一般に活性炭は木質系、ヤし殻および石炭など各種の有機物原料を炭化および賦活することによって製造される。炭化は、一般的に原料中の炭素、水素、酸素を不活性ガス雰囲気中で400〜700℃で加熱し、揮発分の一部分を除去(通常は残留揮発分を20〜35%)したのち、賦活に適した炭化物を調製する工程である。賦活は、炭化工程で生成した、炭化物を600〜1000℃の高温で水蒸気、炭酸ガス、空気を用い反応させ炭化物中の揮発成分あるいは、炭素原子をガス化し、主に10〜100Åの微細孔構造を発達させ内部表面横を1000m2/g以上にまでにする工程を云う。この工程によって吸着性能の優れた活性炭を得ることができる。活性炭の内部表面積、細孔分布、各種の吸着性能は、原料の種類によって大きく異なるだけではなく設定した炭化温度での保持時間などいわゆる熱履歴条件や昇温速度、各賦活温度での賦活時間、賦括ガス濃度等によって大きく異なる。またこのような実験を行うためには、均一の温度帯で反応が進行できる装置も重要である。更に、活性炭として第10改正日本薬局法(日局10)に示されている薬用炭の性能などの特性は内部表面積、細孔分布、メチレンブルー吸着量、ヨウ素吸着量どに依存するので各種原料について同一装置による製造条件と、これらの特性を研究することは工業的にも極めて有用をことである。
また、高級活性炭としての薬用炭の日局10に示す基準は従来の工業用活性炭と比戟し極めて厳密であり、上に述べた吸着性能と各種の特性のみの関連だけでは基準を充分に満足させることが出来ない。この中で一番重要な問題点は薬用炭中の強熱残分が4%以下の基準であり、従っていかに吸着性が優れても基準を充足しない。
また、現在、国内の活性炭業界は深刻な原料不足になっている。このような点も勘案してこの研究では、未利用の原料を選択し、原料選択の幅の拡大も考慮し。この研究のプロセスをブロックダイヤグラムで示した。次に得られた結果の概要を述べる。
1.原料の選択
石炭、合成樹脂および木質系を選択した。選択の理由は石炭は埋蔵量が多く安定して供給できる。合成樹脂は強熱残分がほとんどないため、薬用炭基準での強熱残分4%以下の基準に適応する可能性が大きい、また木質系は未利用のフィリピン産樹木を対象にしたが、木材は天然で再生できる唯一の資源でもあり、かつ強熱残分が少なく有用な原料と推察した。
2.炭化
イ)木質および石炭系は試作した流動炭化炉により炭化する。この方法は試料中の200〜600℃で発生する低分子物と流動化ガスに用いた空気中の酸素との反応熱のみで炭化できる省資源型の炭化方法であった。
ロ)合成樹脂系では、ポリビニルアルコールを濃硫酸で処理すると炭化物の収率は未処理時比較して約15倍の高収率で炭化物調製できる新しい炭化方法を見い出した。またこの方法で石炭を処理すると強熱残分が流動炭化炉で調製した炭化物に比べ約1/5〜1/8減少するため薬用炭の製法に適した炭化物が得られた。またポリアクロニトリルの共重合体は空気中で炭化物が調製されることがわかった。
3.賦活
イ)各種の方法で調製した炭化物は、すべて回分型の流動賦活装置で賦活を行った。回分型の流動賦活装置は透明石英製の反応管で、高温の流動化状態を直接観察できるため、均一な温度で、均一を賦活物が調製される。このため厳密な薬用炭の製法に適する方法であった。
ロ)各炭化物からの賦活物の性能でメチレンブルー吸着量、内部表面積は市版品以上の性能を有した。木質系からの賦活物は1.0Nの塩酸、石炭では硫酸処理によって調製した炭化物からの賦活物は2.0N以上の苛性ソーダーで洗浄するとすべて薬用炭の基準に適応することが認められた。
ハ)各炭化物からの賦活物のメチレンブルー吸着量と内部表面積の関係は直線関係が成立し、石炭系では石炭の種類によって直線の勾配は同じでも異なる直線を示した。木質系はすべて一つの直線に収斂した。この結果は炭化、賦活の条件よりもむしろ原料の選択が重要であることがわかった。
ニ)ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルの共重合体の炭化物からの賦活物は洗浄を必要とせずに薬用炭基準に適応した。また、定性的には強熱残分の少ない原料は薬用炭製法上では必須条件のひとつとしてあげられる。
4.高級活性炭としての応用
イ)薬用炭を芯材としてエチルセルローズを壁膜とする水中乾燥法によるカプセルは芯材の吸着性能、メチレンブルー吸着量あるいは内部表面積の約70%の吸着能を示し、かつ水中での破損率を調べた結果、微粉末の薬用炭の流出がほとんどなく、今後、吸着型カプセルとして人工腎臓用の補助吸着材などの利用を含めた有用な知見が得られた。
ロ)薬用炭にアスピリンを吸着したカプセルは、PH2〜12での溶出試験でエチルセルローズ濃度の低いほど溶出時間が早く、アスピリンはPHが大きくなるとサリチル酸の溶出量が多くなる。溶出量はアスピリンでは芯材に吸着した量の20〜23%であり、今後服用時の副作用など剤形についての知見が得られた。
I 実験方法
1.原料
原料は、木質、石炭および合成樹脂の3種類とした。木質はフィリピン産樹木9種類と、粉末活性炭の原料として使用されている日本産松を比較のため用いた。樹木はチッパーで粉砕し、さらに粉砕機で粉砕し通風乾燥機により105℃で水分含有量を10%以下に乾燥し、粒径0.2〜2.0oのものを篩分けして試料とした。表I−1にはこれらの工業分析値を示した。
次に石炭系の試料は、北海道産出の石炭化度の異なる太平洋炭、三井砂川炭(8番上層炭)、幌内炭(以後でTA、SN、Hと略記)およびインドネシア産バイドウリ炭(Bidoli)(以後IBと略記)をロータリードライヤで水分含有量を5%程度まで乾燥し粒径を2.0o以下にした。また太平洋炭を0.1〜1.0oに篩分したのち比重1.36の四塩化炭素とアセトンの混合液に入れその浮揚炭(TAAと略記)を実験に供した。表I−2、3には工業分析値を示す。
合成樹脂は、ポリビニルアルコールとポリアクリロニトル共重合体の2種類を用いた。すなわち、ポリビニルアルコールは日本合成化学社製商品名ゴセノール(以後PVAと略記)(ケン化度(mol%)あるいは)重合度の異なる6種類の試料を使用した。表I−4に各PVAの工業分析値を示した。ポリアクリロニトリルの共重合体(PANWと略記)は東邦ベスロン株式会社より提供されたが、内容は不明である。この工業分析値を表I−5に示した
試料 | 水分(%) | 灰分(%) | 揮発分(%) | 固定炭素(%) |
Apitong | 9.71 | 0.98 | 83.71 | 5.64 |
Mayapis | 12.48 | 0.03 | 80.01 | 7.34 |
