分銅のパラドックス(強い相関の例)
いま表示値が500gの分銅が2個あり、いずれも不確かさが1%であったとします。そこでこの分銅2個を組にして天秤で校正しながらもう1つ別の分銅(表示値1kg)を製作したときに得られる1kgの分銅の不確かさはどうなるでしょうか。

2つの500gの分銅の真値を
および
とし、表示値を
および
とすれば
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となります。ここで、
および
は重さのバラツキです。一方、1kgの分銅の真値を
、その表示値を
とすれば
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となります。したがって、1kgの分銅の表示値
の不確かさ
は
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となります。よって、求める1kgの分銅の不確かさ(変動係数)は
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となり、もとになった500g分銅の不確かさ1%よりもはるかに精度のよい1kgの分銅すなわち0.7%の不確かさの分銅が得られたことになり、明らかにおかしい。これを「分銅のパラドックス」と呼んでいます。
このようなパラドックスが生じた原因は2個の500gの分銅のバラツキが互いに無関係(相関のない)な独立な不確かさとみなして1kgの分銅の不確かさを合成したのであるが、実際には両者の分銅の間には強い相関(相関係数
)があると考えれば、求める不確かさの合成値は、相関がある場合の不確かさの伝搬則

ここで、相関係数は
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であり、また
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あるとします。
を適用することにより

となります。したがって、求める1kgの分銅の不確かさ(変動係数)は
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となり、1kgの分銅の不確かさも1%となり、現実に即したものとなります。