TECH Meets BUSINESS
産業技術総合研究所が創出・支援するベンチャービジネス

独自の解析技術が創薬の未来を拓く!~分子群にアプローチする創薬基盤技術~

産総研発の解析技術を用いて、創薬の共同開発と自社開発に取り組むソシウム株式会社。ひとつの標的分子ではなく、複数の分子群から薬へとつなぐ新しい創薬基盤技術を提供しています。疾患から化合物を選別することで今までなかった薬をつくり、化合物から疾患を特定することで既存医薬品の可能性を広げる。独自のアプローチにより、創薬に関わる課題を解決する多様なサービスを届けています。

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  • 川井洋/Hiroshi Kawai

    川井洋/Hiroshi Kawai

    ソシウム株式会社代表取締役CEO。薬学博士。京都大学薬学部卒業。同大学院薬学研究科修了。博士(薬学)取得。三菱化成株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)に入社。創薬に関わる基礎研究から臨床開発まで実績を積んだ後、ビジネス部門で事業化を経験。1998年より2年間ハーバード大学医学部にポスドク研究留学。一貫して循環・代謝領域の薬理研究に従事し、2薬剤の承認取得。その後、臨床開発部門にて複数の前臨床、臨床プログラムの臨床開発に従事。2005年より事業開発部門にて国内外の企業とのライセンス契約を主導。2015年より同社米国子会社副社長。2019年10月よりソシウム株式会社に参画。2020年5月取締役、6月代表取締役に就任。

    堀本勝久/Katsuhisa Horimoto

    堀本勝久/Katsuhisa Horimoto

    ソシウム株式会社取締役CTO。理学博士。東京理科大学理工学部卒業。同大学院理工研究科修了。博士(理学)取得。同大学助手。佐賀医科大学助教授。東京大学医科学研究所特任教授。産総研チーム長、副センター長を歴任。この間、査読付き論文約130報。また、文部科学省科学研究費補助金13課題(基盤A及びB)の代表及び参加、細胞アレイ(2005-09)、iPS(2010-11)、エピゲノム(2010-14)のNEDOプロジェクト及び、先駆的医薬品・医療機器研究発掘支援事業(2014-15)と創薬支援推進事業(2015-19)のAMEDプロジェクトに参加。2017年9月にソシウム株式会社創業、取締役に就任。現在、次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(AMED、2018-2023)にPIとして参加、産総研人工知能センター招聘研究員、埼玉医大客員教授を兼任。

    分子群からのアプローチに創薬ビジネスのチャンスがあった

    分子群からのアプローチに創薬ビジネスのチャンスがあった

    ─ ソシウム株式会社が設立されたきっかけを教えてください。

    堀本勝久さん(以下、堀本):

    私が副センター長をしていた産総研創薬分子プロファイリング研究センターの立ち上げ時に、民間の創薬支援と共同研究を目指すためにベンチャーを創設することをミッションに加えました。そのミッションの作成に携わったことがきっかけのひとつです。もうひとつは、自分の技術がBtoBの真剣勝負の舞台で通用するのか知りたかったこと。最後のひとつはさらに個人的な理由で、自分が積み重ねてきたことが世の中のお役に立てばという思いから、2017年9月にソシウムを創業しました。

    ─ 2019年に川井さんが参画されます。どのような経緯があったのでしょうか?

    堀本:

    創業後2年ほどは受託解析サービスが主な業務でしたが、製薬企業の受託の判断基準は「その技術を使って薬ができるか?」に行き着きます。解析技術の提供だけでなく、自社で薬がつくれることを示さなければ受託自体の信用度は上がりません。そこで自社創薬の会社への転換を目指し、製薬企業に勤務していて責任のある立場を経験されていた人材をリクルートしていくこととなりました。

    川井洋さん(以下、川井):

    その頃私はアメリカに駐在しており、あらゆる人材が行き来するベンチャーのダイナミズムを感じ、転職を決意していたときでした。日米をつなぐWEB面談で入社を決めました。私は国内の製薬会社に新卒で入社して30年勤め、前半は研究と臨床開発、後半は事業開発やライセンスなどのビジネスに携わりました。口幅ったい言い方ですが、これまでの自身の経験でベンチャーを活性化したいと考えたのが参画したきっかけです。

