TN40 もみがらの流動燃焼による熱利用と灰の有効利用

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内容の要約

 もみがらは1s当り3,300Kcalの発熱量を有するので、エネルギーとして有効に利用すべきである。また、もえ殻は燃焼条件にもよるが、15〜20%の灰が得られるので、その有効利用も検討すべきであろう。

 しかしながら、燃料として、あるいは工業原料としても「量」の確保が問題になってくる。もみがら産出量の季節的変動は大きく、しかも、もみがら、もみがら灰ともにかさ張るので運搬コストは高くつく。結果的に特定の地域で経済的に利用できる量は自ら限定されるようである。現状ではローカル賞源及びローカルエネルギーとして小・中規模工業用原料に用途を設定するのが無難であろう。

 ここでは、まず流動燃焼による熱利用の例と、ついで、九工試と共同で行われた、もみがら灰を原料とする「水硬性セメント」について紹介する。

 特に、もみがら灰を利用しようとするときは、用途にもよるが、もみがらのSiO2に注目して、その結晶化度が問題となる場合は、焼成温度と、滞留時間の関係が重要になる。

 このような意味において、もみがらの燃焼に流動層を用いることは適切である。なぜなら、この装置の特徴の第一としてあげられるのは、温度制御が良好なことである。したがって、最も適した温度を選定して運転することが可能であり、安定した副生品すなわち灰が得られる。

 また、ローカル資源としてみた場合、装置規模の問題がある。この点に関しても流動層極めて融通に富んでおり、自由に規模を選定し得る。したがって、中小規模の工業化に向いていると言える。

詳しい内容

 1.熱回収

 もみがらの分析値を第1表に示した。灰の大部分はシリカである。

 もみがらは極めて強靭なもので3,000Keal/s程度の熱量はあるが、その燃焼は通常の方法では必ずしも容易ではない。その例として、よく田畑で野焼きした場合は、相当な煙を発生するため、よく交通障害をおこすことなどで知られている。よって、各種の焼却炉も考案されているが、流動燃焼は最も簡便でかつ完全燃焼が期待できる。また、その排気は、新鮮な空気と熱交換し、熱風を得ることができるので、ライスセンターにおけるもみ乾燥用空気などとして使用できる。また、流動層の特徴のひとつとして、他の装置に見られるような重量の大きいものでなく、かなり軽量化が図られるので、例えば、その装置は冬期には野菜栽培用のビニールハウスに移設して暖房用熱源としても使用できる。

 装置の概略を第1図に示した。また、第2表は装置の寸法及び操作条件の1例を示した。なお、ここで用いた流動層は媒体流動層といわれるもので、あらかじめ層内に砂を入れており、流動化した熱砂のなかにもみがらが入って燃焼するものである。ここでは、硅砂(5号)を用いている。また、この例では層内温度が800℃となっているが、すべて 供給量による自動制御となっているから、制御計の設定によって700〜1,000℃程度の範囲で自由に選定することができる。この点は次の灰の利用にあたって重要である。

 2. もみがら灰の水硬性セメント及び成型材への応用

 流動床燃焼で得られる非晶質もみがら灰は優れたポゾランであるから、石灰原料として生石灰、消石灰又はポルトランドセメントを混合するだけで水硬性セメントになる。もみがら灰は高シリカ質であるから得られるセメントは耐酸性に優れたものとなる。しかももみがら灰は多孔質であるためこの混合セメントを用いて作る成形硬化体は通常のポルトランドセメントを用いた場合に比較すると軽量化されるという長所を有する。普通に焼成したもみがら灰は、結晶化しているので常温での強度発現性に劣るが、流動床燃焼で得られるもみがら灰は常温でも十分に硬化し強度を発現する。加温養生でもその強度発現性は高い。

 一例をあげると、燃焼温度750℃で得られた非晶質シリカより成るもみがら灰を微粉砕し、その4重量に対して1重量の石灰を配合、十分混合し、水/固体比0.6として加圧成形して得られた成形体を20℃で3日〜28日間湿空養生したところ、かさ比重0.9、圧縮強さは206〜224/p2に達する硬化体となり、水硬性セメントとして十分に使用し得る特性を示した。また、養生温度を80℃にあげると、1日間の養生で、同一かさ比重で圧縮強さは158s/p2に達した。

 比較のために、野積焼成で得られた結晶化したもみがら灰を同一条件で成形、養生したところ、かさ比重は1.2と大きく、しかも圧縮強さは32〜104s/p2と低く、水硬性セメントとしては強度不足である。

 もみがらは有用な農産廃棄物として、いろいろな方面で利用されている。例えば炭化物にしたり、灰として土壌改良に用いるなどである。しかし、その集荷については、かさ比重大きいため至難である。したがって発生地において、直接利用することが望ましい。

 この点において、流動燃焼法は、簡易で、スケールも自由に選択できるので有利であって、農業用の熱源として利用できる。

 また、その灰は特殊な性質をもっているので「水硬性セメント」として利用できることも明らかになった。

応用分野

 流動燃焼としては、もみがらのほか、いねわら、むぎがらなどの農業廃棄物への応用。もみがら灰としては、水ガラス、地磐安定材、ろ過助材、耐火材などへの応用も考えられる。

特許

 ○ 非晶質もみがら灰並びに同もみがら灰を原料とする水硬性セメント及び成形材の製造法

 (特願)58−144098



第1図 もみがら流動燃焼炉
TN40F1.gif

 

第1表 もみがらの分析値
choashw
0.3560.0320.3690.1220.121
もみがら発熱量(低) 3,490Kcal/Kg(dry base)

 

第2表 試験条件の例
流動層塔径700φmm
流動層塔全高2400mm
流動層塔層高500mm
熱触媒体砂5号硅砂
流動層温度800℃
1次空気空塔速度15cm/sec(NTP)
もみがら供給量33.4Kg/hr
外気温度0℃