新しい石炭利用技術の中で、現在、実用化段階に入りつつあるのが、流動層燃焼法である。当所では、この低NOx化燃焼を目指して、新しい構想による2段流動層燃焼装置の開発とその装置特性に関する研究を行ってきた。この装置によるボイラーの概念を第1図に示す。一般的な流動層燃焼装置は単段流動層方式であるのに対して、本方式は流動層の2段重ね方式をとっている。石炭を下段流動層に供給し、一次空気により燃焼する。粗粒の燃焼灰は下段流動層から直接排出する。未燃ガスおよび微粉の未燃炭は上段流動層に入り、二次空気によって燃焼する。上段流動層の流動化粒子に石灰石をどの脱硫剤を使用することによって、この部分で脱硫をも行う。
このような2段流動層燃焼法は、従来の単段燃焼法と比較して主に次のような特長がある。
[1]燃焼用空気の分割供給(2段燃焼)によってNOx生成量が低下する。
[2]上段流動層内で微粉炭と未燃ガスを再燃焼させるので燃焼効率が向上し、COの生成量が低下する。
[3]脱硫剤を上段流動層に供給して使用するので、燃焼灰と分離され、廃脱硫剤の再成や灰の処理・利用がしやすくなる。
最近、単段流動層による2段燃焼法(二次空気を流動層のフリーボード部に吹き込む方式)が、低NOx化に対して有効であることがわかって来ているが、2段流動層燃焼法では低NOx化に加えて[2]と[3]の特長を合わせ持つことが期待できる。
これまでの研究から,廃脱硫剤と燃焼灰の分離に関しては特に支障なく行える見通しを得ている。NOx発生量と燃焼効率に関して比較すると2段流動層燃焼法は、現在発電用に使用されている微粉炭ボイラーの性能を十分に上回るものであり、これまでに発表されている加圧型流動層燃焼法とほぼ同等である。
1. 実験装置と試料炭
実験装置は、下段と上段の燃焼炉の直径がそれぞれ10.8p、13.3p、高さがそれぞれ70p、100pで、上段用の分散板にはキャップ状で開孔比約2%のものを用いた。試料炭には2o以下に粉砕した太平洋炭(釧路2号粉:灰分33%、揮発分34%、固定炭素28%、高位発熱量4,700cal(g)を使用した。
2. NOxとCOの発生量
石炭の流動層燃焼によって生成されるNOxのほとんどは石炭中の窒素分(Fuel−N)が燃焼過程でNOxに転化したもの(Fuel−NOx)である。更に石炭中の窒素がNOxに転化する過程ではNH3などの中間窒素化合物が生成され、この中間窒素化合物がNOxを分解したりNOxに転化したりするのでNOx発生量は燃焼条件によって左右される。
そこで最初に、一次と二次を合わせた総空気量を一定に保ち、一次空気比を理論量の0.6〜1.1の範囲で変化させながら、一次空気と二次空気の分配比がNOxとNH3の挙動におよぼす影響について検討した。一次空気比の減少とともに下段燃焼炉からのNOx生成量は次第に減少するが、一次空気比が1以下にをるとNH3生成量が急激に増加し、その生成量はNOx生成量よりも多くなる。その結果を第2図に示す。
2段流動層燃焼法における一次空気の過剰率を本実験における最適値、すなわち0%(量論空気比=1.0)とし、総空気過剰率ならぴに層温度と総NOx発生量との関係を単段燃焼の結果とともに第3図に示す。NOx発生量は層温度および空気過剰率の低下とともに減少し、空気過剰率が15%で800℃の場合、廃ガス中濃度で約150ppm程度になった。この値は、単段燃焼の場合の1/2以下であり、本燃焼方式がNOxの低減に対してかなり有効であることがわかる。
CO発生量と廃ガス中の残余酸素濃度の関係を第4図に示す。単段燃焼法では、残余酸素濃度が2%のとき、約0.5%のCO発生量(廃ガス中濃度)であるのに対して、2段燃焼法では同じ残余酸素濃度で、CO発生量を0.05%(500ppm)以下に抑えることができる。
3. 燃焼効率
流動層燃焼における未燃損失の大部分を占めているのは飛び出しによる微粉カーボン損失である。本試料炭を使った単段燃焼試験によれば、空気過剰率が20%のとき、全未燃損失は約5%(燃焼効率:95%)であり、その中で微粉カーボンの飛び出しによる損失が約92%であった。従って燃焼効率を向上させるためには、この飛び出しによる損失をいかに低下させるかが鍵になる。
特長
近年、石炭の流動燃焼が実用化され、既に数基が稼動しているし、今後、低品位炭利用の分野などでは、益々増加するものとみられる。しかし、公害対策、特にNOxに対しては、石炭を燃料とする以上避けて通るわけにはゆかない。この点、この技術は2段燃焼法により、NOxの低減を試みたものである。
石炭のみならず、種々の固体燃料、あるいは廃棄物の流動燃料におけるNOx対策技術。
○石炭の流動燃焼装置(実願)59−047286