 

しかしながら、一般的な回帰分析法にしろ重み付きDeming法にしろ通常は標準はお互いに独立であることを前提にした回帰分析法です。ところが、現実問題としては標準がお互いに独立ではない場合が多々あります。たとえば標準を調製した後、標準や標準などは標準を希釈して調製するような場合がしばしばあります。つまり、標準と標準や標準などは親娘のような関係にあり、お互いに相関があると言います。このような場合には、回帰分析を行うに当たって、個々の標準不確かさのみを考慮した一般的なDeming法回帰分析では回帰係数の正確な誤差分散を見積もることはできず、間の相関分散を組み込んだ特異なDeming法回帰分析(本ホームページ参照)を行わなければなりません。

 

さて、相関がある変数間の共分散

 

               

 

のような誤差伝搬則より求めることができます。ここで、は相関のある変数間の共通のパラメータです。

 

たとえば、いま濃度の標準を希釈して標準を作製した場合、その希釈係数をとすれば、標準の濃度

 

               

 

となります。すなわち、標準の濃度の誤差は標準の濃度に伝搬していることになります。上式の関係より濃度およびの誤差分散は

 

               

 

となります。一方、濃度と濃度間の共分散は、の関係式に上述の誤差伝搬則を適用することにより

 

               

 

となります。もし、標準が標準を希釈係数で希釈して調製されている場合には、標準の濃度の誤差は標準の濃度にも伝搬することになるので、上述の場合と同様にして、濃度の誤差分散および濃度と濃度間の共分散は

 

 

となります。また、濃度と濃度間の共分散は

 

               

 

の関係式に誤差分散の伝搬則を適用することにより

 

               

 

となります。同様にして、標準を親とした娘の標準の各濃度間の共分散を計算することができます。

 

また、標準は標準を親として希釈係数で希釈して調製するところは上述と同じであるが、標準は標準を親とするのではなく標準を親として希釈係数で希釈して調製するようなカスケード方式の場合には

 

               

 

 

               

 

から、濃度と濃度間の共分散は

 

               

 

となります。また

 

               

 

の関係式に誤差伝搬則を適用することにより、濃度と濃度間の共分散は

 

 

となります。同様にして、標準を親とした娘の標準などなどカスケード方式の各濃度間の共分散を計算することができます。