Tangile | 9.97 | 0.28 | 85.24 | 4.51 |
Palosapis | 9.41 | 0.41 | 85.89 | 3.79 |
Malabayabas | 11.16 | 0.41 | 77.72 | 10.71 |
K.Bangkal | 11.68 | 0.76 | 77.18 | 10.37 |
Ipil-ipil | 21.07 | 0.28 | 71.18 | 7.74 |
Kakauate | 10.72 | 0.87 | 75.92 | 12.49 |
Coir-Dust | 15.93 | 6.44 | 53.97 | 23.66 |
Pine | 12.00 | 0.40 | 37.00 | 50.57 |
試料 | 略号 | 水分(%) | 灰分(%) | 揮発分(%) | ボタンナンバー |
Taiheiyo | TA | 5.3 | 7.90 | 45.60 | - |
Horonai | H | 2.59 | 5.49 | 46.70 | - |
Sunagawa | SN | 3.10 | 6.70 | 42.20 | 5.6 |
試料 | 略号 | 水分(%) | 灰分(%) | 揮発分(%) | 固定炭素(%) |
Taiheiyo | TA | 5.5 | 10.72 | 46.13 | 37.65 |
Taiheiyo | TAA | 5.5 | 5.34 | 49.30 | 39.36 |
Bidoli | IB | 11.7 | 3.31 | 41.95 | 43.04 |
試料 | 重合度(mol%) | 分子量 | 灰分(wt%) |
NH-18 | 99.7 | 1700 | 1.0< |
C-500 | 99.3 | 1720 | 1.0< |
KH-17 | 96.3 | 1680 | 1.0< |
NL-05 | 87.8 | 520 | 1.0< |
GH-17 | 80.0 | 1690 | 1.0< |
KL-05 | 80.0 | 490 | 1.0< |
水分(%) | 灰分(%) | 揮発分(%) | 固定炭素(%) |
1.0 | - | 59.80 | 39.20 |
2.炭化
木質および石炭の炭化装置は、試作した攪拌流動炭化炉を用いた。図I−1にはその概略を示した。炉の本体はス
テンレス製で、塔高および塔径はそれぞれ650o、150oである。炉の中心にパドル型攪拌機があり、回転速度10rpmで流動層内を攪拌する。試料はスクリューフィダーで連続的に炉内に送られる。供給速度は炉内温度に応じて自動的に制御できるようにした。試料供給ロの直下に、直径2oの孔を開孔比11.5%になるようにした目皿板が置かれ、これを通って空気が炉内に送り込まれる。流動化速度はあらかじめ試料のUmf(最少流動化速度)をもとに設定した。炉内6ケ所の温度がCA熱電対によって記録される。また流動層中心部のサーモカップルは温度制御装置に連結され、この部分の温度が一定になるようにスクリューフィダーの回転速度を調節するようにしてある。炉の外表面に電気ヒーターが巻つけてあり、空気および試料の予熱に用いられる。
炭化方法は、あらかじめ試料を塔内径の1.5〜2.0倍の静止層高になるように炉内に送入し、空気を吹き込み、試料を流動させながら予熱ヒーターで加熱した。流動層内部温度が、200℃を越えると、試料の発熱分解が生じ温度が上昇し始め400℃を越えると予熱ヒーターを止めても試料の酸化熱により炭化が進行する。系がこのような状態に達したとき、試料を連続的に層内に送り込み炭化を行った。また、炭化物はオーバーフロー菅より連続的に取り出した。流動化空気速度は経験的にUmfの約2倍とし、本実験では6.0〜9.0p/secとした。
またPVA、PANWは以上の炭化方法では収率も低く、不適当な炭化方法であるため硫酸あるいは空気中で炭化を行った。
3.賦活
賦活装置は回分型の流動酪賦活炉で内径40o、高さ600oの透明石英管で、中央部に石英製分散板を有している。分散板は穴径1.0oで開孔比10%である。温度制御は外熱ヒータで行う。図I−2にそのフローシーとを示した。賦活温度は85.0℃、賦活ガスは過熱水蒸気を用い、毎回100mlの炭化物(粒径0.5〜1.0o)を賦活した。従って水蒸気は炭化物の流動化ガスの役も兼ねている。水蒸気は一定量の純水を定量ポンプで加熱器に送り、気化させて炉内に送入した。賦活の方法は、まず炭化物を上部試料口より投入する。続いて窒素ガスを装置下部より送入し、炭化物が流動状態を保つようにその流量を調整する。次に炭化物を温度調節器によって約30分で所定の賦活温度まで昇温し、この時流動化ガスをただちに過熱水蒸気に変換する。反応終了後、再び窒素ガスに切換えて上部より挿入した熱電対保護管を引き上げることによって下部の試料受器に賦活物を得ることができる。
先に述べたように賦活ガスは水蒸気を用いたため炭化物の流動ガスの流速を求める必要がある。本実験では、炭化物量は毎回100mlであり、この量ではガスの吹き抜けが起こり、ガス流速と流動層内圧損失との関係から炭化物の最少流動化速度Umfを正確に測定できなかった。そこで反応管が透明の石英管であるため炭化物の流動化状態を直接観察し、流動層高の約1.5倍になった時の流速を用いた。このようにして求めた流速は8.4p/secであった。
4.洗浄・
賦活物を−200mesb以下に粉砕したのち3gを秤量する。ピーカーに入れ、次いで0.25、0.5、1.5、2.0の塩酸、硝酸および硫酸をそれぞれ45ml加えたのちマグネチックスタラー上で50℃、10時間、70rpmで攪拌した。ブフナー漏斗で活性炭を分離し、40〜50℃の精製水で濾液が中性になるまで洗浄した。精製した活性炭は乾燥器中110±3℃で5時間乾燥した。
5.物性試験
(1)工業分析
日本工業規格JISM−8812の石炭類の試験法に準拠し、原料および炭化物の強熱残分(灰分)、揮発分、水分、固定炭素量を測定した。かさ密度の測定はJISK−1474に従った。
(2)メチレンブルー吸着量(MB)
メチレンブルー吸着量の測定は、試料を−300meshに粉砕し0.2g秤量する。活栓付エレンマイヤーフラスコに入れ、メチレンブルー標準液(MB300r/l)250mlを加え30分振盪(290rpm)後、上澄液のメチレンブルー濃度を分光光度計により665nmで測定し、試料1gに対するメチレンブルー吸着量を計算によって求めr′/g′で表わした。
(3)内部表面積(S)
内部表面積の測定は、液体窒素温度における窒素ガスの吸着等温線を求めB.E.T式より算出した。
