最近、各洗剤メーカーにおいては合成洗剤に含まれるリンが河川や湖の高栄養化の一原因物質であることが明らかになるにつれ洗剤の無リン化が思考されるようになった。それはトリボリリン酸ナトリウム(Na5P3O10)に代替すくビルダーとしてA型ゼオライトを使用しようとすることである。
これらの合成ゼオライトはけい酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムといった試薬から合成されているが、それではコストが割高になるのは避けられない。これに対して天然鉱物を出発原料とした場合には原価が非常に安い。このことから酸性白土、カオリン、真珠岩、長石などからゼオライトを合成する方法が検討され、我が国では水沢化学株式会社が酸性白土を原料とするビルダー用A型ゼオライトの企業化に成功しているが、当初ではマオリンを用い、それを焼成し非晶質にして反応性を高め、水酸化ナトリウムを加え、水熱合成法で製造する方法について検討した。
天然鉱物からのゼオライト製法としては、a)カオリン鉱物を焼成し、メタカオリンにして反応性を高めてから水酸化ナトリウムを加える。b)カオリン、火山ガラスを摩砕し、結晶構造を壊してから水酸ナトリウムを加える。この方法を採用した。
なお、カオリンだけではシリカ分が少ないので、その分をコロイダルシリカで補った。
カオリンを700℃に焼成すると無定形化し、反応性に富むようになる。しかし、高過ぎる焼成温度はP型を生成するようになる。最適処理温度は650〜850℃であった。合成最適条件は試薬を出発原料とした場合とほぼ同じで、Na2O/SiO2=0.5〜0.7、SiO2/Al2O3=5〜10、H2O/Na2O=40.0の範囲であった。これにより生成したホージャサイト型ゼオライトのSiO2/Al2Oモル比は3.5以上であった。また、Na2O濃度が高くなるとP型ゼオライトの生成量が多くなる傾向があった。
次に、火山ガラスを出発原料としてホージャサイト型ゼオライトを合成した。無定形化するために長時間原料を摩砕した。
この場合もホージャサイト型が生成したが、ゼオライトのSiO2/Al2O3の比の低いX型の生成が主であった。
ゼオライトの使用目的を合成洗剤用ビルダー材に求めた場合、A型ゼオライトにする必要がある。カオリンからの合成はX、Y型の合成より容易であった。すなわち、焼成カオリンと水酸化ナトリウムのみからA型ゼオライトを合成することができ、比較的低温(50〜100℃)結晶化でき、しかも熟成時間は短くてよかった。また、合成物のX線回路分析からは生成物は市販品A型と同品位(95%以上)であることを認めた。
合成物のカルシウム交換能は市販品と比較し、同等かそれ以上であることが知られた。
(1)試料
合成に使用した試料はカオリンと火山ガラスである。カオリンはコート用カオリンで,−2μm80%のものを電気炉で700℃、2時間焼成した。熱処理、未処理試料の蛍光X線による分析値を第1表に示した。火山ガラスは北海道東部地区に産するもので、最大粒径2o位の軽石質のものを含んでおり、X線回析分析によると、石英、長石類がわずかに認められる程度で、大部分は非晶質であった。これを、らいかい機で50時間粋砕し、無定形にしたものを試料とした。第2表にそれの化学分析値を示した。
ゼオライトの合成は水熱合成によったが、その方法は所定の出発原料組成に調達したゲル状試料を350〜1,000mlのフラスコに入れ、上部をコック付ロートで封じ、所定の時間温室に放置し、熟成させた後、フラスコを恒温槽に浸し、所定の条件で合成(結晶化)した。この場合、加温10分後にコックを閉じて水蒸気の放出による溶液の濃度変化を防いだ。合成物は濾過洗浄し、濾駅のPHが10になるまで水洗を繰り返し、得られたケーキを110℃で2時間乾燥して測定試料とした。恒温槽は同時にフラスコを最大6個(300ml×6)放置できる深型の構造になっており、また、これの温度調節精度は±0.2℃であった。
(2)カオリンからのホージャサイト型ゼオライト合成
ホージャサイト型ゼオライトの生成が多いのはNa2O/SiO2=0.5ではSiO2/Al2O3=5〜7、Na2O/SiO2=0.7ではSiO2/Al2O3=5〜15の範囲である。アルカリ成分含有量が高く、また、SiO2/Al2O3モル比が大きくなると、P型ゼオライトの生成量が増加する傾向を示した。生成したホージャサイト型ゼオライトのSiO2/Al2O3は3.5までのものが多く、SiO2/Al2O3のモル比の高いホージャサイト型ゼオライトを得るためには、Na2O/SiO2=0.5が適当であった。
(3)火山ガラスからのホージャサイト型ゼオライト合成
火山ガラスを原料としてゼオライト合成を試みたが、上述のカオリンのときに良い合成条件であったNa2O/SiO2=0.5、SiO2/Al2O3=7および10、H2O/Na2O=40の組成で、温室で24時間熟成、100℃で24時間結晶化を行った。
いずれもホージャサイト型ゼオライトの生成が認められたが、P型ゼオライトも生成しており、また未反応の石英が残っていた。この系で生成したゼオライトのSiO2とAl2O3モル比は3でX型であった。
以上のことから火山ガラスもゼオライトを合成するための出発原料となり得ることがわかった。
(4)カオリンからのA型ゼオライト合成
前述のカオリン焼成物と水酸化ナトリウムを用いて、それぞれの酸化物のモル比がNa2O/SiO2=1.2、SiO2/Al2O3=2.0、H2O/Na2O=40.0になるようにカオリンのSiO2とAl2O3の組成比は2:1であるので、出発原料中のSiO2およびAl2O3の全量をカオリンでまかなうことができた。
つぎに結晶化時間について検討した。室温での熟成時間をとらずに、50、75、100℃の各温度で結晶化させ、結晶化時間とA型ゼオライトの生成量の関係について調べた。その結果を第1図に示した。
このことから、使用した原料中のカオリンの品位から考え、75℃で結晶化の場合にはほぼ完全にカオリンがA型ゼオライトに転化したものと考えられる。
特長
天然鉱物(カオリン、火山灰)を原料とした、ホージャサイト型ゼオライト、ならびにA型ゼオライトの製法を検討した。その結果、市販品と同等、あるいいはそれ以上の製品を得ることができた。また、より安価に得られる可能性も有している。
触媒、分子篩、合成洗剤などへの利用
○ 分子篩型ゼオライト(特願)59−046185
○ 分子篩型ゼオライトの製造方法(特願)59−082269
FeS2 | Al2O3 | SiO2 | Total | Pyrite | Kaolinite | Quartz | Total | |
コート用カオリン | 0.33 | 36.65 | 49.81 | 86.79 | 0.13 | 92.79 | 6.62 | 99.74 |
700℃で2時間焼成 | 0.25* | 42.18 | 57.32 | 99.75 |
SiO2 | TiO2 | Al2O3 | Fe2O3 | FeO | MnO | MgO | CaO | Na2O | K2O | Ig.Loss | Total |
73.28 | 0.18 | 12.88 | 0.75 | 0.68 | 0.04 | 0.18 | 1.14 | 3.49 | 3.30 | 3.58 | 99.50 |