    ─ 創薬の分野で事業展開された背景を教えてください。

    堀本:

    創薬分子プロファイリング研究センターをつくるまで、実はスタンダードな創薬のプロセスに関して無知でした。私は分子生物学のデータを使って、ひとつの分子だけに落とし込まず分子群の観点から解析しておりましたが、センターで創薬を目指しているグループはシーズの段階でひとつの標的を定めて、それに対しての化合物などをつくっていました。生体分子は相互作用によって多様な機能を発揮するため、一分子を標的にした創薬スタイルには非常に違和感を覚えていました。

    海外のビッグファーマでは、一化合物一標的分子アプローチの開発と分子群から追い詰めていくアプローチの両方が一般的でしたが、多くの製薬企業では、特に日本では標的分子からのアプローチがスタンダードでした。そこにビジネスチャンスがあると感じ、分子群を評価できる方法の開発を推進しました。

    疾患から新しい薬をつくり、既存医薬品が効く疾患を見つける

    ─ 独自技術を用いた創薬プラットフォームについて教えてください。

    川井:

    産総研より移転を受けた多様な特許技術を保有しています。独自の解析システムであるCompound-Eyes™とDrug Saver™、ネットワーク推定技術のCyber-Drug-Discovery™を用いて、適応疾患に対する化合物候補を選択する表現型ネットワークスクリーニング、化合物の作用機序の解明、層別化マーカーの探索などのサービスを提供しています。

    たとえば製薬企業がお持ちの化合物の遺伝子変動を計測し、薬効に関わるパスウェイやメカニズムの同定を行います。さらにスクリーニングを重ねることで新しい創薬につなげます。

    堀本:

    化合物の計測データをインプットすることで、適応疾患候補や標的分子などがアウトプットされる解析サービスとして提供しています。これとは真逆のアプローチとして、疾患による分子変動をインプットすると、疾患に対して逆パターンを示す化合物を探すことで、薬効を示す可能性の高い化合物候補が選択できます。

    川井:

    この技術は既存薬の新しい適応疾患を探索でき、たとえば十分な効果が証明できずシェルフに置かれたままの治療薬候補のリバイバルに役立つなど、製薬企業のニーズにマッチするリパーパシングを展開しています。

    オミックスデータと疾患情報を解析することで今までなかった薬を創り出す

    オミックスデータと疾患情報を解析することで今までなかった薬を創り出す

    ─ 従来の技術にはない独自性や強みは何でしょうか?

    堀本:

    従来の創薬ではひとつの標的分子と化合物とのペアの概念を基礎としますが、弊社の技術は複数分子群の変化するパターンに基づいています。この概念に基づいて特許を取得した独自のアルゴリズムによる解析技術が強みであり、ビジネスとして展開しているのは弊社だけかと思います。

    また、リン酸化計測に特化したタンパク質アレイを製造して、そのデータの解析まで一体化したPhospho-Totum™を独自に開発しました。研究目的に沿った形にアレイ自体をデザインしていることと、計測するだけではなくそのデータを解析するソフトウェアを一体化することで差別化を図っており、たとえば、試料を計測・解析して、抗がん剤候補として注目されるキナーゼ阻害剤の標的分子や不活性化パスウェイといった解釈の部分までご提供しています。

    川井:

    疾患の原因が単一の分子の変動ということは稀で、複数の遺伝子変動のほか、環境や生活習慣やストレスなど多様な要因で発症するケースが多いものです。そのような疾患は治療薬の開発が十分ではなく、複数の遺伝子の変動をもとにする弊社のアプローチは、このアンメットメディカルニーズにフィットすると考えます。

    近年は、社会的にニーズの高い希少疾患に特化した独自のデータベースに取り組んでいます。希少疾患変動データベースを構築しており、これは他社にない独自性を発揮しています。現在、日本で難病・希少疾患に指定された333疾患から、このデータベースを順次拡張しています。