(4)細孔分布(10〜100Å)
細孔分は、カルロエルバ社ソーブトマチック1800型を用い、窒素の等温吸着線よりCranston Inklyの方法により半径10〜100Åの細孔分布より細孔容積を求めml/g′で表わした。
(5)細孔分布(75〜75,000Å)
75〜75,000Åの細孔分布は水銀圧入法で求めた。
(6)ヨウ素吸着量
活性炭0.2gを秤量し、5%塩酸10mlを加え2分間煮沸する。冷却後、ヨウ素試験液(K12.0gを100mlの精製水に溶解し、次いでl212.7g′を加え、精製水を1lとする)50mlを加え、5分間振盪後濾過し、濾液20mlにデンプン溶液を滴下し、チオ硫酸ナトリウム標準液1/10Nで滴定し、ヨウ素吸着量を算出して、r/gで表示した。
(7)薬用炭試験
酸洗浄により精製した活性炭は日局10の薬用炭試験法に従って性能試験を行った。
II 木質系原料
1.炭化および炭化物の物性
炭化炉における最適炭化温度を推察するために、熱天秤による全試料のTG曲線を求めた。図II−1にその一例を示した。一般的にはまず、100℃をピ−クに原料中の水分が脱離する。次いで350℃付近に最大値を有する鋭い曲線が得られたが、この曲線の面積は主に低分子化合物の揮発分量に相当する。石炭系でもこのようなTG曲線が得られており、揮発性分は一次タールと呼ばれている。一次タールは脱離する温度付近では酸素と激しく反応し、酸素の供給が充分の場合には着火燃焼する。しかし供給量を減ずると着火に至らず、部分燃焼により発熟するのでこの熱を炭化に利用することができ、炭化温度は空気の供給量または、試料の供給量を制御することにより一定に保つことができる。これに基づいて連続的に炭化を行う場合、炭化温度は揮発成分がほぼ脱離した点、すなわち図のピークを少しこえた点が適当である。このようにTG曲線から流動炭化炉における炭化温度を430℃と設定した。
本実験では送入空気量を一定とし、試料送入速度を制御し炭化温度を設定した。送入空気速度は6〜9p/sec、試料供給量は7〜8s′/hrで制御し、炉内温度は設定した炭化温度に対し、±2〜3℃の変動幅で維持することができた。表II−1には各試料の炭化条件および炭化物の収率、炭化時間およぴかさ密度を示し、表II−2には各炭化物の分析値を示した。
Malabayabas | 430 | 8 | 10.8 | 1.50 | 20.9 | 26 | 0.12 |
Kakauate | 430 | 8 | 12.3 | 1.48 | 25.0 | 18 | 0.14 |
Bakauan | 430 | 8 | 10.8 | 1.50 | 14.0 | 26 | 0.12 |
cair-Dust | 420 | 6 | 5.2 | 1.70 | 35.6 | 7 | 0.07 |
Ipil-ipil | 430 | 7 | 11.3 | 1.60 | 34.0 | 22 | 0.18 |
Mayapis | 430 | 6 | 10.5 | 1.46 | 23.3 | 19 | 0.16 |
K.Bangkal | 430 | 8 | 10.8 | 1.50 | 14.0 | 24 | 0.11 |
Apitong | 430 | 6 | 7.7 | 0.68 | 27.8 | 24 | 0.12 |
Palosapis | 430 | 14 | 17.8 | 1.86 | 10.4 | 12 | 0.08 |
Tangile | 430 | 5 | 4.36 | 0.62 | 34.2 | 16 | 0.07 |
Pine | 430 | - | - | - | 27.0 | - | 0.12 |
試料 | 水分(%) | 灰分(%) | 揮発分(%) | 固定炭素(%) |
Malabayabas | 5.00 | 2.40 | 10.20 | 82.40 |
Kakauate | 3.30 | 3.80 | 14.40 | 78.50 |
Bakauan | 2.20 | 5.10 | 20.30 | 72.40 |
Coir-Dust | 6.60 | 9.60 | 31.00 | 52.80 |
Ipil-ipil | 2.20 | 4.70 | 24.12 | 68.98 |
Mayapis | 1.18 | 1.56 | 16.01 | 81.25 |
K.Bangkal | 1.07 | 6.60 | 19.18 | 73.15 |
Apitong | 1.81 | 1.00 | 34.00 | 63.19 |
Palosapis | 7.28 | 3.87 | 18.75 | 70.10 |
Tangile | 9.42 | 1.46 | 24.90 | 64.22 |
Pine | 2.41 | 1.80 | 47.81 | 47.97 |
2.賦活条件と賦活生生成物の性能
見かけの重量減少速度は賦活温度の上昇とともに増大するが800℃以下では上質の賦活物が得られず、また900℃以上では収率も低下し、かつ内部表面積も低下するなど好ましくない領域であることが予備実験で認められたので賦活温度を850℃〜900℃と推定し、最適温度を求めるために850℃と900℃で賦活試験を行い検討した。その結果を表II−3に示した。同表は(MB)値が300r′/g′の賦活物の収率(炭化物基準%)での賦活時間を示したが、いずれも賦活温度により(S)(MB)に有意差は見られないので850℃で賦活を行った。
試料 | 温度(℃) | 滞留時間(min) | 収率(%) |
Apitong | 850 | 22.5 | 34.0 |
900 | 11.5 | 30.0 | |
Mayapis | 850 | 36.5 | 48.0 |
900 | 18.5 | 49.0 | |
Tangile | 850 | 20.0 | 24.0 |
900 | 16.0 | 18.0 | |
Palosapis | 850 | 20.0 | 22.0 |
900 | 10.0 | 35.0 | |
Malabayabas | 850 | 38.0 | 45.0 |
900 | 25.0 | 42.0 | |
K.Bangkal | 8507 | 22.5 | 40.0 |
900 | 14.0 | 37.0 | |
Bakauan | 850 | 35.0 | 39.0 |
900 | 24.0 | 41.5 | |
Ipil-ipil | 850 | 45.0 | 41.5 |
900 | 25.0 | 44.0 | |
Kakauate | 850 | 52.0 | 41.5 |
900 | 38.0 | 45.0 | |
