受 賞

2021年度~2018年度 2017年度 2014年度 

大上隆史主任研究員が2020年度日本地震学会論文賞を受賞

地震災害予測研究グループの大上隆史主任研究員が2020年度日本地震学会論文賞を受賞しました.同賞は,雑誌「地震(学術論文部)」,「Earth, Planets and Space」あるいは「Progress in Earth and Planetary Science」に発表されたすぐれた論文により,地震学に重要な貢献をしたと認められる者を対象とした賞です.


受賞対象論文
題目:角田・弥彦断層海域延長部の活動履歴ー完新世における活動性と最新活動ー
著者:大上 隆史・阿部 信太郎・八木 雅俊・森 宏・徳山 英一・向山 建二郎・一井 直宏(2018)
掲載誌:地震第2輯,第71巻,63-85頁.https://doi.org/10.4294/zisin.2017-9
概要:この論文では,長岡平野西縁断層帯の北端を構成する角田・弥彦断層の海域延長部を対象として,その正確な位置・形状を明らかにし,活動性に関するパラメータ(平均上下変位速度,最新活動を含む活動履歴,1回の上下変位量)を精度よく解明しました.地震災害の予測・軽減のために,沿岸海域に分布する活断層の位置形状を正確に把握し,それらの断層から発生する地震の規模や発生の可能性について評価することが求められています.そのため,文部科学省では委託事業「沿岸海域における活断層調査」・「内陸及び沿岸海域における活断層調査」を通じて沿岸海域の活断層調査を推進しており,本論文のデータはその一環で取得されました.IEVGニュースレター2018年8月号でご紹介しましたように,海域では陸域活断層の調査のように地形・地質を直接的に観察できないため,船上から音波探査やコアリング等の調査を実施します.本論文では,調査海域の地質に応じて複数の高分解能音波探査を併用して地質構造を明らかにし,コアリング調査・海上ボーリングデータから堆積環境・堆積年代を求め,これらのデータを対象にバランス断面法を含む総合的な解析を実施することにより, 過去の断層活動により形成された緩やかな崖(撓曲崖)を構成する地層から高い信頼性・精度で活動性に関するパラメータを取得できることを実証しました.本論文の成果について,地震災害予測の精度向上に貢献する重要な知見を得たことに加えて,現状で考え得る調査・解析手法を網羅した研究を展開して今後の沿岸海域活断層調査のスタンダードを示したものと評価されました.

 

藤原 治 副研究部門長が令和2年度産総研論文賞を受賞

当研究部門 藤原 治 副研究部門長が令和2年度産総研論文賞を受賞しました.
受賞対象は下記の論文で,地質情報研究部門平野地質研究グループの佐藤善輝主任研究員との共同受賞です.

受賞対象論文
題目:Tsunami deposits refine great earthquake rupture extent and recurrence over the past 1300 years along the Nankai and Tokai fault segments of the Nankai Trough, Japan.
著者:Fujiwara, O., Aoshima, A., Irizuki, T., Ono, E., Obrochta, S.P., Sampei, Y., Sato, Y. and Takahashi, A
掲載誌:Quaternary Science Reviews, 227, 105999.
概要:この論文は、静岡県西部の河川改修工事の現場で発見した津波堆積物を題材にしています。最大の成果は、大きな津波をともなう東海地震が7世紀末と9世紀末にも起きていたことを津波堆積物から証明したことです。南海地震は684年と887年に発生したことが史料から分かっていましたが、東海地震については確実な記録がありませんでした。この結果、南海トラフ巨大地震の研究において長年の課題であった東海地震と南海地震の発生タイミングを過去1300年間にわたって解明できました。特に、887年仁和地震は、同じ日に東海地域を含む広い範囲で強い揺れを感じたという史料の記述に基づいて、東海地震も同時に発生した可能性が指摘されていましたが、東海地震発生を判断する決め手となる津波の情報がありませんでした。今回、津波の証拠が得られたことで、887年仁和地震は東海・南海地震が同時発生した超巨大地震であったことが証明されました。684年の南海地震と7世紀末の東海地震が同時に起きたかどうかは分かりません。
この成果については新聞、テレビで多くの報道がされ、一般向け科学雑誌や書籍等にも写真入りで掲載されました。産総研においては、研究成果を論文発表でとどまらず、その意義を社会に広く伝え、さらに南海トラフ地震の長期評価という国の施策へも貢献するものであることが受賞の主な理由となりました。
この発見には活断層・火山研究部門News Letter 2020年6月号(https://unit.aist.go.jp/ievg/katsudo/ievg_news/vol.07/vol.07_no.02.pdf)でも紹介したように、地元の高校の地学クラブの活動など様々な偶然が重なっています。科学的成果もさることながら、こうした地域との連携が生んだ研究成果と言う点も評価されたと考えています。

 

矢部 優研究員が2019年度日本地震学会論文賞を受賞

当研究部門地震地下水研究グループ矢部優研究員が2019年度日本地震学会論文賞を受賞しました.
日本地震学会論文賞は,「地震(学術論文部)」,「Earth, Planets and Space」あるいは「Progress in Earth and Planetary Science」に発表されたすぐれた論文により,地震学に重要な貢献をしたと認められる者を対象とした賞です.

