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産業技術総合研究所が創出・支援するベンチャービジネス

株式会社ナノルクス 真っ暗闇でもカラー撮影が可能!独自技術を「カラー暗視カメラ」に ~高速光デバイス技術+高速制御回路技術~

「カラー暗視カメラ」という非常にユニークな技術を持つ株式会社ナノルクス。2010年の創業以来、卓越した技術を持ちながらも実績を残せていなかったが、2015年に祖父江基史現社長を迎え入れ、再出発を果たしてからは積極的なビジネス展開で一気に注目ベンチャー企業に。世界を舞台にした活躍が期待されています。

祖父江 基史/Motoshi Sobue

祖父江 基史/Motoshi Sobue

株式会社ナノルクス 代表取締役社長。早稲田大学理工学修士。米国デューク大学経済学修士。
1989年より日本銀行に勤務。1997年からインテル、デル、BATでFinance, Sales & Marketing, Strategy などの役員を歴任。ベンチャーサポート機関のTX Entrepreneur Partnersの副代表理事も務めた。
2015年10月、株式会社ナノルクスの代表取締役社長就任。

「卓越した技術を世の中に送り出したいという想いで再スタート」

「卓越した技術を世の中に送り出したいという想いで再スタート」

― 祖父江社長は2015年10月に就任されました。その経緯を教えてください。

祖父江基史さん(以下、祖父江):

株式会社ナノルクスに出会ったのは、私がベンチャーサポート機関のTX Entrepreneur Partnersの副代表理事を務めていた時でした。「この技術を世の中に送り出したいのだけれど…」と技術者から相談を受けたのが最初です。

当社の創業は2010年で、当初から卓越した素晴らしい技術を持っていましたが、数年経過してもなかなか実績を上げられず、資金繰りの面でも厳しい状態にありました。特許や技術的には現在と同じものがありましたが、それを顧客に届けることができていなかったのです。

技術の生みの親でもある永宗(永宗靖さん、現技術担当取締役)と出会い、彼から「本気でこの技術を立ち上げたい」という気概を感じたことで一緒にやる価値があると判断し、社長を引き受ける決断をしました。ある意味、この会社はそこで再スタートを切ったという形です。

― 思い切った決断の背景には何があったのですか?

祖父江:

「赤外線カラー暗視撮影」の技術は非常に特徴的で分かりやすく、なおかつ唯一のものであることに魅力的に感じました。技術が良くてやる気があれば、おそらく何とかなるだろうという考えもありました。

企業をサポートするという話はよく聞きますが、口先だけのサポートでは世の中は動かないですし、そういう人がたくさんいても、種がない畑に肥料ばかり撒いているようなもので、なかなかベンチャーは育ちません。

私も前身の機関では「がんばれ、がんばれ」と応援する立場でしたが、応援団だけいてプレーヤーがいなければどうしようもないという想いもありました。自分が飛び込んでやらないといけないと感じていたのです。私がここで何か面白そうなことをしていれば、仲間も見つけられるのではという期待もありました。

「好奇心から生まれた可視光と近赤外線の相関関係を利用した技術」

「好奇心から生まれた可視光と近赤外線の相関関係を利用した技術」

― 「赤外線カラー暗視撮影」技術について教えてください。

祖父江:

技術担当取締役の永宗は、もともと半導体や光の研究をしていました。そしてたまたま好奇心から近赤外線の領域を見始めて、可視光と近赤外線との関係に何か面白い関係はないかという研究を始めたそうです。そこで、暗闇で撮る白黒の画像に色が付かないかと試しに撮影したところ、何か絵が撮れた。ここに何かネタがあるかもしれないと思ったのがきっかけです。

カラー暗視の原理は、可視光(RGB)と近赤外線の相関関係で説明できます。青い物は、相対的に近赤外線のIR2という波長域の光を反射する傾向があり、同様に緑はIR3、赤はIR1という関係性があります。物体の可視光と近赤外線の反射域に、このようなある程度の相関関係があり、その関係性を利用して目に見えない近赤外線から可視光域の波長を推計するというものです。