Coir-Dust | 850 | 16.0 | 35.0 |
900 | -0 | - |
図II−2、3、4には代表例として1pil−ipil(IP)Apitong(AP)およびPine(PA)の炭化物(Cを付ける)について、賦活時間と統活物(Aを付ける)の収率、メチレンブルー吸着量(MB)および内部表面積(S)の関係を示した。
3.賦活物の洗浄
各賦活物の酸洗浄による精製を(Iの4)に従って行ない、日局10に示した薬用炭基準である強熱残分4%以下に適用する洗浄条件を求めた。図II−5に代表例としてIpil−ipilの賦活物について酸濃度と精製炭の強熱残分の関係を示した。酸濃度が高くなるに従って強熱残分は滅少し、1.0N以上で硝酸処理の1.54%wtを除き、他はおよそ0.5%wtである。この結果、洗浄用酸濃度は1.0Nが妥当であり、かつ安価な塩酸を用いる方が有効である。また也の試料もすべて上に述べた条件で日局10の基準を満たした。
次にIPCA、APCAおよびPACAを1.0N塩酸で洗浄精製した活性炭を−200meshに粉砕したのち、110±3℃で3時間乾燥する。0.02〜1.0g′を秤量し、濃度300r′/l′のメチレンブルー溶液200、300、500mlを加えたのち、振盪機の回転数(上下振盪)290rpmで4時間振盪を行ない平衡吸着量とした。活性炭を遠心分離機で分離したのち上澄液中に残存するメチレンブルー濃度(r/l)を求めた。図II−6にメチレンブルーの残存濃度(r/l)とメチレンブルー吸着量(r/l)の関係を示した。その結果、低濃度領域から高濃度領域にわたり吸着性の優れた活性炭であることがわかった。
4.精製活性炭の薬用炭としての評価
代表例としてPAC、APCおよぉIPCの賦活温度850℃、賦活時間20、30、50分での賦活物を調整し各酸濃度1.0Nで精製し、日局10の薬用炭試験を行った。その結果未処理活性炭では純度試験のPHが8.1〜9.3であるのに比較して精製炭はいずれの酸を使用しても6.7〜7.3となり、基準を満たすことがわかった。また未処理活性炭の強熱残分および酸可溶分は各試料とも基準を満たしてないが、精製によってPAC、APCおよびIPCでは0.15〜0.57(%)程度まで減少し基準を十分に満たしている。
南洋材の未処理活性炭中の酸可溶分が多いのはカルシウム含有量が多いことが一因であると考えられる。シアン化合物、硫化物、硫酸塩、ひ素および重金属含有量は未処理炭でいずれも基準を満たしている。また吸着力試験では、未処理活性炭および精製活性炭とも大きな差は認められず、基準をすべて満たすことがわかった。
III 石炭系原料
1.炭化物の調製と性状
炭化物の調整は木質系と同じように(I)に示した流動炭化装置によって行った。炭化温度は褐炭系の太平洋炭(TA)を除き、粘着性をもつ他の、幌内炭(H)、砂川炭(SN)は炉内で融着したため装置に原料が送入できなかった。そこで石炭の粘着性を空気酸化によって減少する性質を利用して、以下の方法によった。まず室温から300℃まで炭化を行い、これを室温下に取り出し室温まで冷却しさらに炉内で460℃および430℃で炭化した。この方法によれは粘着による障害は生じなかった。表III−1に炭化物の収率と工業分析値などを示した。この結果から、収率は木質系がおよそ30%程度であるのに対し、収率の点では有用な値を示した。この収率の高い原因としては木質系原料の揮発分がおよそ75%であるのに対し石炭は約45%であり、炭化時には脱揮発する揮発分量が木質系は多いためと推察できた。しかしながら薬用炭規格で重要な強熱残査各はかなり多く、木質系の1.0〜4.7%の値を大きく上回っていた。
試料 | 炭化温度 | 水分(%) | 灰分(%) | 揮発分(%) | 固定炭素(%) | 収率(%) | 内部表面積(m2/g) |
Taiheiyo | 600 | 2.25 | 16.15 | 17.27 | 64.38 | 47 | 51 |
Taiheiyo | 800 | 2.21 | 21.81 | 8.41 | 67.58 | 35 | 17 |
Horonai | 460 | 4.19 | 6.70 | 28.75 | 60.36 | 63 | 23 |
Taiheiyo | 430 | 1.92 | 7.50 | 32.74 | 58.29 | 80 | 22 |
2.賦活
賦活装置および方法は(I)に示した回分型流動賦活炉で行った。賦活炉の流動ガス速度は透明石英管で炭化物の流動状態を直接観察測定し、流動層高が静止層高の1.5倍になった時の流速とした。その値は10〜12p/sec程度であった。反応炉内の各炭化物の流動化ガス速度はほとんど同じであり、従って賦活時の水蒸気量は、いずれの炭化物に対してもほぼ同じ量で差し支えないことがわかった。
賦活温度800、850および900℃における各炭化物の賦活時間(θ)と炭化物の重量滅少率W/Wo(−)の関係の一例を図III−1に示した。また各賦活温度における賦活時間(θ)とメチレンブルー吸着量(MB)、内部表面横(S)との関係を図III−2、III−3に示した。MB、S値とも賦活時間とともに増加し最大値を示したのち減少する。賦活物の細孔分布を図III−4に示した。細孔容積は0.8〜2.0ml/g′であり、炭化物の1.5〜3.0倍に達し、市販品の0.38〜0.6ml/g′を上回っている。
3. 薬用炭としての評価
薬用炭の基準に適合する精製条件を検討するため(Iの4)に従って各賦活物の精製を行った。精製にあたっては、賦活物中の強熱残分がおよそ20%以下の賦活時間で得られた活性炭を実験の対象とした。これらを1.0〜4.0Nの塩酸および苛性ソーダで洗浄したのち精製活性炭の強熱残分を求めた。この結果、いずれの賦活物も日局10に示した強熱残分の4%以下に適合しなかった。したがって石炭から薬用炭の製法には強熱残分が少なく、かつ吸着性能の優れた賦活物を調製する賦活条件の設定と、さらに原料の選択を行わなけれはならない。
4. 石炭の硫酸処理
そこで、比軟的灰分の少ない石炭を選び硫酸処理を試みた。まず原料としてインドネシア産Bidoli炭(IBと略記)と太平炭を比重分離したもの(TAA)を実験に供した。表III−2に示したTAA、IBの炭化物を、あらかじめ粒径0.5〜1.0oの試料を内容積1,000mlの円筒型セパラバルフラスコに濃硫酸を入れマントルヒーターで170℃に加温した。攪拌機を用い30rpmで攪拌しながら試料を徐徐に加えた。試料と濃硫酸の量は重量比1:1〜1:7で行い生成物の収率がほぼ一定になった1:4で実験を行った。発生する亜硫酸ガスを含むガスは1.0N苛性ソーダ水溶液で処理した。試料重量は1回の実験で100g´とした。反応温度は150℃、反応時間は前記のガスの発生が認められなくなる時間とし、TAA:5時間、IB:3.5時間(以後生成物はTAAS、IBSと略記)反応終了後、容器中の生成物を室温まで冷却したのち濾別し、加温した精製水で溶液が中性に浸るまで洗浄した。