    堀本:

    そのデータベースから、疾患の治療薬推定や製薬会社がお持ちの化合物の適応疾患の推定を行う、希少疾患に特化した解析ワークフローもあわせて開発しました。

    難病・希少疾患に特化した解析サービスを提供

    難病・希少疾患に特化した解析サービスを提供

    ─ 共同研究の事例を教えてください。

    川井:

    これまでに金沢大学医学部と泌尿器癌、慶応大学と老化関連、徳島大学と希少消化器癌で協業を開始しております。大学がお持ちの独自の疾患遺伝子情報にアクセスでき、そこから治療薬候補を選定して創薬のシーズを取得することを目標に進めています。金沢大学とはSO-001と名付けたパイプラインが成果となっており、共同研究から最終的に我々独自のパイプラインとして立ち上げていきたいと積極的にブラッシュアップに取り組んでいます。

    製薬企業ができないことにチャレンジするのがベンチャーの社会的役割

    製薬企業ができないことにチャレンジするのがベンチャーの社会的役割

    ─ ベンチャーとして大事にしたいこだわりは何でしょうか?

    川井:

    私の座右の銘は、あるゴルフプレイヤーの言葉「不可能なことを想像してどうやって達成できるか考えよ」です。ベンチャーにも同じことが言えると思っています。製薬企業がトライできない技術的な挑戦は、ベンチャーが社会的な役割として挑まなければなりません。どういう戦略でいかにゴールにたどり着くか思慮を深めるところだと考えています。

    一例を挙げると、モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)のワクチンです。知識を持つ人間からしたら不安定なmRNAが薬になるなんて考えられないことでした。彼らのチャレンジが世界を変えたわけですから、同じベンチャーとして社会の要請に応えていくというのが私のスタンスです。

    堀本:

    私もまったく同感です。アカデミーにいた頃は論文を執筆するときも世の中にないものをひとつでもつくろうという気概がありました。今も同じく社会実装できるもの、つまり今までにない薬をつくるという気持ちでビジネスに取り組んでいます。

    昔からよく言われる「Difficulty fascinated me=困難が私を魅了した」ということを信条としてきて、これからも変わらず引き続きやっていく所存ですので、そうした我々のこだわりを粋に感じていただけたら幸いだなと思います。

    ─ 今後の事業展開における課題と展望を教えてください。

    堀本:

    創薬においては臨床開発と言われる治験に向かう段階があります。ここをクリアしないと薬として世に出すことができませんから、社内メンバーをはじめ製薬企業の皆様の知見や経験を結集して取り組んでいきたいと思います。

    技術的な面では、製薬企業の皆様の生の声をお聞きできるようになり、私自身も創薬プロセスへの理解が深まって、事業として成果が得られるようになってまいりました。他とは違う独自のアプローチで継続的に新薬候補を見つけて磨くことができます。そのポテンシャルを製薬企業に納得していただくためには、やはり自社で薬を作ることできることを示さないといけません。創薬シーズ発見の成果を提示できれば解析技術も信用いただき、ビジネスとして良い方向に進んでいくと考えております。

    川井:

    創薬シーズが獲得できてきましたので、その種が花開いたときの魅力や将来の価値はどれくらいか、育てる期間や費用はどれほどかを精査し、公的機関や投資家の方にしっかり説明して、資金調達・技術開発・人材確保を進めていきます。

    また、AI活用の技術開発と実装があらゆるシーンで進められています。これは創薬が情報産業であることを考えると必然で、製薬企業とIT企業や我々ベンチャーとの様々な協業が多発し、今後ますます市場は拡大していきます。将来的には製薬企業で内製化されていくことも予想されるため、今後はコア技術から新たなサービスの創出と独自のデータベースの拡充により、優位性を維持し続けたいと考えております。

    ※本記事内容は令和4年3月31日現在のものです。

    ソシウム株式会社

    ソシウム株式会社
    〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町17番1号
    日本橋ロイヤルプラザビル7階
    https://socium.co.jp/ja/

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