この技術は特許権(登録済み)を保有し、国内では産総研と共有(50%)かつ独占的実施権を確保しているもので、海外では自社で権利確保を行っています。また、カラー化するロジックの基本特許で、迂回技術をシャットアウトしています。

― この技術は、どのような分野や製品への利用が見込まれているのでしょうか。

祖父江:

「赤外線カラー暗視撮影」は、カメラの上に投光器を付けて近赤外線を出し、物に当てて反射して返ってきたものを受けて画像にします。近赤外線は人の目には見えないので、カメラからは何も出していないように感じられます。

光を分ける技術としてシングルセンサー方式を利用すれば、従来のカメラの構造を変更せずにカラー画像が表現でき小型化も可能で、投光器を強力にすれば500m以上遠くの物の画像も撮れます。従来のカメラとの違いはイメージセンサーのみとなり、色再現は近似値ですが、カラー化することで人や物に対する認識力を大幅に改善することができます。

私たちは、カラー暗視の市場が2020年には5,000億円規模に拡大すると見込んでいます。これは2015年比4倍の成長ですが、トンネルや高速道路、河川、一般道路、鉄道、警察などの社会インフラ、警備や車、医療用カメラなどの産業部門、見守りや携帯電話などの消費者部門にこの技術が利用された製品が拡大していくと予想しています。

従来の赤外線暗視撮影

⾚外線カラー暗視撮影

「技術とビジネス、そして人が揃ってベンチャー企業は次のステップへ」

「技術とビジネス、そして人が揃ってベンチャー企業は次のステップへ」

― 技術はもともと存在したのに、世に送り出せなかった理由は何だったのでしょう。

祖父江:

製品性能とビジネスの両面に問題がありました。製品性能の面では、カラー暗視を実現するための優れた近赤外線の分光特性を持つイメージセンサーをいかに作るかという製造面の課題です。そしてビジネスとしては、どのような顧客ニーズに対してどういう製品を作り上げていくのかということです。

ただ、これをやり遂げるのは簡単なことではなく、顧客のニーズを探り当てるとともに、製品化するためには半導体を加工しなければならず、これには多くの資金が必要ですし、加工も非常に難しいものです。実装に関しては協力会社の関心を得て開発していかなくてはならず、実に大きなチャレンジが必要でした。

― 祖父江社長が就任された後、どのような取り組みを進められたのですか?

祖父江:

いろいろな紹介も受けましたが、映像、監視カメラ、車などの関連分野に関して、自分のネットワークを活かせたことが大きかったと思います。「赤外線カラー暗視撮影」のニーズはそれらの分野にあり、人のつながりがどんどんできていったことで事業化のイメージが持ててきました。

また私は外資系での勤務経験がありましたので、海外に行くことに不安がなかったことも大きいと感じています。現在、ほとんどの顧客候補やパートナー企業は海外の会社です。海外のお客様はすぐ決断してくれるので、割合に短期間でビジネス開拓ができました。

昨年台湾トップメーカーのASUS社からの出資や共同開発の合意を得た際も、先方がこの技術に興味を持たれていると聞いて私が訪問した際に、会長が90分で即決していただけたということがありました。

カラー暗視カメラ

イメージセンサー

メッセージ

― 今後の展望をお聞かせください。

祖父江:

社員はまだ8名の会社ですが、非常に優秀な技術者が集まってくれています。各分野に精通した一流の人間が集結したこのチームは会社の一番大きな資産であると考えています。

この技術を世の中に出し、多くの人に使っていただけるということが最終的なゴールだと思っています。そのゴールに、社員が力を合わせて向かっていきたいと思います。

※本記事内容は平成30年2月19日現在のものです。

株式会社ナノルクス
〒305-0047
茨城県つくば市千現2-1-6
http://www.nanolux.co.jp

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