試料 | 略号 | 水分(%) | 灰分(%) | 揮発分(%) | 固定炭素(%) |
Taiheiyo | TA | 5.5 | 10.72 | 46.13 | 37.65 |
Taiheiyo | TAA | 5.4 | 5.34 | 49.30 | 39.36 |
Biodoli | IB | 11.7 | 3.31 | 41.95 | 43.04 |
試料 | 略号 | 水分(%) | 灰分(%) | 揮発分(%) | 固定炭素(%) |
Taiheiyo | TAAS | 20.40 | 2.01 | 34.42 | 43.17 |
Biodoli | IBS | 18.92 | 1.41 | 35.54 | 44.13 |
Biodoli | IBC | 9.46 | 4.97 | 32.59 | 52.98 |
その後、乾燥器で150℃、12時間乾燥した。この時のTAAS、IBSの収率は97.8、90.4%(wt)であった。表III−3にはTAAS、IBSの工業分析値を示した。ここで注目すべき重要な点は、TAAS、IBS中の強熱残分が2.01、1.41%となり、このことはすでに性能の優れた薬用炭が得られている木質系炭化物の強熱残分1.0〜1.8%に近い値であり、従って本論での石炭を濃硫酸と反応させて得られた生成物は薬用炭の製法に適した原料と堆察した。
TAAS、IBSおよびIBCの賦活温度850℃、賦活時間30、30、90minでの各賦活物を2.0N塩酸または苛性ソーダ液により洗浄を行い得られた精製炭について日局10の薬用炭試験を行った結果、PHは各未処理炭では10〜11で、木質系よりややアルカリ性が高いが、塩酸洗浄の各精製炭は6.4〜6.8、苛性ソーダ溶液による洗浄では6.8〜7.0となり、いずれも基準を満たすことがわかった。酸可溶分は、各未処理炭とも基準値の3%を越えるが精製ではいずれの洗浄でも基準を充分満たすことがわかった。強熱残分は未処理炭では基準の4%を大きく上回っているが、精製炭は塩酸洗浄でIBSAが3.48%と基準を満たした。しかしTAASA、IBCAは4.54、9.62%の値を示し、基準を満たすことができなかった。また苛性ソーダ溶液での洗浄では、TAASAおよびIBSAは3.20、1.80%となりIBCA4.74%であることから2.0N以上の苛性ソーダ溶液での洗浄ではTAASA、IBSAは基準を満たすことがわかった。
すなわち硫酸処理の方法は、得られる炭化物中の強熱残分が木質系に近い値まで減少し、かつ通常の炭化工程が不必要であり、賦活時間も短縮され、熱経済的にも有用な方法である。さらに賦活物の性能も優れており、Bidoli炭太平洋石炭等からも薬用炭が調製される見通しが得られた。
IV 合成高分子系原料
1. ポリビニールアルコール(PVA)の炭化
PVAのTG曲線によると、およそ200℃付近から急激な重量減少が起こり500〜600℃では、その90%以上が熱分解によって揮散してしまう。その曲線上の600℃での炭化物収率は4.3〜9.0wt%と非常に低い値であった。したがってPVAを単に加熱するだけでは活性炭原料である炭化物を高収率で得られないことがわかった。よって、各種の薬品を添加した場合のTG曲線上より求めた炭化収率を表IV−1に示した。このように薬品添加の効果は著しく、特に濃硫酸添加の効果は著しく未添加PVAに比べて約15倍の炭化収率であった。
酸(5wt%) | 炭化物収率(wt%) |
HCl | 19.02 |
H3PO4 | 27.30 |
H2SO4 | 63.10 |
ZnCl2 | 32.70 |
前述の結果を考慮して石炭を濃硫酸と処理した同じ装置を用いPVAと濃硫酸の反応を行った。まず、内容積1,000mlの円筒型セパラバルフラスコに濃硫酸を入れマントルヒーターにより170℃に加温した。攪拌機を用いて30rpmで攪拌しながらPVAを徐々に加えた、PVAと濃硫酸の重量比は1:1〜1:7で行った。発生する亜硫酸ガスを含むガスは1.0N苛性ソーダ水溶液で処理した。反応時間は前記のガスの発生が認められなくなるが全試料とも約5時間であるので、この時間を反応時間とした。反応終了後、容器中の生成物を室温まで冷却したのち濾別し、加温したイオン交換水で濾液が中性になるまで洗浄した。その後、乾燥機で150℃で12時間乾燥した。(以後この生成物をPVASと略記した。)生性したPVASは黒色状で、粒径1.2〜2.0o、かさ密度は0.5〜0.54g/mlであった。またPVAと濃硫酸の重量1:1〜l:7での炭化物収努は57〜62wt%であり、ここでは濃硫酸の少ない1:1での重量比で得られた炭化物を賦活用炭材とした。
試料 | 収率(%) | 内部表面積(m2/g) | 灰分(%) | 揮発分(%) |
PAN W | - | - | 0.007 | - |
PAN A | 67.9 | 110 | 0.008 | 28.12 |
PAN B | 64.3 | 130 | 0.009 | 19.00 |
2. ポリアクリロニトリル(PAN)の共重合体の熱縮合
繊維層状のポリアクリロニトリルの共重合体(以後PANWと略記する。)を1.0〜2.0oにカットしたのち次の方法で縮合を行った。すなわち、(I)に示した回分型流動賦活装置の石英製反応管の中心部に試料10g′を金網に入れ挿入し、反応管の温度230℃として、空気中で2時間および5時間保持し、空気量は自然通気とした(以後生成物はPANA、PANBと略記した)。
PANA、Bの収率分析値などを表IV−2に示した。炭化物の収率は、石炭の場合に近く、塩化ビニール、ポリカーボネート樹脂等の約2倍以上である。この結果はPVAと同じように石炭などに比較して強熱残分はほとんどなく木質系炭化物よりさらに低い値を示し、薬用炭調製には適した炭化物が得られた。
3. 賦活と賦活物の性状
PVAおよびPANWより調整した炭化物PVASとPANAおよびPANBを先に示した回分型流動賦活装置を用い石炭、木質系と同様に水蒸気を賦活ガスとして850℃で賦活した。賦活時間(θ)と炭化物の重量減少率、W/Wo(−)の関係を図IV−1、IV−2に示した。