受賞対象論文
題目:Variations in precursory slip behavior resulting from frictional heterogeneity
著者:Yabe, S.(矢部 優)and S. Ide(井出 哲,東京大学)
掲載誌:Progress in Earth and Planetary Science(2018)5:43 DOI: 10.1186/s40645-018-0201-x
概要:断層上の摩擦不均質が巨大地震の核形成プロセスにどのような影響を与えるかを数値計算により調査した結果,摩擦パラメーターの分布の仕方によって様々なタイプの核形成(活発な前震活動を伴うものや,活発なスロースリップを伴うもの,ほとんど前駆的な活動を伴わないものなど)を再現できることを示した.本研究の示す地震の成長・拡大過程は地震のスケーリングという震源物理の根本的問題の理解に一つの道筋を示している.

参考リンク:
公益社団法人日本地震学会,2019年度日本地震学会賞,論文賞,若手学術奨励賞,技術開発賞受賞者の決定について(2020年5月1日掲載)

 

海溝型地震履歴研究グループ 松本弾主任研究員の論文がIsland Arc誌(IF=0.889)の2018 Most Download Awardを受賞しました.

この賞は,2012年から2016年の間にIsland Arc誌に掲載された論文のうち,2017年に最もダウンロードされた論文に与えられるものです.

Dan Matsumoto, Yuki Sawai, Koichiro Tanigawa, Osamu Fujiwara, Yuichi Namegaya, Masanobu Shishikura, Kyoko Kagohara, Haruo Kimura (2016)

Tsunami deposit associated with the 2011 Tohoku-oki tsunami in the Hasunuma site of the Kujukuri coastal plain, Japan Volume 25, Issue 5, pp 369–385
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/iar.12161
概要:千葉県九十九里平野中部の蓮沼海岸周辺において,2011年東北地方太平洋沖地震による津波堆積物を対象に層厚変化や粒度,堆積構造などの特徴を調査した結果,遡上イベントに対応した2~4つの級化ユニットがみられることを明らかにした.これにより,今後地層から古津波堆積物を正確に識別するための基礎的なデータを示した

地質変動研究グループ 大坪誠主任研究員の論文3編が,Island Arc誌(IF=0.889)で,最近掲載された論文のうち最もダウンロードされた論文ベスト20に入りました.

2016-2017に掲載された論文のうち,online出版後12ヵ月で最もダウンロードされた論文のひとつということで,関連分野へのインパクトの大きさを示すものです.

Ayumu Miyakawa, Makoto Otsubo (2017)

Evolution of crustal deformation in the northeast-central Japanese island arc: Insights from fault activity
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/iar.12179
[408 downloads.]
概要:我が国の活断層および地質断層において,その場の応力状態と断層姿勢の関係から活断層および地質断層の活動性について検討した.この成果は,現在の応力状態の下での10万年~100万年スケールで断層が非活動的から活動的に変化する可能性を示すもので,断層活動を含む地殻変動の時間的進化の理解を深めるものである.

Makoto Otsubo, Ayumu Miyakawa, Ryoji Kawasaki, Katsushi Sato, Asuka Yamaguchi, Gaku Kimura (2016)

Variations in stress and driving pore fluid pressure ratio using vein orientations along megasplay faults : Example from the Nobeoka Thrust, Southwest Japan
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/iar.12155
[384 downloads.]
概要:宮崎県延岡衝上断層において,石英脈の姿勢情報から沈み込み帯巨大分岐断層の地震サイクルにおける断層周辺の間隙流体圧を推定した.巨大分岐断層活動時期には断層周辺では間隙流体圧が非常に高くなって断層が非常に滑りやすい状態であった可能性が明らかとなった.これらの結果は,巨大分岐断層の運動メカニズムの理解を深めるものである.

Ryoji Kawasaki, Mari Hamahashi, Yoshitaka Hashimoto, Makoto Otsubo(corresponding author), Asuka Yamaguchi, Yujin Kitamura, Jun Kameda, Yohei Hamada, Rina Fukuchi, Gaku Kimura (2017)

Temporal stress variations along a seismogenic megasplay fault in the subduction zone: An example from the Nobeoka Thrust, southwestern Japan
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/iar.12193
[264 downloads.]
概要:宮崎県延岡衝上断層へのボーリング掘削で得たコア試料を切る小規模断層群から沈み込み帯巨大分岐断層の地震サイクルにおける断層周辺の応力状態を推定した.この成果は,巨大分岐断層活動前後では2011年東北地方太平沖地震のように応力状態が大きく変化する可能性を示すもので,巨大分岐断層の運動メカニズムの理解を深めるものである.