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技術資料2007

技術資料:
概要調査の調査・評価項目に関する技術資料
Technical Report on the Features for Preliminary Field Investigations of HLW Geological Disposals

 

この技術資料は,地層処分の閉鎖後の安全確保のために必要な調査で,概要調査において実施可能な調査とその評価,及びそれらの基礎となる科学的知見と調査の品質保証について,安全規制の視点から述べたものである.

最終処分施設建設地の立地選定は,文献調査,概要調査,精密調査の3段階の調査を通して行なわれる.特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(特廃法)に従うと,はじめに行なわれる文献調査では,地震等の自然現象による地層の著しい変動の記録がなく,かつ,将来にわたってそれらが生じるおそれが少ないと認められること等が,既存の文献により確認され,それを受けて概要調査地区が選定される.この技術資料で取り扱う概要調査は,文献調査の次に行なわれる調査で,初めて現地からのデータが取得される調査である.概要調査では,ボーリング調査,地表踏査,物理探査等が実施され,最終処分を行おうとする地層およびその周辺の地層が安定していること,坑道の掘削に支障がないこと,地下水の水流等が精密調査段階で建設される地下施設に悪影響を及ぼすおそれが少ないこと等が確認され,それを受けて精密調査地区が選定される.概要調査に関して特廃法に書かれている地層の安定性の確認は,最終処分施設の閉鎖後の長期安全確保において最も重要な事項の一つである.また,概要調査におけるもう一方の課題である坑道掘削への支障の有無の確認と地下水流の影響評価は,施工の確保のために重要な事項である.

閉鎖後の安全確保と施工の確保は,最終処分施設建設地のサイト選定にあたりともに重要な課題であるが,この技術資料では安全規制の視点から重要な前者,すなわち閉鎖後の安全確保に関して,概要調査で実施可能な調査及び現在の科学的知見から合理的に判断できる評価基準等について述べる.地層処分における閉鎖後の安全評価事項は,経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)により国際FEPとしてまとめられている.この技術資料ではこの国際文書に依拠するとともに,地殻変動の顕著なわが国の地質の状況を考慮して,特廃法との関連で概要調査において評価すべき長期変動にかかる事項について検討する.また,安全評価の対象となる最終処分施設の地質環境について,地下水シナリオによる安全評価を想定した場合に,概要調査において行なうことのできる調査及び解析について併せて検討する.

この技術資料は,産業技術総合研究所深部地質環境研究センターが,原子力安全・保安院から委託を受けた「地層処分にかかる地質情報データ整備」の研究(平成13‐18年)の一環として作成したものである.地層処分の規制当局により今後策定されるであろう調査のガイドラインの検討に資することができるように,地層処分の安全規制に関する基本的事項が述べられている総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会の報告書と整合性を保つように編集を行なった.また,原子力安全・保安院からの委託研究は,原子力安全委員会の重点研究計画の中にも位置付けられていたので,この技術資料が原子力安全委員会による環境要件の策定にも資することができるように,これまでに公表されている原子力安全委員会の報告書を踏まえて,概要調査の調査及び評価についての検討を行なった.

この技術資料の作成にあたり,平成17-18年度に上記委託研究の評価委員会において,地層処分及び地質分野の専門家の方のご意見をお伺いした.委員の方には技術資料全体についてご審議をいただいたほか,特に第2章,第3章及び第5章については最終原稿のレビューをしていただいている.委員の方からのコメントは,それぞれの章の後にまとめて掲載した.

委託研究評価委員会委員(敬称略)
主査     鹿園直建 慶応義塾大学
委員     川上 泰 原子力安全研究協会
       河村秀紀 株式会社大林組
       竹村恵二 京都大学
       田中和広 山口大学
       中山真一 原子力研究開発機構
       山崎眞一 原子力安全基盤機構
オブザーバー 齋藤茂幸 原子力安全基盤機構

この技術資料をまとめるにあたり,常日頃ご指導を賜っている原子力安全・保安院放射性廃棄物規制課の皆様,原子力安全基盤機構放射性廃棄物評価室の皆様,原子力研究開発機構安全研究センターの皆様及び上記委託研究評価委員会の委員の皆様に厚く御礼申し上げます.

平成19年3月19日

産業技術総合研究所深部地質環境研究センター
笹田政克


目次

はじめに

  1. 技術資料作成の目的
  2. 安全規制への対応
  3. 技術資料の構成
  4. 技術資料の編集方針

調査・評価項目の設定

  1. はじめに
  2. 要件のレビュー
    1. 第2次取りまとめのサイト選定要件
    2. 特廃法の要件
    3. 環境要件
    4. 長期変動に関する要件設定に共通する基準
  3. 国際FEPと「地質及び気候関連事象」
    1. 国際FEP
    2. 「地質及び気候関連事象」
  4. 長期変動に関する調査・評価項目,評価・考慮事項設定の考え方
  5. 長期変動に関する概要調査の調査・評価項目
    1. 侵食・堆積及び海面変化
    2. 地震活動
    3. 火山・マグマ活動
    4. 深部流体
    5. 泥火山
    6. マスムーブメント
  6. 地質環境に関する調査・評価項目
    1. 調査・評価項目の設定の考え方
    2. 地質環境

調査・評価項目に関する科学的知見

  1. はじめに
  2. 将来予測の手法
  3. 侵食・堆積及び海面変化
  4. 地震活動
  5. 火山・マグマ活動
  6. 深部流体
  7. 泥火山
  8. マス・ムーブメント
  9. 人工バリアの設置環境

調査の進め方

  1. はじめに
  2. 長期変動(外的要因)の調査
    1. 侵食堆積活動及び海面変化の影響
    2. 地震活動
    3. 火山・マグマ活動
    4. 深部流体
    5. 泥火山
    6. マス・ムーブメント
  3. 地質環境の調査
    1. リモートセンシング
    2. 地形調査(地形測量含む)
    3. 地質調査(土壌調査・河川底質調査含む)
    4. 物理探査
    5. 水文調査・気象観測
    6. 地温調査
    7. 掘削調査
    8. 資源調査
    9. 海域調査
    10. モニタリング
    11. 室内試験・測定
  4. 地下水システムの解析と概念モデルの構築
    1. 基本的な地質構造の枠組みのモデル化
    2. 浅層地下水系と涵養域・流出域
    3. 浅層地下水系-深層地下水系の関係およびその解析
    4. 地下水および溶存種の起源
    5. 地下水の年代測定
    6. 水質形成プロセスの解析
    7. 概念モデルの構築

概要調査における品質保証

  1. はじめに
  2. 米国,スウェーデンの地層処分事業における品質保証
  3. IAEA(国際原子力機関)の原子力施設に対する品質保証基準
  4. 日本の地層処分事業に期待される品質保証
    1. 品質保証の基本概念
    2. 品質保証の実施・規制機関
    3. 概要調査における品質保証項目(案)
    4. 注意すべき事項

あとがき

付録

  • 地質及び気候関連事象
  • 国際FEP(仮訳)