TN9 高密度炭素状物質の製造法

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内容の要約

 合成樹脂や瀝青質の炭素化方法において、ハロゲン化炭素化合物を炭素化促進剤として加えることにより、比較的低い温度を用いて合成樹脂や瀝青質から高密度炭素状物質を得る方法を開発した。

 一般に、有機化合物を炭素化すると耐熱性、耐薬品性の優れた緻密な炭素状物質が形成される。これらの炭素状物質はその特性を利用して顔料、充てん材、吸着材あるいは繊維などとして使用される。このような炭素状物質には、無定形炭素、活性炭、炭素繊維、グラファイトなどがある。

 有機物質の炭素化反応は熱的作用により縮合して次第に多環芳香族巨大分子に変化し、最終的に炭素を主体とした構造の物質が形成される。このような有機化合物の炭素化は熱分解反応が活発に生起する500℃以上の反応温度が必要であり、結晶性の高い炭素状物質を得ようとするときには、さらに高い温度を用いなければならない。その上、有機物の種類によっては、熱分解による縮合反応の間にガス状物質と供に、取り扱いやっかいな液状物質を副生し、炭素化効率を劣化させるという欠点を伴う。

 このような有機物の炭素化に際して伴う種々の難点を克服し、合成樹脂をハロゲン化炭化水素の存在下で過熱するとき、比較的低温で良質の炭素状物質を製造しうることを見出した。

 たとえばポリエチレンと四塩化炭素を400℃で2時間反応させたばあい、メタンと塩化水素ガスを主体とするガスと炭素状物質原子の一部も炭素状物質として形成されている。

 これらのことからもフィラーをピッチや樹脂などをバインダーとして成形し、炭素成形品を得ることができる。

 また、炭素化温度が低くても十分縮合度の高い炭素状物質を得ることができるので、例えば熱硬化性樹脂をあらかじめ金属表面へライニングしておき、ハロゲン化炭素を最適量加えて反応させると樹脂はそのままの形状で炭素化されるため、金属が十分耐え得る温度で炭素材をライニングすることができる。

 これらの炭素化促進剤の使用量は、原料の性状、特に分子構造中に存在する水素含量、酸素含量、ハロゲンの種類及び含量、あるいは使用されるハロゲン化炭素化合物のハロゲン含量や熱的安定性などにより一定しないが、通常炭素化用原料の重量当たりおよそ100〜200%の範囲である。ハロゲン化炭化水素合成樹脂を炭素化用原料として用いるといきは反応の進行とともにハロゲン化水素が生成するので、ハロゲン化炭化水素の使用量を他の合成樹脂の場合よりも少なくすることができる。反応温度はハロゲン化炭素化合物の分解温度に依存するが、おおよそ180〜500℃の範囲が用いられる。また反応系は常圧でも加圧下でもよいが、通常、例えば、10〜250s/p程度の加圧したで有利に行うことができる。

 このような条件のもとで、数分ないし数時間炭素処理を行うと、炭素化用原料は、塩化水素および炭化水素を主体とするガスを発生しながら炭素化し、緻密な組成の炭素状物質に変化する。

詳しい内容

 この方法において炭素化用原料として用いられる合成樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプデンなどのようなポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ピニリデンのようなハロゲン化炭化水素ポリマー類などの熱可塑性樹脂及び石油系アスファルト等がある。さらに瀝青質には石炭から誘導される石炭分解抽出物やタールピッチ及び石油系アスファルト等がある。また、この方法において添加使用される炭素化促進剤としては、例えば二塩化メタン、塩化ビニル、テトラフルオロエタンなどのハロゲン化炭水素化合物を挙げることができる。

 この方法により得られた炭素状物質は極めて高密度、高品質であり、従来の方法により得られたものと同じように、活性炭、吸着材、顔料、充てん材などどして用いることができる。

 次に実験について概略説明する。

 (1)試料、装置および実験方法

 試料として用いた15種類の1〜4環芳香族類ならびに炭素化促進剤として用いた5種類のハロゲン化炭素は、市販特級品(一部1級品)である。実験装置は内容積76mlのSUS32製静置式オートクレーブであり、過熱には溶融塩浴を使用した。このオートクレーブに試料5gと所定量のハロゲン化炭素を詰め、窒素置換後、2.7℃/分の昇温速度で反応温度まで昇温し、所定の時間反応を続けた。反応終了後放冷した。

 (2)生成物の処理および分析

 生成した塩化水素の量はアルカリ水溶液に吸収させて定着した。その他のガスはガスクロマトグラフィーで分析し、分析結果と全ガス量からガス生成量を算出した。固体生成物はガラス繊維製の円筒濾紙に移し、ソックスレー抽出器にてベンゼン抽出し、その不溶分を炭素状生成物として分析ならびに顕微鏡観察試料とした。炭素生成物の元素分析はセミミクロ元素分析装置を用いて行い、塩素含量は100−(C+H)%とした。比重測定はブタノール浸漬法によった。

 (3)結果

 表に実験例を示した。表中の炭素化量はベンゼン不溶分を意味する。

 特長

 合成樹脂や瀝青質物質を炭化する場合に、単純に熱分解すれば少なくとも500℃以上、あるいはさらに高温を必要とする。それに比べてこの方法は、ハロゲン化炭素化合物を炭化促進剤として加えることにより350〜400℃という低い温度で、十分高密度の炭素状物質を得ることができる。

 炭素物質の用途は、活性炭、吸着剤、顔料、繊維などが考えられる。

応用範囲

 プラスチック廃棄物の有効利用

 アスファルト、石灰分解抽出物の有効利用

特許

 ○ 高密度炭素状物質の製造法(特願)57-180662

 

表 実験例
実験番号101213
試料名ポリエチレンポリエチレンフェノール樹脂
(レゾール)
廃タイヤ赤平炭
分解抽出物
赤平炭アラビアン
アスファルト
炭素化促進剤名四塩化炭素二塩化メタン四塩化炭素四塩化炭素 四塩化炭素四塩化炭素
試料対促進剤積(g/g)30.3/47.930/47.65/3.220/31.220/31.4 5/3.27.2/4.5
反応器容積(ml)500500100500500100100
反応温度(℃)400400350400400350350
反応時間(hr)2222252
炭化物量(g)16.412.24.518.721.05.13.5
HCl生成量(g)32.420.70.315.122.92.22.0
ガス生成量(g)9.811.80.041.70.60.10.2
炭素状物密度(g/ml)*1.491.581.441.671.561.671.58
*ブタノール浸漬比重