次に、図IV−3には賦活温床850℃でのPANA、Bの炭化物の重量減少率W/Wo(−)とメチレンブルー吸着量MBの関係を示した。PANA、BともW/Wo(−)の滅少するにしたがってMBは増大する傾向を示した。この傾向は石炭あるいは木質でも同じ傾向である。また、各PVASについて賦活温度850℃での賦活時間(θ)とメテレンブルー吸着量MBおよび内部表面積Sの関係を図IV−4、IV−5に示した。メチレンブルー吸着量MB、Sともθの増加に従って大きくなり、W/Wo(−)0.3でMB値は110〜210r′/g′、Sは1,000〜1,500m2/g′の賦活物が調製された。本実験ではNH−18から調製した賦活物の性能が優れていた。
図IV−6、IV−7には各PVAS、PANWより得られた活性炭の半径10〜100Åでの細孔容横の関係を示した。PVASからの活性炭はかなり細孔容積は多く、いずれも10〜40Åの細孔がかなり多い、PANはやや細孔容積は小さいが同じように10〜40Åでの細孔が大部分を占める。比較に用いた薬用炭の結果と比較して両者に遜色はないことが認められた。
4. 賦活物の薬用炭としての評価
PANA、BおよびPVASについて賦活温度850℃で得られた各賦活物について日局10による薬用炭試験を行った結果によると、各試験項目とも薬用炭基準を満たす値が示された。このことから、PANW、PVAを原料とした賦活物は、木質、石炭系に比戟し、酸あるいはアルカリの洗浄を必要とせず薬用炭が調製できるものと考えられる。
試料\有機ガス | C6H6 | C4H9SH | C3H7COOH | CH3NH2 |
PANAC | 38.63 | 260.58 | 35.48 | 37.35 |
Y-20 | 52.55 | 62.19 | 28.16 | 51.34 |
CAL | 50.28 | 46.83 | 24.38 | 44.36 |
5. 特長的な用途
(1) PAN活性炭の有機系ガスの吸着
各種有機系ガスの吸着試験を行った結果を表IV−3に示した。実験に使用したPANACは、850℃で25分賦活したもので、S、640m2/g′、M.B、65r′/ g′である。比較のためヤシ殻を原料とする活性炭(Y−20)、瀝青炭からの活性炭(CAL)についても記載したが、これからPANACは、ブチルメルカプタンに対する吸着量が、きわめて大きいことがわかる。また、PANACはテク酸の吸着量が大きいが、メチルアミン、ベンゼンの吸着量は市販活性炭よりも小さくなっている。なお、ブチルメルカブタンを吸着した試料に50倍量(重量)のベンゼンを加え、室温で30分間かきまぜてからベンゼンを濾別する操作を5回繰り返した後、150℃で2時間乾燥し、再びブチルメルカブタンの吸着量を測定したところ、218.62%の吸着量を示した。このことから、ブチルメルカブタンを吸着したPANACを溶剤法によって再生できると考えられる。
PANACがメルカブタンをきわめて多量に吸着する原因は、PANPがほとんど吸着性能を示さないことからPANAC中のN−N態の窒素による影響と推定される。
現在、悪臭公害として問題となっているメルカブタン類は、特に優れた吸着剤もないので、PANACは悪臭防止用として有用な素材になると考えられる。
(2) PAN繊維状活性炭
PANACは、原料とするPANの形状によって繊維状はもちろん、これを成型加工した繊維、フェルト、フィルムなどを作ることができると共に粉末状、又は粒状のものまで作ることができる。
現状では、空気の清浄化(特に悪臭のもとになるメルカプタン類の除去)と廃水処理への実用化を目的に機械的強度がすぐれ、表面積の大きいフェルト製品の製造が可能である。
PANACの性能が、その製造条件によっていろいろに変化することは、多くの工業製品と同様であるが、これまでに得られたPANACの性能の1例を表IV−4に掲げる。
(3) PVA活性炭の分子篩
ここではPVAの濃硫酸処理で得られる生成物を窒素気流中で400〜1,000℃の温度で加熱処理し処理し、得られた炭化物について分子径の異なる被吸着質を用い飽和蒸気圧下での平衡吸着量より全細孔容積を求め、市販分子篩力―ボン(商品名MSC5A、武田薬品株式会社製)と比較した。その試験結果は表IV−5の通力である。これによると、加熱温度900〜1,000℃のPVASの細孔構造が市販のMSCの細孔構造に類似していることを示している。以上の結果から、ポリビニルアルコールの硫酸処理炭より分子カーボン製造の可能性が見出された。
PANAC | 粒径 (mmΦ) | 嵩密度 (g/cc) |
表面積 (m2/g) | 吸着量 | |||
ヨー素 (mg/g) | メチレンブルー (ml/g) | ベンゼン (%) | ブチルメルカブタン (%) | ||||
粒状 A | 0.330 | 580 | 960 | 70 | - | - | |
粒状 B | 0.270 | 850 | 1060 | 170 | - | - | |
粒状 C | 0.25〜1.0 | 0.293 | 950 | 1110 | 189 | 34.6 | 340.0 |
繊維 | - | - | 1152 | 2850 | 258 | 43.6 | 1350.0 |
フェルト | - | - | 1000 | 2600 | 258 | 49.8 | 4300.0 |
市販品活性炭A | 0.25〜0.34 | 0.55 | 1100 | 1116 | 272 | 38.9 | 81.4 |
市販品活性炭B | 0.25〜2.00 | 0.51 | 720 | 992 | 194 | 30.0 | 117.6 |
炭化温度(℃) | ベンゼン | シクロヘキサン | 四塩化炭素 | メチルアルコール(ml/g) |
400 | 0.27 | 0.30 | 0.22 | 0.25 |
500 | 0.22 | 0.18 | 0.14 | 0.18 |
600 | 0.21 | 0.12 | 0.12 | 0.17 |
700 | 0.22 | 0.10 | 0.10 | 0.17 |
800 | 0.21 | 0.07 | 0.09 | 0.16 |
900 | 0.18 | 0.04 | 0.04 | 0.13 |
1000 | 0.19 | 0.04 | 0.02 | 0.13 |
MSC | 0.16 | 0.04 | 0.07 | 0.15 |
V 応用(1)含薬用炭マイクロカプセル
1. まえがき
