TN35 高感度BOD測定装置

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内容の要約

 比較的微量の酸素の消費量を測定することは、生物の呼吸(微生物、小動物、細胞組織)や化学反応(脱酸素剤、還元剤、金属の酸化)の特性を調べるうえで必要な技術である。

 気相中の酸素消費量については、微量の場合には検圧法によることが多い。検圧法の欠点である読み取りを人手に頼らなければならないことと、閉鎖系内の存在酸素量によって酸素消費総量が限定されるという点を解消した記録式酸素消費量測定装置が当所で開発され、主として廃水のBODの測定や化学物質の生分解性試験に用いられてきている。

 ここでは、この記録式酸素消費量測定装置を高感度化し、更に酸素消費量をデジタル処理することについての原理を述べ、これらを採用した装置を紹介する。また、応用例として微生物呼吸特性の測定結果を紹介する。

詳しい内容

 1. 動作原理

 高感度酸素消費量測定は原理的には定容圧法に基づいており、ヤング・クラーク法による間接クーロメトリーを採用している。第1図は本装置を模式的に表わしたものである。これは主として懸濁系の好気性微生物反応を測定する場合の例であり、以下これに沿って説明する。

 反応容器である培養びんの内部には、呼吸によって発生する二酸化炭素を吸収するための吸収剤(通常ソーダライムを使う)入れが備えてあり、また、液を懸濁状態に保ち、かつ気液の接触をよくするために攪拌子が入れてある。培養びんの中で呼吸反応が起こると酸素が消費され、ニ酸化炭素が発生するが、二酸化炭素は吸収剤に吸収されるので、結局消費された酸素の分だけ圧力が低下する。この圧力低下によりU字管マノメーターの電導性封液が移動して電極に接触し、測定ユニット内のリレー回路が作動して硫酸銅溶液の入った電解びんに電流が供給される。ここで発生した電解酸素が培養びんに送られ圧力は回復する。この動作を繰り返して測定は進行する。圧力の比較対象には密閉された空気だめ内の圧力を用いているので、大気圧変動の影響を受けず、初期条件が継続される。電解酸素量は電解電流の時間積分値に比例するが、本装置では定電流で電解しているので、電解時間を積算すれば発生酸素量すなわち培養びん内の酸素消費量が求まる。積算値を電圧に変換して記録する。

 2. 酸素消費量測定の高感度化

 触斜式マノメーターの分解能を低下させる原因の一つは、液の表面張力によるヒステリシス現象である。

 動作原理で明らかなように、分解能はマノメーターの動作1回の電解酸素量で決まる。第2図はヒステリシス現象の状況を示す。第2図のAはマノメーター液面が上昇して電極に接触する直前、Bは電解酸素に押されて液面が電極から離れる直前、Cは離れた直後であり僣が分解能の限界である。

 従来の方法では、電解時間の積算モーターを使い、ギヤで減速してポテンシオメーターを回し、回転角を電圧に変換していた。電極が離れて電解が終っても液面は更に低下する。そして、Dの状態になり、Sが実際の分解能になる。

 このヒステリシス現象の影響を除き、分解能を高めるために、本装置ではマノメーターに続するチューブにパルセーターをつけ、マノメーターの封液に脈動を与えている。このパルセーターの効果を第3図によって説明する。脈動する液面は酸素消費に伴って上部にシフトして行き、分解能以上の酸素が消費されると脈動の頂点で電極に接触する。その直後に液面は下降するので、ヒステリシス幅僣を越えると強制的に引き離される。この間の接触時間儺は脈動周期によってきまるが、脈動を加えない場合に比べて短く設定できる。そして儺間における酸素発生量が分解能になるので、例えば第4図に示すように、パルセーターを付加しない場合の分解能が0.04mgO2であったものが、付加により0.01mg2に向上することになる。

 本装置が持つ従来型にない最大の特徴は、コンピューター処理により微分値すなわち酸素消費速度が得られることである。実際の酸素消費反応は連続的な現象であるが、電解酸素の供給はマノメーターの接触に応じて断続的に行われる。本装置では、前述のようにパルセーターを採用することにより分解能を高めているので、記録曲線の階段が細かくなり、

 時間遅れが少なく、かつ急激な変化が減衰されない微分曲線が得られる。この測定法は原理的に反応容器内の圧力変化を測定するものであり、大気圧変動の影響を受けないように系は密閉されているが、温度変化に対しては極くわずかの変動でも大きな影響を受ける。したがって、分解能の高い結果を得るためには測定系を良好な恒温槽内に設置することが重要である。

 本装置では、酸素消費の途中経過に加えてその微分持性を同時に記録できる機能が加わった。微生物反応の場合、微分特性は呼吸速度を意味し、菌体量が一定の場合には活性度を示すことになる。ここでは、制限基質がある場合の微生物の呼吸特性を測定した結果を紹介する。

 第5図にはグルコースを炭素源とし、窒素量を変化させた場合の酸素消費量(呼吸量)と酸素消費速度の様子を示したものである。

 特長

 以前、当所で開発されたBOD測定装置に改良を加えた制度の向上を図るとともに、デジタル化を可能にし、コンピューター処理によって酸素処理速度を得られるようにした。

 このことによって、単に公害測定機器としてのみならず、バイオテクノロジーの研究分野などにも広く使用できるようになった。

応用分野

 水質計測器(BOD測定器)として水処理関係

 バイオテクノロジー研究分野

特許

 ○ガス発生用電解瓶(実願)56-037998

 ○気体圧力変化検出器(実願)56-037999

 ○記録式ガスメーター(実願)56-120147

 ○電極式液面計(実願)58-147349

 ○電極式液面計(実願)昭59.11.30出願

 



第1図 高感度酸素消費測定装置模式図
TN35F1.gif
1.培養びん、2.マノメーター、3.パルセーター、4.空気だめ
5.電解びん、6.測定ユニット、7.記録計


第2図 マノメーターのヒステリシス誤差
TN35F2.gif
僣:ヒステリシス、S:分解能


第3図 パルセーターの効果
TN35F3.gif
僣:ヒステリシス、儺:接触時間


第4図 パルセーターによる分解能の向上
TN35F4.gif

第5図 呼吸特性
TN35F5.gif