不確かさの伝播則による合成標準不確かさの求め方

 

 ある実験系での測定の目的とは「測定量」(measurandの値すなわち観測される特定の量(particular quantity)の値を決定することです。したがって、測定にあたっては、測定量の評価に対して適切な「測定の方法」(method of measurement)および「測定の手順」(measurement procedure)をまず最初に明示しておかなければならず、また、「測定の結果」(result of a measurementは一般に「測定量の値」の近似値あるいは「推定値」(estimate)に過ぎないことから、その推定値の「不確かさ」(uncertainty)も併せて明記しなければならないと、GUMは謳っています。

 

 多くの場合、「測定量」(物理量)は、直接には測定されず、他の個の量から

 

               

 

のような関数関係によって決定されます。

 

 「測定量の推定値」(an estimate of the measurand )、すなわち、「出力推定値」(output estimateは、個の量に対する「入力推定値」(input estimateを用いて

 

 

 

のように表すことができます。

 

 「出力推定値」あるいは「測定結果」に付随する推定標準偏差を「合成標準不確かさ」(combined standard uncertainty)と呼び、記号で表します。また、これは、「標準不確かさ」と呼ばれで表される、それぞれの「入力推定値」の推定標準偏差を合成することにより求めることができます。

 

入力量がすべて「独立」な場合は、測定量の推定値、すなわち、測定の結果の合成標準不確かさは、次式で与えられる合成分散(combined varianceの正の平方根となります。

 

 

 

ここで、は上述の関数を表す写像記号であり、は「感度係数」(sensitivity coefficient)と呼ばれています。感度係数は実験的に求められる場合もあり理論的・経験的に求められる場合もあります。このようにして求められた合成標準不確かさは推定標準偏差であり、「合理的に測定量(物理量)に結びつけられ得る値の分散」を特徴づけるものです。また、この式は「不確かさの伝播則」(the law of propagation of uncertainty)という重要な公式です。

 

 「不確かさの伝播則」の基となる関数

 

               

 

が、もし次式のような指数関数

 

 

 

であった場合には、合成標準不確かさを上述の「不確かさの伝播則」の公式をそのまま使って計算するよりも、この関数の対数をとり

 

 

 

を微分して計算した方が簡単です。すなわち

 

 

 

の式から合成標準不確かさを算出することができます。合成分散は「相対合成分散」として、各入力値の推定分散は「相対推定分散」として表せます。また、「相対合成標準不確かさ」はであり、各入力推定値の「相対標準不確かさ」はです。ただし、およびとします。

 

(例題)いまの金の容器に入れたのダイヤモンドを℃から℃までだけ温めるのに必要な熱量を求め、その測定量に不確かさを併記することを考えましょう。ただし、金の密度はであり、ダイヤモンドの密度はとし、それぞれの定圧比熱はおよびとします。また、各入力量の推定標準偏差は、それぞれ、であり、温度上昇の推定標準偏差はとします。

 

 

(解答)求める熱量を表す関数式は

 

 

 

ですから、求める熱量の推定値

 

 

 

となります。また、不確かさの伝播則より、求める合成分散

 

 

となるので、合成標準不確かさ

 

 

 

となります。したがって、包含係数とすれば拡張不確かさ

 

 

 

となるので、信頼の水準が約の熱量の信頼区間は

 

 

 

となります。