医薬品、医療分野での利用などに薬用炭を芯物としたマイクロカプセル化を検討した。薬用炭は、近年では寝たきり患者の汚物臭除去の活性炭布、活性炭紙、あるいは病院の処理室の空気浄化、さらには人工肝臓の補助吸着剤としてヤシ殻活性炭を用いたライフテストなどがある。またヤシ殻活性炭をコロシオン膜で被覆したマイクロカプセルにさらにアルブミンを吸着したもの、また石油ピッチ系を原料とした球状活性炭をコロジオン膜で被覆しついでアルブミン処理したカプセルなどが発売されていて、これらは多量に体内に入って毒物を血液から吸着除去するといわれている。しかしながら粉末状の活性炭を用いたカプセルの詳細な調製条件と性能を報告した例は少ない。ここでは薬用炭を芯材として、メチレンクロライトにエチルセルローズ(Etcell)を溶解させ、ついでゼラチン水溶液中に滴下する水中乾燥法による含薬用炭カプセルの調製条件と、得られたカプセルの内部表面積、メチレンブルー吸着量、細孔分布および膜厚等の測定を行ないカプセルの性能を明らかにした。
2. 実験
(1) 実験方法および装置
カプセル化の方法は水中乾燥法によった。芯材に用いた薬用炭は、(II)で報告したところの、特性のすぐれたPAAC(松を原料とした薬用炭)を−300meshに粉砕したもので、その性能はメチレンブルー吸着量:240ml/g、内部表面積:800m2/g′、細孔容積:半径10〜100Åで0.34 ml/gである。まず、薬用炭を20g′秤量し、あらかじめメチレンクロライド250ml中にエチルセルローズを溶解させる。この溶液のEtcell濃度は、0.4、0.9、11.2、1.8、3.6%とした。この%表示は(g/ml×100)である。以下同様。次に各濃度のエチルセルローズ溶液にPAAC20gを加えてマグネックスタラーで20分間激しく攪拌した。PAACを懸濁させた各エチルセルローズ溶液を図V−1に示したように40℃の恒温水槽中に設置した容器中の4%ゼラチン水溶液1000mlに滴下した。攪拌羽根は4枚羽根で翼径60oφを用い500〜800rpm攪拌速度で攪拌しながらメチレンクロライドを徐々に蒸発除去する。24時間後にカプセルを取り出し超音波洗浄器により40℃の精製水でくり返し洗浄した。カプセルは真空乾燥器を用い27℃で20時間乾燥したのち、ガラス容器に密栓し実験に供した。
3. 実験結果と考察
(1) カプセルの収率
Etcell濃度0.2〜3.6%の溶液中にPAAC17g′を加えた懸濁液を前記の方法でカプセル化した。得られたカプセルの収率とエチルセルローズ濃度%の関係を図V−2に示した。エチルセルローズ濃度%が低いほど収率は低下する傾向を示した。また攪拌速度が600rpm以上ではエチルセルローズ濃度が低い場合に急激に減少する傾向を示した。しかしエチルセルローズ濃度1.2%以上では、攪拌速度の影響は少なく収率も同程度であることがわかった。次にカプセルの粒径分布曲線の一例を図V−3に示した。全般的に均等係数は1.1〜1.5であり、この調製条件での粒径分布は良好な値が得られた。この場合のカプセルの調製条件は調整条件は攪拌速度700rpm、エチルセルローズ濃度0.2〜3.6%である。
(2) カプセルの性能
図V−4にはエチルセルローズ濃度と、攪拌速度を変えたときのカプセルの内部表面積の関係を示した。内部表面積は各エチルセルローズ濃度とも攪拌速度が早くなるにつれて漸増し、適切なカプセルの調製条件は攪拌速度600〜800rpm、エチルセルローズ濃度0.9%であることがわかった。
図V−5には攪拌速度700rpmでの各エチルセルローズ濃度で得られたカプセルの破損率と振盪時間の関係を示した。各カプセルの破損率は極めて小さく、すなわち、芯材のPAACは、ほとんど流出しない、比較に用いた市販球状活性炭の破損率は0.45〜0.7%であり、本実験で用いたカプセルの破損率は非常に小さい値であることがわかった。
従来、粉末、粒状の活性炭は使用時に微粒子が流出するなど重大な欠点があった。また医療分野ではたとえば人工臓器の補助吸着剤として使用する場合にもこの欠点を取り除くことが問題であり、カプセル化は有用な手段の一つであると推察された。
以上、芯材に薬用炭を用いてエチルセルローズを壁膜とした水中乾燥法によるカプセルの調製条件と得られたカプセルの性状を調べた。
その結果カプセルの最適な調整条件は壁膜のエチルセルローズ濃度が0.9%、芯材薬用炭量10〜20g′、攪拌速度600〜800rpmであり、カプセルの収率は65〜85wt%となり攪拌速度が速いほど収率は減少した。また、カプセルの内部表面積およびメチレンブルー吸着量は670から700m2/ g′、194〜200 r′/ g′となり、心材薬用炭の約80%程度の性能を示した。半径10〜100Åでの細孔容積は芯材薬用炭とほぼ同程度の値が得られた。各カプセルについて水中振盪試験を行った結果、いずれのカプセルも微粒化した芯材薬用炭の流出はほとんどみとめられず、粉末薬用炭の粒状化のための有用な手段と考えられた。
VI 応用(2)アスピリン吸着炭マイクロカプセル
1. まえがき
ここでは前項で得られたカプセルの調整条件を考慮し古くから医療として使用されているアスピリンのカプセル化を検討した。アスピリンのカプセルはアスピリン粒子にエチルセルローズでカプセル化したものである。その目的は消化管の吸収速度の調節や消化組織からの出血防止などであると考えられる。ここでは薬用炭にあらかじめアスピリンを吸着させ、エチルセルローズを壁膜とした水中乾燥法によるカプセルの調整条件と、そのカプセルを用いアスピリンの溶出試験を行って徐放型カプセルとしての知見を求めた。
2. 実験方法
(1) アスピリンを吸着した薬用炭の調製
アスピリンは局方アスピリン粉末を用いた。アスピリン4.0g′を精秤し、2,000mlのメスフラスコに入れる。ついで精製水にあらかじめ1.0N塩酸を加え、PHを1.21に調整する。この水溶液をメスフラスコ中のアスピリンに加えて全量を2,000mlとした。20℃の恒温水槽上でマグネチックスタラーを用いてアピリンを溶解させた。次に(II)で用いた松を原料とする薬用炭を−300meshに粉砕し、その17g′を加えて3時間攪拌し、上澄液を分離する。アスピリンを吸着した薬用炭は真空乾燥機によって25℃で12時間乾燥し、密栓したガラス容器に入れて4℃の冷蔵庫の中で保存した。この試料をカプセルの芯物質とした(以後ACASPと略記する)。薬用炭に対するアスピリンの吸着量は、後述する高速液体クロマトグラフィーを用い、上澄液中のアスピリンの残存量より計算によって求めた結果、薬用炭1g′当たりの吸着量は200mg′/g′であった。
(2) マイクロカプセルの調製
メチレンジクロライド250mlにエチルセルローズを溶解させる。エチルセルローズ濃度は0.4、0.9、1.8、3.6%とした。次に各濃度のエチルセルローズ溶液に17g′のACASPを加えマグネチックスタラーで20分間懸濁させた。カプセルの調製には、前項と同じ装置を用いた。まず、25℃に調節した恒温水槽に4%ゼラチン水溶液を入れた容器を設置し、懸濁液を徐々に滴下し、ついて恒温水槽の温度を徐々に40℃まで昇温させた。攪拌速皮はエチルセルローズ濃度0.4、0.9%では400rpm以下、1.8、3.6%の場合は500rpm以下では生成したカプセルが反応容器の下部に沈降し粗大粒子となるためすべて600rpmで調整した。24時間後にカプセルを取り出して精製水で洗浄した。さらに真空乾燥器により、25℃で12時間乾燥した後ガラス容器に密栓して冷蔵庫に入れて4℃で保存し実験に供した。
3. 実験結果と考察
(1) カプセルの調製条件
表VI−1には各調製条件で得られたカプセルの収率、内部表面積およびかさ密度等の値を示した。エチルセルローズ濃度が高くなるとともに内部表面積は小さくなる傾向を示し、収率はエチルセルローズ濃度が高いほうが大きくなる傾向を示した。
エチル セルローズ(%) | アスピリン 吸着炭(%) | 攪拌速度 (rpm) | 収率 (%) |
内部表面積 (m2/g) | カサ密度 (g/ml) |
0.4 | 17 | 400 | 75.6 | 47.2 | 0.29 |
0.9 | 17 | 400 | 79.5 | 31.3 | 0.34 |
1.8 | 17 | 600 | 83.1 | 17.2 | 0.40 |
3.6 | 17 | 600 | 87.9 | 15.5 | 0.41 |
(2) 溶出試験
図VII−1には一例としてpH6.9の水溶液中に、カプセルから溶出するアスピリンおよびサリチル酸の溶出量と溶出時間の関係を示した。pH6.9では溶出時間00.5〜4時間まではアスピリンおよびサリチル酸はほぼ直線的に上昇し、その後はほぼ一定となる。アスピ リンはサルチル酸より溶出量が多い傾向を示した。またエチルセルローズ濃度の低いほうが溶出量は多く、溶出時間も早い傾向となる。またpH10.0ではアスピリンの溶出量は最大値を示したのち減少し、かつエチルセルローズ濃度が低いほど最大値を示す溶出時間は短い。これに比較してサリチル酸の溶出量は直線的に上昇したのち一定値を示し、エチルセルローズ濃度の低いほど溶出量が多いことがわかった。pH12ではサリチル酸のみが溶出時間の増加につれて直線的に上昇し、かつエチルセルローズ濃度の低いほど溶出時間は早く、溶出量も多い。全般的には各pHでのカプセル1g′より溶出するアスピリンおよぴサリチル酸の合計量はACASP中のアスピリン量の約20〜23%程度であり、残りはカプセル中に残存するものと考えられる。また、ACASPの溶出試験結果も合わせて示したが、カプセルに比べ溶出時間が10分程度でアスピリンおよびサリチル酸溶出量はほぼ平衡に達し、エチルセルローズ濃度0.4%のカプセルとほぼ同じ溶出量となることがわかった。このことはカプセル内の薬用炭の表面、あるいは細孔に吸着したアスピリンの一部が分解されて溶出するものと思われる。
以上、薬用炭にアスピリンを吸着させ、エチルセルローズを壁膜としたマイクロカプセルは、アスピリンおよぴサルチル酸の溶出時間が長く、かつエチルセルローズの濃度によって溶出量を調節できる可能性を見出した。またアスピリンは服用に際して胃腸障害を起こしやすく、むしろ腸吸収が望ましく、かつ吸収されるときはサルチル酸ソーダと考えられており、本実験はその意味で価値があると見られる。今後、医薬分野での厳密な検討を加えることによって徐放、特効性のすぐれたアスピリンを含有するマイクロカプセルが調製されることを期待する。
特長
この研究は二つの目的をもっている。ひとつは、現在の活性炭業界の実情から、原料面についての拡大、とくに産業廃棄物の高度利用をはかり、そのようを原料からの製造法を確立している。
他のひとつは、それから得られる活性炭が、ただ単に工業用あるいは公害防止用としてでなく、より高級な用途、例えば薬用炭に向けることを考え、その方策を示している。
活性炭の製造については、ノーハウも多く、原料なども明らかでない点も多いのであるが、この研究では上記の観点から、極めて基礎的を段階から積み上げて、活性炭の製造法を基本的に明確にした。
この研究のうち、木質系に関する部分は、とりあげられた原料からも推察されるように、当初、工業技術院の国際研究協力(ITIT)によってフィリピンの国立研究所(NIST)を指導したものである。その結果、有効な成果を得ることができたので、国際協力事業団(JAICA)がとりあげて、マニラの同研究所内に工業化試験炉を建設した。このプラントでは、同国に多量に排出される鋸屑を原料とし、炭化は現地の実情などを考慮して平炉型のものを用いている。賦活は流動せん回炉で、内熱型の水蒸気賦活である。炭化物の送入量約20s/hr程度で、活性炭は3〜7s/hr製造できる。製品はこの報告の(II)に述べられたのと同等のものが得られ、賦活物は1.0N、HClで洗浄し、薬用炭としても適応することを確かめている。
活性炭製造。
活性炭を用いる薬品製造。
活性炭の製造法(特)1258469
活性炭の製造法(特)1028524
吸着剤の製造法(特)154628
略号一覧表
IP | lpil−ipil(イビルイビル) |
AP | Apitong(アピトン) |
PA | Pine(松) |
IPC | イピルイピル炭化物 |
APC | アピトンの炭化物 |
PAC | 松の炭化物 |
IPCA | イピルイピル炭化物からの賦活物 |
APCA | アピトンの炭化物からの賦活物 |
PACA | 松の炭化物からの賦活物 |
TA | 太平洋炭 |
TAA | 太平洋炭の比重選別炭 |
TAAS | 硫酸処理した太平洋炭 |
TA600 | 太平洋炭600℃炭化物 |
TAASA | TAASの賦活物 |
SN | 砂川炭 |
H | 幌内炭 |
IB | バイドウリ炭 |
H460 | 幌内炭460℃炭化物 |
S430 | 砂川炭430℃炭化物 |
IBC | バイドウリ炭の炭化物 |
IBSA | IBSの賦活物 |
PVC | ポリ塩化ビニル |
PVDC | ポリ塩化ビニリデン |
PE | ポリエチレン |
APP | アタステイクポリエチレン |
PANW | 繊維状のポリアクリロニトリル共重合体 |
PANPA | PANWを空気中で2時間熱処理 |
PANBB | PANWを空気中で5時間熱処理 |
PANC | PANWを空気中で150、200、230℃での3段階で熱縮合した炭化物 |
PVA | ポリビニルアルコ−ル |
PVAS | 硫酸処理したポリビニルアルコール |